【ルシアン・フロイド】妻などの肖像画やヌードを描いた画家の代表作品や経歴、特徴

Lucian Freud
アーティスト紹介
Benefits Supervisor Sleeping

DATA

ニックネーム
戦後の肖像画の巨匠
作者について
ルシアン・フロイド(Lucian Freud)は、細部まで描き込まれた感情豊かな肖像画で、知られる20世紀を代表する画家の一人です。初期の作品では、ドイツ表現主義やシュルレアリスムの影響を受けていましたが、1950年ごろからは厚みのある油彩で描かれた肖像画、特にヌード作品を描くようになりました。フロイドの作品には、アーティストとモデルとの間の心理的な不安や緊張感などが具象的に反映されています。

現在の値段

約309,210,000円(直近36ヶ月の平均落札価格)

2021年「Lobster」約¥413,529,953(クリスティーズ)44.2 x 58.2 cm
2022年「Seaside Garden」約¥43,927,503(クリスティーズ)12.7 x 17.78 cm
2023年「Annabel Portrait III」約¥316,984,324(クリスティーズ)35.5 x 30.7 cm
2024年「Kai」約¥911,452,514(クリスティーズ)51.0 x 61.5 cm

ルシアン・フロイドの作品は、数億円単位で大手オークションハウスで取引が頻繁にされています。肖像画、ヌード作品などが特に高価になっています。
ルシアン・フロイド オークション価格

ルシアン・フロイドの経歴

ルシアン・フロイド
引用:https://www.royalacademy.org.uk/article/lucian-freud-self-portraits-beginners-guide

ルシアン・フロイド(Lucian Freud)は、細部まで描き込まれた感情豊かな肖像画で、知られる画家です。

フロイドは1922年12月8日、ドイツのベルリンでイギリスの人の家庭に生まれました。祖父は精神分析医のジークムント・フロイド、兄は政治家クレメント・フロイドです。

ナチス政権の台頭により、フロイド一家は1933年にロンドンに逃れましたが、この引っ越しが、ルシアンの将来の芸術家としてのキャリアにとってのちに重要なものとなります。

フロイドは幼い頃からデッサンに興味を示し、ロンドンのセントラル・スクール・オブ・アートや、デダムにあるセドリック・モリスのイースト・アングリアン・スクール・オブ・ペインティング・アンド・ドローイングなど、さまざまな美術学校で絵画を学びました。

フロイドの初期の作品は、シュルレアリスムの影響を受けていましたが、やがて人物像に焦点を当てたリアリズムを特徴とする独特のスタイルを確立していきます。細部にまで細心の注意を払って描かれた作品からは、対象者の心理的な深みが肖像画に与えられていることが感じられ、同時代の画家たちとは一線を画したのです。

フロイドは1940年代から1950年代にかけて美術界に台頭していきます。最初の個展は1944年にロンドンのルフェーヴル・ギャラリーで開催されました。

1950年ころからは、厚みのある油彩の肖像画、特にヌード作品も描くようになります。なんと娘のベラやエステルもヌードモデルとなったそうです。

1950年代から1960年代にかけて、特にフランシス・ベーコンやフランク・アウエルバッハを含む具象画家グループ「School of London(スクール・オブ・ロンドン)」と交流・活動しました。

2015年にクリスティーズ・ニューヨークで開催されたオークションで「Benefits Supervisor Resting」が5620万ドルで落札され、フロイドの作品として最高額を記録しました。この作品は2008年5月にもクリスティーズ・ニューヨークで競売にかけられ、その際には3360万ドルで落札され、当時の存命中の芸術家の作品として最高額を更新しました。

フロイドは2011年7月20日に亡くなりましたが、肖像画というジャンルに新たな深みとリアリズムをもたらした肖像画の巨匠としてのフロイドの芸術界への影響は大きく、現在でもの偉大な芸術家の一人として高く評価されています。

ルシアン・フロイドの代表作品

「カザミと男」1946年

カザミと男 ルシアン・フロイド
引用:https://www.tate.org.uk/art/artworks/freud-man-with-a-thistle-self-portrait-t00422

終戦後のフロイドは、薄めの色彩を用い、正確な直線的スタイルの作品を制作するようになります。1946年に描かれた自身のセルフポートレートである「カザミと男」は、その代表的な作品です。

「白い犬と少女」1951〜1952年

「白い犬と少女」ルシアン・フロイド
引用:https://www.wikiart.org/en/lucian-freud/girl-with-a-white-dog

1951年から1952年にかけて制作した「白い犬と少女」のモデルは、フロイドの最初の妻のキティ・ガーマンです。この作品はフロイドがその後ヌード作品を描くことの大きなきっかけとなりました。

この時期のフロイドの作品には、動物が頻繁に描かれていますが、これはペットと飼い主の関係性を主題としているためだそうです。

ヌード画を描き始めた頃、フロイドは大きな豚毛ブラシを使い始めました。彼は肉の質感や色を出すために厚塗りを行い、自由なスタイルを模索し、実践していきました。

「Benefits Supervisor Sleeping」1995年

「Benefits Supervisor Sleeping」ルシアン・フロイド
引用:https://medium.com/counterarts/benefits-supervisor-sleeping-1995-by-lucien-freud-1fa179aa970

1990年代半ばから、フロイドは一連の巨大な裸婦の肖像画シリーズを製作しました。

太ったモデルとして知られるスー・ティリー、通称『ビッグ・スー』のヌード画のなかで特に有名なのは、1995年に制作されたソファに寝そべるビッグ・スーの肖像画「Benefits Supervisor Sleeping」です。

この作品は2008年5月にクリスティーズ・ニューヨークで競売にかけられた際、3400万ドル(約36億円)で落札されました。この価格は、当時の存命中の芸術家による作品として最高額を更新しました。

ルシアン・フロイドの作品の特徴

ルシアン・フロイドの作風は、強烈なリアリズムと心理的な深みが特徴的です。フロイドの作品では対象人物の肌の質感や繊細さを表現するためにアースカラーを中心とした限られた色彩で、表現しました。

フロイドの筆致は、繊細で緻密なストロークから、より表現力豊かで質感のあるものまで様々で、この表現の差により作品に触覚的な質感が加えられています。

フロイドは特に初期の頃よく知っている人物を描き、その本質をとらえるために何時間も対象者たちと過ごしたといいます。フロイドの肖像画は、単に人物の特徴をしっかりと捉えた『よく描かれたもの』としてだけではなく、もっと深い内面的な人物像が滲み出るような、時には『冷徹な正直さ』で描かれ、人間の本質に迫っていることがわかります。

まとめ

フロイドは、肖像画というジャンルに新たな深みやリアリズムをもたらした巨匠として知られます。

人物の本質を追求し、人間性を冷徹なまで正直に表現したフロイドの肖像画は、後々のアーティストにも大きな影響を与えました。

参考

ルシアン・フロイド / Lucian Freudフロイトの孫にして戦後ポートレイト画の代表 https://www.artpedia.asia/lucian-freud/

画像引用元:https://observer.com/2024/02/ubs-hosting-exhibition-lucian-freud/

ABOUT ME
あやね
2018年にアメリカ NYへ移住した、京都生まれの大阪人。日本の伝統工芸が持つ独特で繊細な美しさが好きで、着物や器を集めている。郊外の家に引っ越したことをきっかけに、アート作品やアンティーク家具を取り入れたインテリアコーディネートにも興味を持ち始める。アメリカで日常生活に様々な形でアートを取り入れる人々に出会い触発され、2021年より趣味で陶芸をはじめる。