コラム記事

世界最大のオークション会社解説(クリスティーズ編)

最近では日本国内でも、趣味や投資目的で、オークションを通じてアート作品を購入するコレクターの数が以前よりかなり増えてきているそうです。

『アート作品を購入したい!』と思ったら、まずどこから始めればいいのでしょうか?

アート作品の売買、すなわちアートオークションに精通するための第一歩として、世界最大のオークション会社であるクリスティーズやサザビーズについての知識は欠かせません。

今回は、アートオークションの世界を牽引する世界最大の2社のうち、クリスティーズについて解説していきます。

クリスティーズの歴史

ジェームズ・クリスティーの肖像画

イギリス ロンドン発祥の美術オークション会社クリスティーズは、1766年にジェームズ・クリスティー(以下、クリスティー)によって創設されました。

雄弁で人々を惹きつける魅力を持っていたクリスティーは、多くの芸術家や職人と友人になり、彼の会社はアートコレクター、ディーラー、そしてロンドンの社交界のハブとなっていきました。

また、クリスティーはオークションを人々が楽しめるイベントに変えることに貢献し、当時の富裕層のアートコレクターや愛好家、そして急成長していた中産階級の両方を惹きつけることに成功しました。彼は幅広い芸術に関する知識も豊富だったため、当時から多くの種類の作品を取り扱っていました。

18世紀頃からは、当時のイギリスで最大の伯爵家などのコレクションの売買に着手し、アートオークションの代表格となっていきました。クリスティーの死後もオークションハウスは子孫に引き継がれていきます。1940年に有限会社として再編成、1973年に公開会社になり、フランスの投資家に買収され、現在に至ります。

クリスティーズは、創設時から現代まで約3世紀もの長い間に渡り、世界で起こった戦争時代も乗り越えて、貴重な美術作品を貯蔵し、世界を代表するオークション会社の1つとして、アートの売買市場を盛り上げてきました。

現在、本社はロンドンのキングストリートにあり、世界46カ国にオークションハウスを構え、美術品や装飾品、ジュエリー、写真、収集品、ワインなどの80種以上の幅広い分野に及ぶカテゴリで年間 約350回のオークションを提供しています。

過去の落札記録作品

レオナルド・ダ・ヴィンチの作品「サルバトール・ムンディ」(引用:The Economist「What happened to the “Salvator Mundi”?」https://www.economist.com/prospero/2021/04/13/what-happened-to-the-salvator-mundi)

天才画家として有名なレオナルド・ダ・ヴィンチの作品のうち個人が所有していた最後の作品であった「サルバトール・ムンディ」は、イエス・キリストを描いた肖像画です。

2017年11月にクリスティーズのオークションにて、オークション史上、世界最高記録である4億5031万2500ドル(約508億円)で落札されました。

クリスティーズの競売人

現在クリスティーズには世界各地に56人の競売人(オークショニア)がいます。
オークション会社にとって、優れた競売人たちの存在は、オークションにかけられる作品と同じぐらい重要です。

オークショニアは、ある品物に対して値段をつけながら取引価格を決めていくイベントであるオークションを開催し、運営する仕事です。

オークションに出品される品物は、オークション会社に持ち込まれる場合もあれば、コレクターに出品を呼びかけて集められる場合もあります。オークショニアは、出品されたそれらの品物について、保存状態など細部にわたってチェックし、オークションの本番に臨みます。

オークションでは、出品者と落札者を含めた参加者が満足できる円滑な運営が求められます。そのための手際の良い段取りとコミュニケーション能力が必要です。

(引用:未来の職業研究「オークショニア、競売人」https://toshin-job.com/job/507/#:~:text=%E3%82%AA%E3%83%BC%E3%82%AF%E3%82%B7%E3%83%A7%E3%83%8B%E3%82%A2%E3%81%AF%E3%80%81%E3%81%82%E3%82%8B%E5%93%81%E7%89%A9%E3%81%AB,%E3%81%97%E3%80%81%E9%81%8B%E5%96%B6%E3%81%99%E3%82%8B%E4%BB%95%E4%BA%8B%E3%81%A7%E3%81%99%E3%80%82&text=%E3%82%AA%E3%83%BC%E3%82%AF%E3%82%B7%E3%83%A7%E3%83%B3%E3%81%A7%E3%81%AF%E3%80%81%E5%87%BA%E5%93%81%E8%80%85%E3%81%A8,%E3%82%B3%E3%83%9F%E3%83%A5%E3%83%8B%E3%82%B1%E3%83%BC%E3%82%B7%E3%83%A7%E3%83%B3%E8%83%BD%E5%8A%9B%E3%81%8C%E5%BF%85%E8%A6%81%E3%81%A7%E3%81%99%E3%80%82)

クリスティーズの競売人の一人である、ジョン・ヘイズ(以下、ヘイズ)は、クリスティーズでの38年のキャリアの中でこれまで500回以上ものオークションで競売人を務め、約10億ドル(約1千億円)の売り上げを作り出してきました。

ヘイズはロンドンでのクリスティーズのプログラムで18世紀のアメリカのアート史を専攻し、修士号取得を取得しました。その後世界各国の有名なアート機関でインターンシップをしたのち、クリスティーズのアメリカ部門へ入社し、現在まで勤めています。

ジョン・ヘイズ(引用:クリスティーズ公式ウェブサイト https://www.christies.com/features/Live-like-a-Rockefeller-An-18th-century-unicorn-chest-8829-1.aspx)

競売人は秀でた専門知識の他に、優れたコミュニケーション能力も必要とされる職業ですが、軽快なテンポと絶妙なタイミングを逃さないオークション進行や、時に即興でのユーモアなども織り交ぜながらオーディエンスを楽しませ、どんなことが起きても冷静に対応するクリスティーズの競売人たちの姿には、まさにベテランの仕事ぶりを感じることができます。

最近落札された作品

NFT(非代替性トークン)といえば、近頃何かと話題になっていますが、オークション会社として長い歴史を持つクリスティーズでも、初の試みとしてアーティストBeeple(本名:マイク・ウィンケルマン)の「The First 5,000 Days」がデジタル作品としてNFT化され、出品されました。

Beeple 「The First 5000 Days」(引用:クリスティーズ公式ウェブサイトよりhttps://onlineonly.christies.com/s/beeple-first-5000-days/lots/2020)

このオークションは100ドル(約1万1,000円)からスタートしたにも関わらずなんと6,930万ドル(約75億3,600万円)というデジタルアート市場最高価格で落札された上に、参加者の64%を若年層であるミレニアルズ、Z世代で占めていたそうです。

アートオークションに参加する層も変化をし続けている中で、クリスティーズも素早く対応し新しいコレクター層を取り入れられていることがわかります。

クリスティーズ・ジャパン

日本でのクリスティーズによる査定サービスや、出品・落札目的でオークションに参加したい方々のためのサービスは、クリスティーズ・ジャパンを通して提供されています。

クリスティーズ・ジャパンは、西洋美術部門として印象派・近代絵画・コンテンポラリーアート、東洋美術部門では中国書画・陶磁器・日本美術・韓国美術、そしてラグジュアリー部門としては、宝石や時計などを主な取り扱い分野としています。

オフィス所在地は東京都内ですが、宝石や時計などに関しては、年に数回に渡って、主に東京と大阪で完全予約制の査定会が開催されます。

2021年6月現在では、オフィスはアポイントメント制で、クリスティーズ・ジャパンのスタッフはリモートワークで顧客対応をしているそうです。

まとめ

250年以上もの長い歴史を持ち、伝統を重んじる老舗オークションハウス、クリスティーズ。そのスタイルを貫き、アートのプロフェッショナルが集結しているからこそ、高級品のオークション会社として世界トップであり続けています。

一方で、著しい時代の変化にも迅速に適応して取り入れ、しっかりとオークションハウスとしての役割を果たし続けている姿も、素晴らしいと思います。

世界中のアート作品、工芸品などを世代を超えて大切に受け継いでいくためにも、クリスティーズのようなオークション会社の存在はとても重要だと感じました。

ABOUT ME
あやね
あやね
2018年にアメリカ NYへ移住した、京都生まれの大阪人。日本の伝統工芸が持つ独特で繊細な美しさが好きで、着物や器を集めている。郊外の家に引っ越したことをきっかけに、アート作品やアンティーク家具を取り入れたインテリアコーディネートにも興味を持ち始める。アメリカで、日常生活に様々な形でアートを取り入れる人々に出会い触発され、今年は自宅で陶芸も始める予定。