コラム記事

ホテル「ザ・リッツカールトン日光」でアートを体感しよう!:田中慎太朗や春原直人などのアート作品138点が楽しめます

以前「一度は泊まってみたい!美術鑑賞も楽しめる日本のアートホテル」でホテルの中でアートが楽しめることをご紹介しました。今回はザ・リッツカールトン日光にのアートについてご紹介します。

リッツカールトングループはそのホテルのコンサプトに合わせてアートを飾っています。例えば、ザ・リッツカールトン大阪では18世紀英国の伝統的なジョージアンスタイルをモチーフにしたり、京都では源氏物語をイメージし名和晃平「PixCell-Biwa (MICA)」なども展示されています。

関東にお住まいの方ですと「よし、紅葉を見に行こう!」ということで栃木 日光に行かれる方も多いかと思います。今回は2020年に完成した「ザ・リッツカールトン日光」にあったアート作品を一部ご説明していきます!

ザ・リッツカールトン日光とは

ザ・リッツ・カールトン日光は、中禅寺湖畔の男体山を望むロケーションに、奥日光の手つかずの自然と調和するように佇むラグジュアリーリゾートです。栃木の伝統工芸を活かしたデザインや、日本家屋の縁側に見立てたラウンジエリアをしつらえた客室など、日本の繊細なミニマリズムをいたるところに体現しています。ザ・リッツ・カールトンブランドでは初となる温泉施設を有し、露天風呂では心地よい風と木々の香りが心と体を柔らかく解きほぐします。

引用:https://www.ritzcarlton.com/jp/hotels/japan/nikko/hotel-overview

元々このホテルの場所にはレイサイドホテルという別のホテルが建設されていましたが、オーストラリアのデザイン事務所「LAYAN Architects + Designers」がかつての風景からインスピレーションを得て新しく誕生しました。

ザ・リッツカールトンのアート

「自然・文化・神秘性」を元に16名の作家による138点のアートが飾られています。ザ・リッツカールトン日光が着工する際コンペがありその中から選ばれた作家がホテルのアート作品を飾りました。

栃木の工芸品、現代アートなど美しいホテルにあった作品の一部を紹介します。

田中慎太朗

「波の門」

ザ・リッツカールトン日光はシンプルで洗練されたデザインで統一されているので、入り口の真っ赤な2枚の板が目に入ります。

この板は一色で赤く塗られているように見えますが、実は自然の色に近いグレーや緑など何層にも色が塗られています。

そして垂れた線は人間の琴線(きんせん)を表しています。琴線とは心の奥に秘められた、感動し共鳴する微妙な心情です。リッツカールトンに訪れた時のはっと心が感動するそんな気持ちを表しているのでしょうか?

田中慎太郎さんがお亡くなりになったのが2019年で、ホテルの開業が2020年だったのでオープンに見に来ることは叶いませんでした。田中慎太郎さんはミニマルアートの中の先駆者であり高く評価されています。

田中慎太朗さんプロフィール

1940年、東京生まれ。茨城県立日立第一高校卒業後、上京。二紀会展(褒賞)、読売アンデパンダン展に出展。1960年、ネオ・ダダイズム・オルガナイザーズに参加。その後、第6回パリ青年ビエンナーレ展(’69)、第36回ヴェネツィア・ビエンナーレ(’72)への参加など、国際的に活躍。80年より病気療養のためしばらく制作から離れるが、回復後、《風景は垂直にやってくる》(’85)を発表。ブリヂストン本社ロビー彫刻《そのとき音楽が聴こえはじめた》(’86)などのコミッションワークを多数手がける。2001 年「饒舌と沈黙のカノン」(国立国際美術館)開催。日立市のアトリエで精力的に制作を続けた。2019年8月23日、逝去。

引用:https://www.artagenda.jp/exhibition/detail/5109

春原直人

「鳴厳(めいげん)」

日光東照宮にある「鳴き龍」をイメージして作られた作品。中禅寺湖を一周歩いた際に神を感じたそうです。岩絵具で書かれているため近くに寄るとキラっと光っているのが分かります。ザ・リッツカールトン日光のコンセプトでもある神々しさを感じます。

春原直人さんプロフィール

1996年長野生まれ。山を主題に、登山(フィールドワーク)により蓄積された体感(リズム)を共鳴(リミックス)させ、新たな絵画のあり方、存在の可能性を模索する。写生を基に山、岩を墨・青墨・岩絵具でそのテクスチュアを描くと同時に、実際の現場と自身の思考の場が重なるような内面的な世界を描いている。

引用:https://artfrontgallery.com/artists/post_8.html

留守玲

「CONTEX W」

奥日光の樹木をイメージを鉄で表現しています。鉄の棒や鉄板を細い炎で熔断、熔接することで制作されています。

留守玲さんプロフィール

1976年 仙台市生まれ。2002年 多摩美術大学大学院美術研究科修了。2004年 第11回日本現代藝術奨励賞。鉄を主素材とし、熔接・熔断を用いた独自の手法により作品制作。個展発表の他、東京国立近代美術館工芸館、茨城県つくば美術館、茅ヶ崎市美術館、山口県立萩美術館・浦上記念館等に出品。

引用:http://www.jp-artsfdn.org/profile/?id=2003004

浅見貴子(あざみたかこ)

日本料理レストランの受付の壁に広がる水墨画。ホテルの駐車場にある木をモチーフに書かれています。和紙の裏側から大きな筆で一つ一つ楕円形の墨を置いてゆき、紙の表面ににじんだ痕跡が作品となるこの手法は、偶然をきっかけに生まれたものだそうです。

パレス東京にも絵が飾られており、最近では黒の作品だけでなく青い色を使った水墨画制作されています。

浅見貴子さんプロフィール

1964年埼玉県生まれ。窓から見える光溢れる庭先の木々がモチーフ。和紙の表裏両面から墨と胡粉で、樹木の枝や幹を骨格に、光や風を織り込むように表現されている。季節や天候、時間帯によって変化する木々の豊かな表情を描いている。2007年文化庁新進芸術家海外研修員としてニューヨークに留学。

引用:https://www.palacehoteltokyo.com/art/details/22.php
引用:https://www.artfrontgallery.com/artists/Takako_Azami.html

南条嘉毅(なんじょうよしたか)

バーに設置されている「日光またたび湯」。猫が温泉に入っておりとても可愛らしい作品です。実は日光はリッツカールトングループ初めての温泉が併設されています。

露天風呂では源泉かけ流しを楽しめ、湯本温泉からお湯を引いています。湯本温泉の水質は全国でも四番目に良いと認定されています。

この絵の向かって左側はただ黒い絵の具で塗られているのではなく、湯本温泉の「土」を使っています。絵画に自然の素材を入れることで新しい表情を魅せてくれます。

南条嘉毅さんプロフィール

1977年香川県生まれ、和歌山在住。2002年に東京造形大学研究科(絵画)修了。中之条ビエンナーレや水と土の芸術祭、また国内外のアートフェアでも紹介されるなど徐々に活動の場を広げている。越後妻有アートトリエンナーレ2012の土の美術館「もぐらの館」では、土を用いたペインティングをキャンバスや窓ガラスなどにも展開した。作家はその場所を自ら訪れ、訪れた場所の魅力や歴史や日常などに基づき、土を採取し、そうして持ち帰ったさまざまな情報を分析して絵画やインスタレーションに落とし込んでいく。風景を主題とした絵画作品の特徴は、絵具で描かれる部分と描かれている現場の土を使った部分とがある。インスタレーション作品は、採取した土を乾燥しふるいにかけ、その分類された土を使って普段とは違った状況をつくり出す。

引用:https://archive2017.oku-noto.jp/artists/yoshitaka-nanjo/

日光彫

日光彫とは栃木県日光市で制作される彫り物です。 江戸時代、日光東照宮の建設時に全国から集まった宮大工や彫物大工、漆工などの職人が日光東照宮完成後もこの土地に住みつき発展したと言われています。ひっかきという道具を使うため曲線が美しく仕上がります。

通常、日光彫は鏡やお盆などの装飾に使われますがリッツカーツトンでは壁の装飾などに使われています。和食レストランの入り口では日光彫がライトで照らされ幻想的な雰囲気を作り上げていました。

そしてこのカウンターの台も日光彫を元に作られていますが、こちらは金属でできておりリッツカールトンらしさを表現したものだそうです。

部屋の中にも美しい彫刻が。。。

日光彫の「鹿沼組子(かぬまくみこ)」からインスピレーションを受けて作られたという繊細な細工は部屋の中でも感じられます。ふんだんに使われた木材の温もりを感じ、室内にいても自然を感じることができます。

益子焼き

益子焼き(ましこやき)とは日光の伝統工芸の焼き物です。益子焼きの特徴は土の質感を残した感触、そして美しい茶色。益子特有の素朴でありながら力強い作品は近くで見ると迫力がありました。昭和54年に国の伝統工芸品に指定されています。

益子焼きを現代風にアレンジした作品も飾られています。

まとめ

ザ・リッツカールトン日光は現代アートをふんだんに感じることができるホテルでした。

宿泊はしなくてもランチやディナーそしてアフタヌーンティーでも訪れることができるのでぜひ訪れてはいかがでしょうか?

秋は紅葉のシーズンでもありますが「芸術の秋」でもあります。

紅葉を見ながら、アートも体験できるザ・リッツカールトン日光で素敵な旅行を楽しみましょう!

ABOUT ME
しおり岡
編集長/ライター。小学生の頃はエジプト文化、中学生では西洋美術、高校生は日本の歴史にハマり、大学在学中に仏像に恋をして、学芸員を取得。卒業後、大手人材会社で営業を経験。その後、飲食店の広報・デザイナーを経て、アメリカ・NYにて転職。コロナウイルスのため帰国し、現在は日本に滞在中。趣味は「美術館や遺跡を経験するための海外旅行」。今まで40カ国以上を旅行をし、世界の建築や文化、食事、アートに触れる。