コラム記事

画廊(ギャラリー)とは?歴史や画商の仕事内容、歴史的有名画商などを詳しく解説!

アート好きな方なら誰でも一度は画廊(ギャラリー)に訪れたことがあるのではないでしょうか?

とはいえ、画廊ってそもそも何なんだろう?という方もいらっしゃるかもしれません。

美術館とはどう違う?
どのように収益化している?
画廊での仕事ってどんな内容?

今回は、上記のような疑問を持つ方々に日本における画廊について知ってもらうために、詳しく解説していきます。

画廊とは?

引用:WIDEWALLS「How to Start an Art Gallery – Between Passion and Business」https://www.widewalls.ch/magazine/gallery-running-business-art

画廊とは、絵画や彫刻、写真などをはじめとする美術品を陳列、展示、そして売買する施設のことを指し、一般的には『ギャラリー』『アートギャラリー』とも呼ばれます。

一言に画廊といってもその内容は様々で、例えば現代アーティストを中心に紹介している画廊や物故の有名作家の作品を取り扱っている画廊など、その専門性・ジャンルなどは各画廊によって様々です。

アメリカ・ニューヨークのチェルシー地区には現代アートのギャラリーが多く集まっているように、エリアで専門性やジャンルに特徴が似通うということもあるようです。

画廊は誰でも気軽に立ち寄ってもいいの?信頼できる画廊はどう探す?

引用:Timeout「The Affordable Art Fair」https://www.timeout.com/newyork/art/the-affordable-art-fair

画廊には、なんだか買う予定がないと入りづらい、敷居が高いというイメージを持っている方もいるかもしれませんが、ギャラリーは美術館と違って無料で気軽に立ち寄り、美術品を鑑賞できる絶好のスポットです。

より多くの人々がそれぞれのギャラリーに展示される美術品に触れる機会を増やすことで、アート作品とそれを求める買い手がピッタリとマッチする可能性が広がるのです。

『アート作品の購入に興味があるけど、どこの画廊が自分の趣味と合うか、信頼できるかわからない』というかたは、各地で開催されるアートフェアに参加することをお勧めします。

アートフェアに参加できる画廊は厳選されており、信頼できる画廊ばかりです。

様々なギャラリーが一堂に集まるイベントでは、新たなジャンルのアートの開拓もできるため、ご自身が気にいるアーティストや作品を探すのにはベストな場所でしょう。

画廊・画商の歴史

画廊、あるいは美術品売買を仲介する画商の歴史を紐解いてみましょう。

まずヨーロッパにおいては、14~16世紀のルネサンス時代には絵画などの美術品は、教会や王族・貴族などのような一部の人々にしか購入できないものだったため、画家たちと買い手が直接取引をすることが一般的で、画商の存在はそれほど見られなかったようです。

その後、17世紀ごろ経済が発展していたオランダでは、一般の富裕層も部屋に飾るためなどに個人で絵画を買うようになりました。

このようなきっかけで画商の役割が増えてより一般的になったと言われています。

そして19世紀中ごろから、本格的に多くの有名な画商・画廊が活躍するようになりました。

一方日本では、室町時代の骨董商が、画商・画廊の流れの起点となったと言われています。

応仁元(1467)年から文明9(1477)年までの11年間、京都で起こった応仁の乱で錯乱した財宝の数々を骨董商が取りまとめ売買の仲介者として活躍したという説もあるそうです。

日本での画商の草分け的な存在としては、自身も彫刻家であった高村光太郎が有名です。

高村は、1910年に神田淡路町に「琅玕堂(ろうかんどう)」という画廊を開きました。

これをきっかけに日本でも洋画商とその画廊が出現し、大正時代初期には大正初期に田中喜作の田中屋、川路柳虹が流逸荘、野島康三が兜屋を営み、画廊と画商の存在がより一般的になっていきました。

その後は1919年にできた資生堂ギャラリーや1928年にできた日動画廊が、日本における画廊を牽引する存在となりました。

画商・美術商の仕事とは?

引用:My Decorative「What Does An Art Dealer Do?」https://mydecorative.com/what-does-an-art-dealer-do/

画商・美術商の仕事内容としては、所有している画廊や、展示枠を持っている百貨店画廊スペース、アートフェアなどのイベント会場に多くの人々が来場するように宣伝・集客をしたり、展覧会全体の企画をしたり、アーティストの作品の販売の営業的な役割など幅広く含まれます。

後述するコマーシャルギャラリーに関わる画商の場合は、発掘した若手アーティストが世に知られ、アートコレクターによって安定的に購入されたり、展覧会などイベントに参加できたり、知名度が上がったりするように、若手アーティストたちの育成・マネジメントするという役割も担います。

アーティストがアイドルだとしたら、画商・美術商はその芸能プロデューサーというイメージがしっくりくるかもしれません。

その他にも、美術史の調査研究や美術館のコレクションの監修など、経験豊富な画商はより専門的な場面でも活躍することがあるそうです。

画廊の収益化の仕組み

引用:Discover Japan「森アーツセンターギャラリー」https://discoverjapan-web.com/article/66658

画廊は、どのように収益を得ているのでしょうか?

まず一般的に画廊と認識されている施設には大きく分けて2種類があります。

レンタルギャラリー(貸し画廊)コマーシャルギャラリー(企画画廊)です。

レンタルギャラリーは、その名の通り展示のための場所をアーティストに貸し、その期間に応じて料金を請求します。

出展者が展覧会の内容などの詳細についてプロデュースすることが大半であり、ギャラリー側が展覧会でのアーティストの作品販売の手数料を取らない場合も多いそうです。

一方でコマーシャルギャラリーは、アーティストの作品販売による収益を中心とする形態をとっている画廊です。

コマーシャルギャラリーでは、アーティストと作品販売時の利益の配分を決める売買契約に加え、マネジメント契約を結びます。

ギャラリー側は、アートコレクターたちに取り扱う作家の作品を販売することでその販売手数料を得るため、展覧会の企画や広報に力を入れ、販売の機会を増やします。

コマーシャルギャラリーは、新進気鋭の若手アーティストを発掘して育て、商業的に自立するレベルにまでマネジメントするという側面も持っていると言えます。

基本的にはこの2種類のタイプに分かれるのですが、中にはこの2つを掛け合わせた形態で運営する画廊も最近では多いそうです。

西洋美術史に貢献した有名な画商たち

美術史を学ぶときに、画商の名前を聞いたことはほとんどないでしょう。

画家たちのように、歴史上でスポットライトを浴びないものの、素晴らしい画商がいたからこそ、素晴らしいアーティストたちが歴史に名を残すことができたと言っても過言ではありません。

類稀なる先見の明を持ち、美術への情熱を持って西洋美術史に貢献してきた世界的に有名な画商たちを紹介します。

ジョセフ・デュビューン(1869年〜1939年)

引用:The New Yorker「The Days of Duveen」https://www.newyorker.com/magazine/1951/09/29/the-days-of-duveen

ジョセフ・デュビューンはイギリスの画商で、ルネサンス期の作品を世に広めたことで知られています。

19世紀後半から、急速に経済発展したアメリカの新興財閥に、ルネサンス以降の世界の美術の専門家のトップである美術史家バーナード・ベレンソンと協業して多くの西洋絵画を紹介したデュビューンは、美術の発展に大きく貢献した画商です。

現在のアメリカの有名な美術館に収蔵されている作品の多くは、元をたどればデュビューンが取り扱っていました。

ポール=デュラン・デュエル(1831年〜1922年)

フランスの画商ポール=デュラン・デュエルは、印象派を支えた画商です。

最初は保守的な美術界や世間に認められなかったクロード・モネなど印象派の画家たちを支援し、個展を開催して、印象派の画家たちが活躍したフランス以外にもアメリカやドイツ、ロシア、イギリスなど海外に市場を広げて印象派の価値を大きくあげた第一人者として有名です。

アンブロワーズ・ヴォラール(1866年〜1939年)

引用:Christies「https://www.christies.com/features/How-vast-his-legacy-Treasures-from-the-collection-of-Ambroise-Vollard-8965-1.aspx」https://www.christies.com/features/How-vast-his-legacy-Treasures-from-the-collection-of-Ambroise-Vollard-8965-1.aspx

アンブロワーズ・ヴォワールは、ポール・セザンヌを発掘したフランスの画商です。

フィンセント・ヴィレム・ファン・ゴッホやポール・ゴーギャンなども支援した他、まだ若かった青の時代のパブロ・ピカソやアンリ・マティスの初めての個展の開催に携わった人物として知られています。

ダニエル・アンリ・カーンワイラー(1884年〜1979年)

ダニエル・アンリ・カーンワイラーはドイツ、フランスで活躍した、キュビズムの画商です。

巨匠パブロ・ピカソと独占契約したことで知られ、現在の現代美術のギャラリストの先駆けとも言われるほど、その商才が評価された画商の一人です。

日本で画廊が多いエリアは?

日本で画廊が集中するエリアとして知られてきたのは、東京の銀座や大阪の西天満などですが、1990年代に日本の経済状況が悪化したことがきっかけで画廊の廃業や移転が相次ぎました。

2000年代以降には、画廊は日本各地に分散するようになり、コマーシャルギャラリーの形態をとる画廊が増えたそうです。

現在でも銀座エリアには約100件ほど画廊があるようで、特に老舗の画廊は銀座周辺に集まっているといえると思います。

日本の中でもあらゆる最高峰が集まる土地として知られる銀座には、今でも最高峰の美術品を求める人々も集まりやすいのかもしれません。

まとめ

世界の美術界の巨匠たちを発掘し、価値づけして世の中に広めてきた画廊・画商は、美術史の発展に貢献してきた重要な存在であるといえます。

先見の明が大当たりすれば巨万の富を得ることができますが、多くの場合、美術への情熱を持つ方々が活躍している、ロマンのある世界だなと感じました。

私は、日本国内、海外問わず、旅行をするときにはその土地の工芸品や美術品に触れるために美術館やギャラリーを訪れるのが好きです。

美術館と比べたギャラリーの良さは、そこで働く方々やアーティストとより近い距離で作品について話をしたりすることで、そこにある作品に人間味を感じながら新たな視点で作品を鑑賞できることです。

芸術品は、その見た目の美しさだけでなくその背後にあるストーリーやその語り部も重要な役割を持っているため、ギャラリーを巡るととても価値のある時間を過ごすことができるように感じます。

参考

Rental Gallery.JP「貸しギャラリー・画廊の種類」

永井美楽塾「【画商論②】世紀の大画商を解説!時代を作った美の発見者たちを探る!」https://www.youtube.com/watch?v=fKLNrqtlWTI

ABOUT ME
あやね
2018年にアメリカ NYへ移住した、京都生まれの大阪人。日本の伝統工芸が持つ独特で繊細な美しさが好きで、着物や器を集めている。郊外の家に引っ越したことをきっかけに、アート作品やアンティーク家具を取り入れたインテリアコーディネートにも興味を持ち始める。アメリカで日常生活に様々な形でアートを取り入れる人々に出会い触発され、2021年より趣味で陶芸をはじめる。