コラム記事

「映画:アートのお値段」でアートとお金の関係を考えよう!

映画「アートのお値段」を鑑賞しました。

気になってはいたものの、なかなかみる機会がありませんでしたが、GWに鑑賞しました。皆さんは鑑賞されたことありますか?Amazon Primeで100円で見ることができました。

現代アートってよくわからないし、どうしてそんな値段がついているの?と思う方は見る価値ありです。

アーティスト、コレクターやオークショナー、評論家をはじめ様々な立場から現在のアートの値段のつけられ方が分かるドキュメンタリーです。

冒頭ではジャン・ミシェル・バスキアの作品がZOZO創業者・前澤氏に123億で落札されたオークションシーンも映画に登場します。

この映画では、2017年サザビーズオークションの開催に密着取材しています。

新型コロナウイルスにより2021年の結果は散々だったと伝えられていますが、2017年のNYでは空前のアートバブルでした。出てくるアート関係者の目がギラギラしており、オークションへの熱意や興奮がこちらにも伝わってきました。

アーティストからのアート界への見解…

アーティストは今のアート市場を「狂っている」と考えていたのが印象的でした。

映画を見る前は、オークションで高値取引された作品は、今後も高い値段で買い手が決まり、自分の絵が高額で評価されてることはアーティストにとって嬉しいことかと思っていました。

しかし現実はアート転売屋がアーティストの値段を決めて、正当な評価に直結していなさそうな仕組みが気に入っていないコメンとをしていました。そしてコレクターの家ではなく美術館に置かれ、多くの人に愛してもらいたいという気持ちもあるそうです。

特に対極に描写されていた2人のアーティスト ラリー・プーンズ(以下、プーンズ)とジェフ・クーンズ(以下、クーンズ)。

プーンズは若い頃、ドットを描くアーティスト集団の中で人気を博しました。

今でもドットの絵は高い値段で取引されていますが、プーンズはもうドットではない自分の描きたい作品を作ることに集中しています。現在は郊外に住み1人で\作品作りに集中しています。

その対照として挙げられていたのが現存する彫刻家で世界最高落札額記録を保持するクーンズ。ステンレス製のうさぎが100億円で落札されました。元々、NY ウォール・ストリートの仲買人として生計を立てながらアーティスト活動を始めました。

クーンズのオフィスでは、何人もの美術スタッフが雇われており本人は指示を出しスタッフが手を動かし作品を製作していました。アートはビジネスだと割り切って作品を作り続けています。

どちらの製作過程が正しいか、正しくないのか、という基準はアート界にはありません。アートは需要と供給によって成り立っています。売れる作品を売れるだけ生み出すているクーンズはまさにアート界の「ウルフ・オブ・ウォールストリート」と言われているだけありますね。

コレクターの立場からは…

アートコレクターが近年アート市場の高騰により本当に欲しいものが買えないという描写もありました。転売を目的とした会社や別のオークション会社、そしてアート本来ではなく名誉や地位を買う目的としている人が増えているそうです。

アートを購入する目的として、バスキアを落札したZOZO創業者・前澤氏もこのようにコメントしています。

作品を買ってみたら、レオナルド・ディカプリオが電話をしてくるし、彫刻作品で最高値を付けたアーティストのジェフ・クーンズが家に遊びに来て、彼が絵を描いた年のムートン・ロートシルトのボトルにサインしてくれる。

Amanatoh「映画『アートのお値段』に見る、アートとお金の関係」https://amanatoh.jp/event/report/5209/

アートを高額で落札することによって世界中のセレブリティに名前が知れ渡ります。そうするとビジネスや人脈などに有利に働くため、話題作りで購入する人もいるそうです。

監督からは…

監督ナサニエル・カーンから一言コメントを寄せています。

「観客がこの映画から学んでほしいことがひとつあるとすれば、それはあらためて目を見開き、思うがままにアートを見ることだ。映画に登場する人たちは、各々のやり方でそれを教えてくれた。彼らが意図したかどうかは知らないがもうひとつ私が学んだことは、市場がなんと言おうとも、実際には価値と価格の間に本質的な関係性がほとんどないということだ」。

引用:美術手帳「リヒターやクーンズが語る「アートの価値」とは? 映画『アートのお値段』をチェック」https://bijutsutecho.com/magazine/news/headline/19835

監督は「実際には価値と価格の間に本質的な関係性がほとんどない」と言っています。私もその意見に賛成で、アートを鑑賞する人や購入する人が自分のアートの価値観をしっかり持つことが大切だと監督の言葉から考えさせられました。

まとめ

改めてアートの価値について考えさせられるきっかけになりました。

アートは何のためにあると思いますか?感動するため、美術館で多くの人に見てもらうため、商品として扱うため、それとも自己満足や投資のため?

そして価値のつく絵と知られている絵はどこが基準なのでしょうか?価値があるから高値なのではなくて、高値だから価値があるというとでしょうか?

鑑賞中、色々な疑問が浮かびました。今までアートが好き!と漠然とした気持ちでいましたが、自分がどのようにアートに関わり、アートを楽しんでいくか。もっと深く考えていきたいと思います。

情報

映画『アートのお値段』

公開時期:2019年8月16日(土)

原題:THE PRICE OF EVERYTHING

監督:ナサニエル・カーン

出演:ジェフ・クーンズ、ゲルハルト・リヒター、ラリー・プーンズ、マリリン・ミンター、ゲルハルト・リヒター

配給:ユーロスペース

参考

BERNSRDAUD「ジェフクーンズ」https://www.bernardaud.com/jp/jp/artists/jeff-koons

アートのお値段 http://artonedan.com

ABOUT ME
しおり岡
編集長/ライター。小学生の頃はエジプト文化、中学生では西洋美術、高校生は日本の歴史にハマり、大学在学中に仏像に恋をして、学芸員を取得。卒業後、大手人材会社で営業を経験。その後、飲食店の広報・デザイナーを経て、アメリカ・NYにて転職。コロナウイルスのため帰国し、現在は日本に滞在中。趣味は「美術館や遺跡を経験するための海外旅行」。今まで40カ国以上を旅行をし、世界の建築や文化、食事、アートに触れる。