遂に7/14に宮崎駿監督(以下、宮崎監督)の最新作である、「君たちはどう生きるか」が全国の映画館にて公開となりました。
あらすじについては公開初日を迎えても明かさないという宣伝方針ではありますが、公開3日現在で興行収入が147.7億円を超える大ヒットを記録しているようです。
あまりの人気から公開3日でアメリカでの公開も決まったそうです。日本のみならず、世界中に社会現象を巻き起こす作品となるかもしれません!
そんなスタジオジブリ最新作「君たちはどう生きるか」についてあらすじや感想について徹底解説。美術監督についても紹介していこうと思います。
作品中の「よくわからない」といわれる場所についても私なりに考察してみました。
宮崎監督はこの作品を通して伝えたかったメッセージはなにかなども解説していこうと思います。
「君たちはどう生きるか」は何がすごいの?
実は今回の「君たちはどう生きるか」には製作する過程にすごい点が3つもあります。
- 製作委員会方式なしでの製作
- 美術監督である「武重洋二監督」がすごい!
- 内容が深い
製作委員会方式なしでの製作
「製作委員会方式」とは、簡単に言うとスポンサーのようなものです。
一つの映画を製作するのに数億円の費用は掛かり、資金調達のために複数の企業に出資してもらう必要があるというのが一般的な映画製作の流れです。
メリットとしては資金繰りに困ることはありません。しかしデメリットとしては出資額と出資先が多ければ多いほど出資先への忖度も生まれやすく、内容も監督が表現したいものと少し変わってしまうといったことは実はよくある話なのです…。
今回の作品は異例の「製作委員会方式」をとっていないため内容に関しては宮崎監督やその他スタッフが表現したい内容を純度高く表現することができているといえるでしょう。
美術監督である「武重洋二監督」がすごい!
ジブリ作品を多く手がけてきた「武重洋二監督(以下、武重監督)」。やはり武重監督なくしてジブリは語れないといっても過言ではないでしょう。
この手がけてきた作品は以下の通りです。
背景担当
- となりのトトロ
- おもひでぽろぽろ
- 紅の豚
- 耳をすませば
- 猫の恩返し
- 時をかける少女
- 崖の上のポニョ
美術監督
- もののけ姫
- ホーホケキョ となりの山田くん
- ハウルの動く城
- ゲド戦記
- サマーウォーズ
- 借りぐらしのアリエッティ
- 風立ちぬ
ジブリの大作には必ずと言っていいほど武重監督が関わっています。はやりジブリのキーマンともいえる人物だといえるでしょう。
内容が深い!
ネット上での声を集めてみると以下のようなコメントがありました。
「あのお爺ちゃん、80過ぎてこんな想像力を実現するの凄いな」「集大成でありながら全く新しい」と好意的な受け止めが多数あった。「ぱやお(宮崎監督の通称)の人生を思って泣けてきてしまった…」と、作品に宮崎監督の人生を重ね合わせた人もいた。一方で「面白いけどよく解らんとこもある。2回目3回目の方が面白くなるスルメタイプかな」「お腹なのか胸なのかわからないけどいっぱい詰め込まれた、もう一回観たい」といった感想も。
引用:「圧巻」「よく解らん」 宮崎駿監督「君たちはどう生きるか」に感想続々/日経新聞オンライン/https://www.sankei.com/article/20230714-UWWPCWEGERDLXOSWHAGL6GYYF4/
中には「1回目から大満足のスルメ映画」と称賛する声も。
宮崎監督自身も今作品を「おそらく、訳が分からなかったことでしょう。私自身、訳が分からないところがありました」と語っています。
長く生きてきた上に、恐らく人並み以上にさまざま体験をしてきた宮崎監督でさえすべてを理解できていないところがあるほど深い内容だといえるでしょう。
確かに、今回の内容は見る方の視点からいろいろな解釈ができるような作品となっている気がしました。
物語を通じて哲学のようなものに触れている感覚もある作品だったように思います。
【ネタバレ】「君たちはどう生きるか」のあらすじは?
「君たちはどう生きるか」のあらすじは
眞人は東京大空襲で病院に入院していた母親を亡くしてしまい、1年後に父親に連れられ、亡くなった母親の実家にやってくる。
引用:猫でもわかる映画ブログ/【ネタバレ】『君たちはどう生きるか』考察【タイトルの意味・テーマとラストシーンについて】|猫でもわかる映画ブログ (nyanko-movies.com)
父親は母親の妹であるナツコと再婚しており、ナツコのお腹の中には子供が宿っていた。眞人は訪れた母親の実家で、言葉を話す不思議なアオサギを見かける。
そしてある日、ナツコが行方不明となってしまい、眞人は不思議な世界へと迷い込んでいく・・・
といったストーリーになっています。
あらすじだけでも少し重たい内容であるのがつたわってくるのではないでしょうか。
ここから少しずつ内容について深堀していこうと思います。
【ネタバレ】2018年に一番読まれた歴史的名著、漫画「君たちはどう生きるか」とは一緒?
2018年に一番読まれたといわれている吉野源三郎先生作「君たちはどう生きるか」の映画バージョン?と思われる方も多いかもしれません。しかし実際は宮崎監督による完全オリジナルで描かれています。
漫画「君たちはどう生きるか」の再ブームが起こっている理由としてはストーリーの中で亡き母から贈られた本を偶然目にし、その本がまさに吉田源三郎さんの「君たちはどう生きるか」の本だったからだと思います。
眞人はこの「君たちはどう生きるか」を読みながら涙している場面が描かれています。
ちなみにこの本は宮崎監督の愛読書でもあったそうです。
「君たちはどう生きるか」のモデルとなった作品があった!
実は宮崎監督は児童文学をよく読むことで知られています。今作品のモデルとなったとされる作品がイギリスの児童文学である「失われたものたちの本」です。
「君たちはどう生きるか」と「失われたものたちの本」の共通点は
- 主人公の年齢が同じくらい
- 舞台が戦争下であること
- 主人公は戦争中に母親を亡くしているということ
- 父親の再婚するということ
- 引っ越し先に大叔父が神隠しにあったという場所があること
- 主人公が見知らぬ世界へと飛ばされるということ
と数々の共通点があります。
宮崎監督も愛した「失われたものたちの本」も本作品と一緒に見てみると更に理解ができること間違いなしです。
【ネタバレ】「君たちはどう生きるか」の内容が気持ち悪いってほんと?
「君たちはどういきるか」に関しての感想を見てみると内「気持ち悪い」といったコメントを目にすることがあります。
上記のようなコメントを残す方々がどんなところを「気持ち悪い」と思ったのか少しだけ考えてみました。
個人的には特に大丈夫でした。
序盤で鯉やカエルの大群が出てくるシーンがありました。眞人の身体にまとわりつくカエルの群れの描写に拒否反応を示す方も一定数いるのかもしれないと思いました。
あともう1つ。大きな魚のような生物を眞人が捌くときに、魚の血が飛び散ったシーンや腸が出てくるシーンなども苦手な方からしたら少し気持ち悪いと捉えてしまう方もいたのかもしれません。
【ネタバレ&考察】なぜ眞人は自傷行為をしたか
ここからは本作品で「?」と思った部分のついて考察をしていこうと思います。
まず1つ目の謎としてはなぜ眞人は自傷行為に至ったのかということです。
やはり新しい環境の中に移り住んだ上に、すぐに新しい家族に心を開けるわけでもありません。
学校では裕福な家庭で育った転校生ということから非難を浴び、居場所がない状態だったといえるでしょう。
父親もそんな孤独を抱えた眞人に寄り添ってくれるわけでもありません。
自傷行為をしたのは父親にわかってほしいといった気持ちからだったのかもしれません。
【ネタバレ&考察】「殺生できずに食べるだけの人」、「わらわら」、「ヒミ」、「インコ」、「大叔父」は一体どのような存在なのか
眞人が下の世界に迷い込んでしまってからは不思議な存在たちと出会っていきます。
私の解釈では
「殺生できずに食べるだけの人」は戦時中に餓死した方々
「わらわら」はこれからこの世に生まれる新しい命たち
「ヒミ」は1年間の間失踪していた子どもころのお母さんの姿
「インコ」は愚かな人間たち
なのではないかと思いました。
【ネタバレ&考察】下の世界とは結局どのような場所なのか
とてつもなくカオスな世界でしたが、一体下の世界とはなんだったのでしょうか。
上記の「殺生できずに食べるだけの人」や「わらわら」の存在を考えると生と死の境目のような場所ではないかと考えられます。
【ネタバレ&考察】なぜ産屋に入ることが禁忌とされていたのか
なぜ夏子がいた「石」に囲まれた産屋に入ることは禁忌とされていたのか。という点を疑問に思った方もいいのではないでしょうか。
産屋というのはかつて出産時の血が“穢れ”とされていた頃に、産婦が人から離れて過ごすために用意されていた場所だったようです。
上記のことを考えると穢れた場所に立ち入ることは禁忌とされていることもうなずけます。
宮崎監督が「君たちはどう生きるか」で伝えたいこと
1つの映画の企画~映画公開までの期間は5~10年といわれています。
今年82歳となる宮崎監督ですが、日本の男性健康寿命72歳なことから身体の不調が起ってしまうということがいつ起きてもおかしくない年齢です。
あと宮崎監督が手掛けることができる作品も今回が最後かもしれません。
最後の集大成で宮崎監督はどのようなメッセージを私たちに伝えたいと思ったのでしょうか。
大叔父の存在は宮崎監督をイメージさせるような存在で、13個の石は宮崎監督が過去作り上げてきた大作13個を指しているのではないかという説がありました。
宮崎監督が今まで作り上げてきたの作品をお手本と受け継いでいくのではなく、今後のアニメ監督や今を生きる若者たちには自分の手で新しい世界を切り開いてほしいといった思いが込められた気がします。
まとめ
今作品「君たちはどう生きるか」についてまとめてみました。
冒頭でも述べたようにやはり内容が濃い分、さまざまな解釈のできる作品だといえる気がしました。私が解釈する以上にいろいろなことを受け取った方も多いかもしれません。
まだ「君たちはどう生きるか」を観ていない方は是非映画館で1度は観てほしい作品です。もう映画館で観た方も何回か観てみることをお勧めしたいです!