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ファッションブランドのクリエイティブディレクターとは?ルイ・ヴィトン/ヴァージル・アブローなど有名ブランドの例や仕事内容を紹介!

Virgil Ablohのポートレート

最近のファッション業界での出来事といえば、ヴァージル・アブローが2021年11月に癌で突然この世を去り、世の中を驚かせたニュースが記憶に新しいのではないでしょうか。

ヴァージル・アブローは、世界的なラグジュアリーブランド、ルイ・ヴィトンの『アーティスティック・ディレクター』という肩書きを持ち、活躍していた人物です。

今回は、アートと関わりの深いファッションの世界についても注目するため、ファッションブランドで活躍するアートディレクター/クリエイティブディレクターについて、その仕事内容や有名ブランドの例などを紹介します。

アートディレクター/クリエイティブディレクターとは?

クリエイティブディレクターとは
引用:Academy of Art University「5 Famous Fashion Art Directors Shaping the Fabric of the Industry」https://blog.academyart.edu/5-famous-fashion-art-directors-shaping-the-fabric-of-the-industry/

アートディレクターとクリエイティブディレクターは、一般的にどちらもファッション業界や出版・広告業界などのデザイン制作の現場などでディレクターとして活躍する職業のことを指します。

名前が指す通り、アートディレクターは制作物のビジュアルを中心とした表現に関わる部分に責任を持ち、その全体の方向性を決めて、コンセプトや企画内容に沿ったビジュアルを作り上げるためにデザイナーなどの関係者たちと協力しながらビジュアル全体のディレクションをします。

一方でクリエイティブディレクターは、より広い範囲のクリエイティブもしくはプロジェクト全体の責任者として、ディレクターの役割を担うことが多いようです。

クライアントとのやりとりから、クリエイティブ全般の企画、運営、管理まで、プロジェクト全体においてチームを引っ張る存在となります。

厳密には役割の違いがあるとはいえども、実際にはアートディレクターとクリエイティブディレクターは明確に役割が別のものと定義されているわけではなく、仕事内容の関わりも深いため、その役割を兼務する場合も多くあったり、呼び方を変えているだけで実質的な仕事内容はほとんど同様だったりするようです。

ファッション業界における有名な人物の肩書きとして『クリエイティブディレクター』『アートディレクター』という言葉を聞いたことがある方も多いのではないでしょうか?

元々はファッションデザイナーと呼ばれる役割を担う人が、1980年代ごろまでは『ファッションブランドのアイテムをデザインする人』として主に衣料品のデザインを担当していたのが、1990年代に入ってから『クリエイティブディレクター』『アートディレクター』と呼ばれるようになってきたと言われています。

今回は、ファッション業界におけるアートディレクター/クリエイティブディレクターに焦点を当てるので、特にこの2つの細かい違いには言及せずに広く同じ役割として『クリエイティブディレクター』とまとめて紹介していきます。

ファッションブランドのクリエイティブディレクターの仕事内容

クリエイティブディレクターの仕事イメージ
引用:noodle「What Responsibilities Does a Creative Director Have?」https://www.noodle.com/articles/what-responsibilities-does-a-creative-director-have

ファッションブランドにおけるクリエイティブディレクターは、ファッションブランドの視覚的美学とコンテンツ制作を支えている複合的なクリエイターです。

これまでのファッションクリエイティブディレクターは、商品に焦点を当てて、そのブランドのデザインと美学を監督するというのがメインの仕事内容でした。

しかし、過去5年間ほどで、デザインの現場でのディレクションにとどまらず、ブランド全体の運営に到るまで、その役割ははるかに広範囲に広がりました。

現在のファッション業界におけるクリエイティブディレクターは、商品のデザインを中心としたファッションショーや広告などのマーケティングの範囲を含め、ブランド全体のイメージ戦略、存在感を形作るための全体のディレクションができることも期待されています。

また、特にソーシャルメディアが大きな影響を持っている昨今では、『ブランドの顔』となるクリエイティブディレクターの影響は大きくなってきています。

有名ファッションブランドを運営する大企業にとっても、クリエイティブディレクターは会社の意思決定を左右するほどの重要な存在となっているため、ブランドの内部者としてだけでなく、外部のコラボレーターとして、影響力のある人材をクリエイティブディレクターに採用するというブランドも多くあるようです。

クリエイティブディレクターになるには?資格は必要?未経験でも目指せる?

ファッション業界のクリエイティブディレクター
引用:SEEN「SEEN Fashion Director Rachel Schostak breaks down fall’s hottest trends and shares her must-have items for the season.」https://seenthemagazine.com/notes-from-the-fashion-director-september-2019/

ファッション業界のクリエイティブディレクターになるには、どんなキャリアステップや資格、経験、能力が必要となるのでしょうか?

クリエイティブディレクターになるために、特別な資格があるというよりは、様々な業務スキル・能力が必要とされるでしょう。

例えば、ファッション業界で働くための基礎的なスキルや知識の他にも、マーケティング、プロジェクトマネジメント、戦略立案、プレゼンテーション、表現力、コミュニケーション能力、プロデュース力などが想定されます。

また、時代や世の中の流れを先読みする力も必要となります。
これは単なる『勘やセンスの良い人』ということではなく、歴史や現代の世界情勢、新しいジェネレーションへの理解など、かなり幅広い分野に対してアンテナを張って、蓄積された知識の上に常に新しい情報を追加していくことができる人です。

クリエイティブディレクターの仕事はかなり幅広いため、ファッション以外にもアートや建築、音楽、歴史など様々な分野への包括的な知識・教養も必要となるでしょう。

加えて現代のクリエイティブディレクターには、経験やスキル・能力だけでなく、様々な業界での人脈を持っていることや、ソーシャルメディアでのオーディエンスやファンがいることなど、『影響力を持っている人』であることも求められる要素の一つと言えるのではないでしょうか。

このように、ファッション業界におけるクリエイティブディレクターはかなり重要な役割を担っており、幅広い経験・知識・スキル・能力・人脈・影響力などが必要となる仕事です。

含まれる業務が未経験の状態でクリエイティブディレクターを目指すことはかなり難しそうですが、ファッション業界での専門知識を学び、実務経験を積んでいる人は、上記のことを意識して目標にして、クリエイティブディレクターも1つの選択肢とできるようにキャリアアップを図っていくこともできるでしょう。

有名ファッションブランドのクリエイティブディレクターの例

Tom Ford(トム・フォード):Gucci(グッチ)

1994年にイタリア発の高級ファッションブランドであるグッチのクリエイティブディレクターに就任したトム・フォードは、当時人気が落ちてしまっていたグッチを立て直したことで知られています。

トム・フォードは、デザインの現場に関わるディレクションにとどまらず、マーケティング戦略や広告などのブランド全体のディレクションを担い、グッチのブランドとしてのイメージ戦略を大きく転換させ、成功に導きました。

トム・フォードのグッチでのクリエイティブディレクターとしての偉業をきっかけに、ファッションデザイナーの肩書きがクリエイティブディレクターとされることが増え、デザインの範囲外のブランド全体の運営に関わるようになったと言われています。

Kim Jones(キム・ジョーンズ):Dior(ディオール)

キム・ジョーンズ
引用:SHOW studio「KIM JONES」https://www.showstudio.com/contributors/kim_jones

ハイブランドとストリートファッションの掛け合わせの仕掛人として知られるファッションデザイナーのキム・ジョーンズは、これまで様々なブランドとコラボレーションを行ったり、クリエイティブディレクターを務めたりしてきました。

ダンヒルのクリエイティブ・ディレクターやルイ・ヴィトンのメンズ・アーティスティック・ディレクターなどを経て、現在は2019年からディオールのアーティスティック・ディレクターとして活動しています。

キム・ジョーンズはディオールのアーティスティック・ディレクターに就任してから、ディオールのメンズラインDior homme(ディオールオム)をDIORに改名し、メンズとウィメンズのブランドを統一しました。

また、クラシックなイメージが多かったディオールのデザインは、ストリートテイストが加わりよりユニークなものとなりました。

Phoebe Philo(フィービー・ファイロ):CELINE(セリーヌ)

フィービー・ファイロ
引用:THE INDUSTRY FASHION「British designer Phoebe Philo to launch her own label with the backing of LVMH」https://www.theindustry.fashion/british-design-phoebe-philo-to-launch-her-own-label-with-the-backing-of-lvmh/

クロエ(Chloé)を経て、2008年にセリーヌのクリエイティブ・ ディレクターに就任したフィービー・ファイロは、現代女性たちの高い支持を集めるブランドとして、セリーヌの一時代を担った人物として有名です。

ソーシャルメディアへの露出やパーティーなど派手な演出をすることなく、商品のクオリティや気品に直接ブランドイメージを伝えさせるという戦略を取っていたセリーヌでのクリエイティブ・ディレクターとして、フィービー・ファイロ自身もプライベートを公にせず、セリーヌの美意識そのものを体現していたといえます。

現在はセリーヌから離れ、LVMHによる支援を受けながら新ブランドの立ち上げをしているようです。

Virgil Abloh(ヴァージル・アブロー):LOUIS VUITTON(ルイ・ヴィトン)

ヴァージルアブローのランウェイでの写真
引用:British GQ「Virgil Abloh faces down backlash with stark details of his own experiences of racism」https://www.gq-magazine.co.uk/fashion/article/virgil-abloh-black-lives-matter

ストリートシーンで世界的に人気を集めるブランドOFF-WHITE c/o (オフ-ホワイト c/o)を手がけていたヴァージル・アブローは、2018年からルイ・ヴィトンのメンズ部門のアーティスティック・ディレクターに就任しました。

ヴァージル・アブローは、ルイ・ヴィトン初の黒人デザイナーとして抜擢されたことでも知られています。

ストリートシーンでのカルトブランドを率いていたヴァージル・アブローは、歴史あるラグジュアリーブランドであるルイ・ヴィトンにも新しいインスピレーションを与え、ストリートスタイルが人気を集める昨今のメンズファッション業界の中でもブランドの人気を高めることに大きく貢献しました。

残念なことに、ヴァージル・アブローは2021年11月に41歳の若さで癌のため他界し、世界中から彼の死を惜しむ声が溢れました。

まとめ

ファッション業界で活躍する『クリエイティブディレクター』は、ブランドの行方を左右するほど大きな影響力を持つ重要な存在です。

そのようなポジションを担う人材は、ファッション業界に関連することに留まらず、アートや歴史、世界情勢など幅広い知識や経験、能力が求められます。

有名ブランドのクリエイティブディレクターはそれぞれ唯一無二な個性を持っていて、そのスタイルや人生そのものがアートのようにメッセージ性を帯びた美しいもののように感じられます。

参考

Vogue Business「What luxury fashion brands want in a creative director」https://www.voguebusiness.com/talent/articles/luxury-fashion-brands-creative-director-balmain-louis-vuitton-virgil-abloh/

GLOSSY「The evolving role of the fashion creative director」https://www.glossy.co/fashion/the-evolving-role-of-the-fashion-creative-director/

ABOUT ME
あやね
2018年にアメリカ NYへ移住した、京都生まれの大阪人。日本の伝統工芸が持つ独特で繊細な美しさが好きで、着物や器を集めている。郊外の家に引っ越したことをきっかけに、アート作品やアンティーク家具を取り入れたインテリアコーディネートにも興味を持ち始める。アメリカで日常生活に様々な形でアートを取り入れる人々に出会い触発され、2021年より趣味で陶芸をはじめる。