コラム記事

有田焼や輪島塗など日本の伝統工芸品への投資の可能性や課題

伝統工芸品への投資は、文化的価値と経済的価値の両方を持ち合わせています。

今回は、伝統工芸品への投資の可能性や課題、おすすめの伝統工芸品について紹介します。

日本の伝統工芸品の価値

日本の伝統工芸品が世界的にも高い価値を持つと言われる理由は、独特の美意識、歴史的背景、製造過程の緻密さ、そして使用される材料の品質の高さなどにあります。

日本の伝統工芸品は、数百年あるいはそれ以上という世界的に見ても長い歴史を持ちます。この長い歴史の中で、それぞれの工芸品は特定の地域や家系などで代々受け継がれ、独自の技法やデザインが発展してきました。

例えば、有田焼は1616年に始まり、江戸時代を通じて磁器製造の技術が磨かれました。このような深い歴史的背景は、作品に深みを与えるため、コレクターにとっての価値を高めます。

また日本の伝統工芸品の製作過程の緻密さも他に類を見ないと言えるでしょう。職人が一つ一つ手作業で作り上げる工芸品は、細部まで完璧を求められ、その制作には長い時間が費やされます。

例えば、漆器で有名な輪島塗には100回を超える工程があり、完成までに1年以上かかることもあります。 このような手間ひまかけた製作過程は、製品の品質の高さを保証し、現在の流通量の大多数を占める他国の大量生産品とは一線を画していることがわかります。

日本の伝統工芸品に使用される素材は、自然から採取されるものが多く、それぞれの素材には厳しい品質基準が設けられています。例えば、漆器の漆は特定の漆の木から採取され、その品質によっても作品の価値が大きく左右されます。西陣織に用いられる絹糸も、極めて高い品質が求められます。これらの厳選された素材が、作品の美しさと耐久性を高めており、それに見合った価値がつけられるのです。

さらに、日本の伝統工芸品は、単なる日用品ではなく、日本独特の美意識や文化、歴史を体現している「アート」であると見ることもできるでしょう。例えば、茶道具は単に茶を飲むための道具ではなく、茶道という文化を通して、日本の哲学や美学が表現されています。このように、文化的意義を持つことが、日本の伝統工芸品の価値を世界的に高めているのではないでしょうか。

伝統工芸品に投資する意味

https://www.minoyaki.gr.jp/autumn-fes-2023

文化的価値の保存

伝統工芸品に投資する意味の一つとして「文化的価値の保存」が挙げられます。文化的価値の保存とは、過去の世代から受け継がれた技術、知識、美学を守り、現代に活かしながら将来に継承することを意味します。

伝統工芸品は、それぞれが特定の文化や地域の歴史、生活様式、価値観を体現しており、それらを支える職人技や素材への理解も含まれています。そのため、伝統工芸品への投資は、文化的価値の保存につながるとても意義のあることだと言えるでしょう。

例えば、伊万里焼は、17世紀から輸出され、ヨーロッパの王侯貴族に愛された日本の磁器として知られています。伊万里焼の技法は、数百年にわたって継承されてきたものであり、伊万里焼に投資することは、この高度な磁器製造技術だけでなく、原産地の歴史や価値観、日本とヨーロッパの交流史の一部を保存することにもつながると言えるでしょう。

経済発展への貢献

伝統工芸品への投資は、その地域の経済発展に寄与します。職人たちへの直接的な収入源となるだけでなく、観光・輸出の促進にもつながります。

日本の伝統工芸品の製造には、熟練した職人による手作業が必要です。伝統工芸品に投資することは、その作り手の職人たちの直接的な収入につながります。

例えば京都の西陣織や金沢の金箔など、それぞれの地域に根付いた産業は、その地域の経済を支える重要な柱となっています。これらの産業への投資は、新たな雇用の創出、技術継承、そして地域ブランドの強化にも繋がります。

昨今は海外からの観光客の数もかなり増えているため、伝統工芸品への投資によって各地域の経済発展に貢献することは、結果的にその地域を盛り上げ、国内外からの観光客を惹きつけ、地域経済をさらに促進することに繋がると言っても過言ではありません。

また、日本の伝統工芸品は、国際的な市場でも高く評価されてきました。日本の陶磁器、漆器、刀剣などは日本国外でもコレクターがいます。

特に円安の今、これらの工芸品の輸出が増えれば、国の経済成長に影響を与えます。国内でもより多くの人々が日本の伝統工芸品を高く評価して投資をすることが、結果的に国際的な評価にも繋がっていくかもしれません。

伝統工芸品への投資の課題

引用:https://lux-blo.com/life_style/2021/%E4%BA%AC%E9%83%BD%E4%BC%9D%E7%B5%B1%E5%B7%A5%E8%8A%B8%E3%81%A8%E7%8F%BE%E4%BB%A3%E3%82%A2%E3%83%BC%E3%83%88%E3%81%AE%E3%82%AA%E3%83%BC%E3%82%AF%E3%82%B7%E3%83%A7%E3%83%B3artradtition/

市場の変動性

伝統工芸品の市場は、流行や消費者の好みの変化による影響を受けやすいため、価値が不安定になることもあるといえます。これにより、投資リスクが高まる可能性があります。

利益を重視する投資をする際には、市場の動向を理解するための調査をしっかりと行う必要があるでしょう。

アートなど他のものへの投資と同じように、物の希少性が高かったり、品質が高かったり、歴史的に価値があるものは、高い値段で取引される傾向があります。

例えば、物故の歴史的に有名な職人が直接製作した作品は、価値が高いですが、同じスタイルや技法で作られた作品は、より多く流通している場合もあり、その場合はその価値が変動することもあるでしょう。

真贋鑑定の難しさ

アート作品の購入と同じように、偽物や模倣品によるリスクもあるため、真正な伝統工芸品を見分けるには専門知識が必要です。職人から直接購入する場合以外には、購入前に十分な調査・鑑定を行うことは必須と言えるでしょう。

例えば、いつの時代の作品かを知るためには、どの時代にどんなスタイルの作品が制作されたか、どんな素材や技法が用いられたかの知識がないと、正しく判断できません。作家についての知識がないと、ニセモノをつかまされてしまう可能性もあるかもしれません。

伝統工芸品を購入するルートは、さまざまですが、信頼できる方法で購入すること、購入前にリサーチや鑑定をしっかり行うことで、リスクを避けましょう。

流通とアクセスの問題

日本の伝統工芸品は、職人も長い経験が必要だったり、特定の素材を使用することが必要となることから、日本国内で製造されていることがほとんどでしょう。そのため、国際的な市場での流通は、例えば現代アートに比べると少ないかもしれません。

また、伝統工芸品は丁寧に制作され、繊細な作りのものも多くあります。高い品質を保ちながら、オンラインで販売したり、日本国外に輸出することは簡単ではありません。そのため、購入する側としては、アクセスがしづらいものでもあります。

昨今では、伝統工芸品もオンラインで購入できるようになったりと、時代に適応しているものの、やはりベストはその産地に赴いて直接商品を見て購入する、またはオークションで直接落札することでしょう。

保存と管理の難しさ

伝統工芸品は、材料の性質上、適切な保存条件を必要とするものが多く、その管理は専門的な知識と丁寧な取り扱いを要します。

保存状態が価値に大きく影響する伝統工芸品では、適切な管理と保管が必要です。適切に保管されていないと、劣化や価値が下がることにつながる可能性があります。

例えば、日本の漆器は、天然の漆を何層にも重ねて作られているため、美しい輝きと耐久性を持つことで知られています。しかし、その素材である漆は湿度や温度の変化に非常に敏感で、不適切な環境下では割れたり、変色したりしてしまうこともあります。

漆器を長期間保存するには、湿度と温度を一定に保つ必要があり、直射日光や強い光を避けることも必須です。これらの条件を満たすためには、専門的な知識や環境が必要となるため、安易な気持ちで購入すると、うっかり保存状態で品質を損なってしまい、作品の価値が下がってしまうことも考えられます。

おすすめの伝統工芸品

西陣織(京都)

https://shanari.com/useful/24746/

1000年以上の歴史を持つ京都の西陣織は、独特の製法で作られる絹織物です。豪華な金糸や銀糸を用いたデザインは、日本国外のコレクターやファッション愛好家からも高い評価を受けています。

西陣織の製品は、小物類が数千円からと手ごろなものも見つけることができますが、オーダーメイドの着物や帯などは数十万円から数百万円と比較的高価になります。

投資としての価値は、作り手の職人、織りの複雑さや使用される金糸・銀糸の量、作品の歴史的背景などによって大きく変わります。

有田焼(佐賀)

https://nor-calfdc.org/products/detail.php?product_id=568111

佐賀県有田地域発祥の有田焼は、400年以上の歴史を持つ日本を代表する磁器の一つです。

独特で繊細な色合いや柄の美しさと品質で、国内外から高く評価されています。陶磁器は、実用的な日用品としての役割も果たしますが、有田焼はその美しさからアートとして見られることも多くあり、日本国外での室内の装飾に取り入れられることも多々あります。

有田焼の価格は幅広く、日常使いの器なら数千円から、アンティーク品や作家物は数万円から数百万円以上にもなります。

特に古伊万里様式を受け継ぐ作品や、名工による限定品は、投資価値が高いと言われています。

輪島塗(石川)

輪島塗は、石川県輪島市で製作される日本の漆器で、木に高品質の漆を何層にも塗り重ねて作られます。輪島塗は100を超える製造工程があり、それぞれを各工程の職人が分業する特殊な作り方によって丁寧に作られているため、頑丈さと優美さが日本の漆器の中でもトップレベルです。

輪島塗の製法には数百年の歴史があります。輪島塗独特の技法には、地の粉を使用して下地を強化する「地塗り」や、金や銀の粉を用いた装飾が含まれます。

輪島塗の価格は、使用される漆の質、技法の複雑さ、装飾の細密さによって大きく異なります。日常使いの小物は数万円から購入可能ですが、伝統的な技法を用いた高級品や名工の作品は数十万円から高いものだと数百万円の範囲で取引されます。

細部にわたる装飾や、数年をかけて完成させる手間のかかった作業、歴史的背景などが輪島塗価格を左右します。

まとめ

「アートが好き」「日本が好き」「歴史が好き」という方には、歴史が長く世界的にもユニークな日本の伝統工芸品を所有することも、検討してみてはどうでしょうか。

伝統工芸品への投資は、文化の保存と経済的利益を見越した投資の両方で価値を感じられますが、市場の変動性、真贋の問題、流通とアクセスの困難、そして保存と管理の難しさという課題があるため、これらを理解して慎重に検討することが重要です。

専門家の意見を求めたり、十分なリサーチを行って、文化的にも価値の高い日本の伝統工芸品を集めてみてはいかがでしょうか。

画像引用元:Guide maker

ABOUT ME
あやね
2018年にアメリカ NYへ移住した、京都生まれの大阪人。日本の伝統工芸が持つ独特で繊細な美しさが好きで、着物や器を集めている。郊外の家に引っ越したことをきっかけに、アート作品やアンティーク家具を取り入れたインテリアコーディネートにも興味を持ち始める。アメリカで日常生活に様々な形でアートを取り入れる人々に出会い触発され、2021年より趣味で陶芸をはじめる。