バリー・マッギーの経歴
バリーマッギー(Barry McGee)は、1966年にカリフォルニア州サンフランシスコで生まれました。中国系とアイルランド系のルーツを持っており、父親は自動車修理工場で働いていたといいます。
初期には「Twist」という名前で知られるストリートアーティストとしての活動も行っており、この名前は今でもマッギーの作品に登場することがあります。
1980年代後半から1990年代にかけて、サンフランシスコのグラフィティアートシーンの中心人物の一人であったマッギーは、サンフランシスコのミッション地区の美学に基づく芸術運動「ミッション・スクール」の先駆者でもありました。
マッギーの作品は、都市で流行った病気や過激な刺激、ストレス、薬物中毒など、当時のダークな都市の状況を表現したそうです。
若い頃からサンフランシスコのストリートカルチャーとグラフィティシーンに強く惹かれ、その情熱を追求するためにサンフランシスコ芸術大学(San Francisco Art Institute)で絵画・版画を専攻し、1991年に卒業しました。
1990年代初頭には、カリフォルニア州オークランドのマクリモンズ高校でアーティスト・イン・レジデンスを務めました。
1999年に同じくアーティストのマーガレット・キルガレンと結婚しましたが、残念ながら2001年に乳がんで妻を亡くしてしまいます。
ヴェネチア・ビエンナーレをはじめとする大規模な展覧会にマッギーの作品が出品された結果、2001年以降、彼の作品の市場価値は大幅に上昇します。その後、マッギーのサンフランシスコのストリート・アートの多くが盗まれるようになったそうです。
2004年、サンフランシスコ市庁舎での展示の一環として、マッギーはマット・ゴンザレス監督官の執務室の壁にスプレーで「国家を粉砕せよ」と描いたことで話題になりました。
また、2006年には、マッギーがアートワークを提供してコラボした「アディダスY1 HUF」が、アジア系アメリカ人によって『差別的な描写がある』と批判を受け、物議を醸しました。これに対し、マッギーは2006年3月のプレスリリースにて、『描かれたのは、自分自身が8歳の時のポートレートにすぎない』と反論しています。
バリー・マッギーの作品例
マッギーの作品は無題のものが多いため、いくつか特徴的なものをピックアップして紹介します。
作品によく登場する『憂鬱そうな男の顔』は、ストリートにおける不安や格差、人種差別などのような現実への反発意識を、ユーモアを込めて表現したアイコンです。
コミックブックやストリートカルチャーの影響を反映したもので、漫画的・戯画的なスタイルで描かれていることが多くあります。
マッギーの初期の作品は、ベイエリアのストリートに描かれたモノクロのピクトグラフィックのグラフィティなどが有名です。
また、初期のKAWSをサポートした人物としても知られています。
カラフルな幾何学模様も繰り返し用いられるモチーフとして知られ、絵画、彫刻、インスタレーションなどに取り入れられています。模様を反復したり重ねることで、緻密な構図を作り出した作品は、没入感があります。
技法として、絵の具を何層にも重ねて豊かな質感と奥行き感を生み出していたり、スプレーペイントやステンシルなどさまざまな方法を駆使して作り上げた作品は視覚的に複雑で見応えのあるものに仕上がっています。
また、古いドアや窓、家具など、『拾ったもの』を作品に取り入れることも多々あります。マッギーはよくこれらのオブジェクトをキャンバスとして再利用し、アートを施すことにより、都市の衰退や消費文化の問題に焦点を当ててきました。
バリー・マッギーの作品が観れる場所
バリー・マッギーの作品は、世界各地の美術館で見ることができます。
グラフィティ作品に関しては永久的なものではないため、消されたり、新しいものが出現したりすることもよくあるものの、世界の各都市で見ることができるようです。
美術館
以下は、バリー・マッギーの作品を観ることができる世界各地の美術館例です。
- サンフランシスコ近代美術館(SFMOMA):アメリカ、カリフォルニア州サンフランシスコ
- ロサンゼルス現代美術館(MOCA):アメリカ、カリフォルニア州ロサンゼルス
- バークレー美術館・パシフィック・フィルム・アーカイブ(BAMPFA):アメリカ、カリフォルニア州バークレー
- テート・モダン:イギリス、ロンドン
- シカゴ現代美術館(MCA):アメリカ、イリノイ州シカゴ
- インスティテュート・オブ・コンテンポラリーアート(ICA):アメリカ、マサチューセッツ州ボストン
- ヤーバ・ブエナ・センター・フォー・ジ・アーツ(Yerba Buena Center for the Arts):アメリカ、カリフォルニア州サンフランシスコ
バリー・マッギーのグラフィティがある都市
世界各都市で、バリー・マッギーのグラフィティを見ることができます。
アメリカ・カリフォルニア州サンフランシスコ、ロサンゼルス
アメリカ・ニューヨーク州ニューヨーク市
アメリカ・フロリダ州マイアミ
イギリス・ロンドン
ドイツ・ベルリン
スペイン・バルセロナ
オーストラリア・メルボルン
日本、東京
ブラジル・サンパウロ
東京には、2024年に新しく製作されたマッギーによる大型壁画があるため、以下で紹介します。
東京・渋谷
渋谷区東3丁目の庚申道架道橋には、2024年にリニューアルしたシブヤ・アロープロジェクトの一環として、マッギーによる幅16m高さ3.5mの大型壁画があります。
シブヤ・アロープロジェクトとは、災害時の一時退避場所と避難経路を周知する目的で、2017年に渋谷区で発足されたプロジェクトです。
ジオメトリックなグラフィックとポートレイトのドローイングを織り交ぜた壁画は、このプロジェクトをアートを通じて情報発信していくという意味をこめて制作されました。
(番外編)東京・恵比寿
ラジオパーソナリティーであり、世界各地の有名アーティストと交流のある野村訓一氏のインスタグラムには、恵比寿にあったクラブ、ミルク(2007年にクローズ)にマッギーが1998年に描きかけて残していた絵が、2020年に完成したことが紹介されていました。
バリー・マッギーのグッズ
バリー・マッギーのグラフィックが入ったグッズも、アートファンやストリートファッションファンからの人気があります。
日本では、東京のワタリウム美術館のミュージアムショップ「オン・サンデーズ」や、三越伊勢丹などで販売されているようです。
Tシャツ
マグカップ
スケートボード
まとめ
ストリートカルチャー、グラフィティ、ファインアートなどの要素を融合させたバリー・マッギーのアート作品は、ストレス、薬物中毒、人種差別など都市生活のリアルでダークな一面を表現しています。
東京・渋谷に新しくマッギーの壁画もできたので、ぜひ見に行ってみてはいかがでしょうか。
参考
Wikipedia https://en.wikipedia.org/wiki/Barry_McGee
画像引用元:https://www.wbur.org/news/2013/04/08/barry-mcgee-ica-2