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メタバースとは?定義や仕組みなどの基礎知識、アート関連事業の事例などをまとめて紹介!

メタバース アート

最近、バズワードのようになっている「メタバース」。

現在の生活になくてはならないスマートフォンやインターネットのような技術が、かつては全く新しい概念・テクノロジーとして人々を混乱させたのと同じように、メタバースについても『よく耳にするけど何なのかよくわからない』という方もまだまだ多いのではないでしょうか。

今回は、メタバースの始まりや現時点での定義、予測されるメタバースの将来、そしてメタバースにおけるアート業界の行方について、まとめて紹介・解説します。

メタバースとは?

メタバースのはじまりと定義

メタバースとは
引用:SUBSPACE「Deep Dive: Why NFTs Are the Keys to the Inevitable Metaverse」https://subspace.com/resources/nft-key-metaverse

「メタバース」は、ここ最近よく聞くようになったワードのように感じますが、実はその言葉は今から30年前の1992年に、SF作家のニール・ステファンの小説「スノウ・クラッシュ」で用いられた『人々がアバターとして3Dの仮想空間で互いに、あるいはAIによって作られたキャラクターと交流する世界』のことをメタバースと表現したのが始まりと言われています。

現在では、メタバースの定義といっても様々な文脈を持っており、現時点で具体的に定義するのはまだ難しいのですが、基本的には『インターネットの次の世界:現実世界と同じように遊んだり、仕事をしたり、取引をしたり、何かを創ったり、交流をしたりできる仮想世界』のことを指します。

ベンチャーキャピタリストのマシュー・ボールは上記に加え、『常に同期されて、インタラクティブで、総合運用性のあるリアルタイムプラットフォーム』であると定義しています。

Web3とは?

Coinbaseのメタバース戦略によると、メタバースはWeb3の進化版、最終形態とも言われているそうです。

  • Web 1.0:静的な、読み取り専用のWebページ(1990年~2004年)
  • Web 2.0:SNSやGAFAの時代。クローズドなエコシステム内でインタラクティブ・ソーシャル体験(2005年~2021年)
  • Web3:ブロックチェーン技術で実現するオープンで分散型な環境の中のデジタルオーナーシップ(2022年?〜)

現状のWeb 2.0は、いわゆるGAFA(Google、Apple、Facebook、Amazon)のような大きな会社に富、権力、影響力が集中した中央集権的な構造で、ユーザーはサービスの受け手としてコントロールされている立ち位置にいると言われています。

一方で、ブロックチェーン技術を用いることによって、合法的にオープンで透明性のある分散型のネットワークを作り、個人同士でも経済的なサービスを提供できるような、より合理的で自由主義なモデルに移行することができると言われているのが、Web3です。

メタバースの仕組み

メタバース 解説
引用:The Coinbase Blog「How Coinbase thinks about the Metaverse」https://blog.coinbase.com/how-coinbase-thinks-about-the-metaverse-16d8070f4841

メタバースは、ブロックチェーン技術によって、巨大な仮想世界の中に存在する繋がった複数の仮想世界それぞれの間を自由に行き来できる仮想世界です。

ブロックチェーンの技術を活用することによって、個人のアイデンティティや所有物、オーナーシップ、履歴などを別の仮想世界間でも簡単に移行させることが可能になります。

また、メタバースはいわゆるオンライン上の仮想世界ですが、現実の世界ともあらゆる点で更に繋がりを持っていくことになるでしょう。

メタバースはなぜ話題になっている?

メタ Facebook
引用:Macrumors「Facebook Changes Its Name to ‘Meta’」https://www.macrumors.com/2021/10/28/facebook-name-change-meta/

メタバースという言葉をよく聞くようになった大きなきっかけとしては、Facebook社が2021年に社名を「Meta」に変更すると発表したことが記憶に新しいのではないでしょうか。

世界的に影響力を持つ大企業が、これからの方針としてメタバースの構築を優先するとして、2021年だけで約1兆1000億円の予算をメタバース事業に投じており、『メタバース界も牽引していく会社になる』という意志の現れかのように社名を変更したのかもしれません。

予想されるメタバースの未来

メタバース
引用:The New York Times「Facebook’s New Bet on Virtual Reality: Conference Rooms」https://www.nytimes.com/2021/08/19/technology/facebooks-new-bet-on-virtual-reality-conference-rooms.html

マイクロソフトの共同創業者であるビル・ゲイツが個人ブログ内で、『今後数年のうちに、ほとんどのオンライン会議も、メタバースに移行し、デジタルアバターによる3D空間で行われるのが普通になるだろう』と語っています。

現在でもコロナウイルスの影響からリモートワークやZoomでのビデオ会議が一般的になってきていますが、カメラで映し出した映像でのやりとりによる限界など、まだまだ改善されるべき点もあります。

近い将来、会議がビデオ会議にとどまらずメタバース内でアバターを使って行われることで、実際に集まってミーティングをするのとほとんど同じような体験ができるようになるかもしれません。

都心から離れた場所を拠点にする、場所にとらわれない生き方が当たり前になる未来も近いように感じます。

BTS バーチャルライブ
引用:Buzzfeed News「BTS’s Virtual Concerts Connected People On A Global Scale Not Seen Before The Pandemic」https://www.buzzfeednews.com/article/ikrd/bts-map-of-the-soul-one-concert-experience

また、エンターテイメントの形もメタバースに移行することで新しくなるだろうと言われています。

現在すでに多くの子供たちがFortniteやマインクラフトに夢中になっており、実際に友達に会って遊ぶよりもゲームの空間内で集まって交流し、社会的活動を経験していく傾向にあるそうです。

そんなゲームの世界が、ただのゲームとしてだけでなく、イベント会場のようにエンターテイメントに用いられ話題になりました。

2020年にFortnite内でラッパーのトラヴィス・スコットが仮想空間に観客を集めたバーチャルライブを開催したり、韓国の人気グループBTSがミュージックビデオ発表のバーチャルイベントを実施したりと、エンターテイメントの形、場もバーチャル空間へと移行し始めています。

実際の世界と、バーチャルの世界とを行き来してそれぞれの良さを活かすことができれば、エンターテイメントの幅は更に広がり、今までにない体験をできるようになるでしょう。

現在のメタバースを作っている会社

メタバース 会社
引用:Consultancy UK「PwC buys virtual land NFT in the Sandbox’s metaverse」https://www.consultancy.uk/news/30011/pwc-buys-virtual-land-nft-in-the-sandboxs-metaverse

メタバースはまだまだこれからとはいえ、現時点では大きく3つのカテゴリーでメタバースに関連する事業を持つ会社が存在しています。

1つ目は仮想世界とオーナーシップに注力している会社で、Sandbox、Wilder World、RMRKなどがあります。

これらの会社はほとんどまだ具体的なサービスのローンチ前であったり、まだ創業フェーズにありますが、仮想世界における土地やモノの所有権などに関連する事業を開発しています。

2つ目は、ゲームにフォーカスした事業を扱う会社です。

Axie Infinity、UFO Gaming、Robloxなどがその代表で、仮想空間内で他社と交流しながらプレイするだけでなく、ゲーム内でNFTを用いてアイテムの取引ができたり、ゲームをプレイすることで報酬を得たりすることができるブロックチェーン技術を用いて実現する新しいゲームを提供しています。

3つ目は、メタバースのインフラとなり得る事業で、Discord、Enjin Coin、OpenSeaなどが挙げられます。

分散型のクラウドサービスや、暗号資産を保有するウォレット、本人確認の認証、NFTのプラットフォームなどがここに含まれ、今後メタバース内と現実世界を行き来する中で共通して必要となる基盤の部分を担っています。

メタバースにおけるアート業界はどうなっていく?

メタバースにおいて、アートはどのように変わるのでしょうか?

最近では、広い会場で臨場感を楽しめるコンテンツを提供する『没入型エンターテイメント』として、「ファン・ゴッホ:イマーシブ・エクスペリエンス」などが人気を集めており、よく見るようになりました。

VR(仮想現実)などの技術を取り入れる没入型の体験は人気を集めており、メタバースに移行することで、よりインタラクティブで体験重視のアートが増えていくかもしれません。

メタバース アート
引用:CLOT「VR Installation: Chalkroom by Laurie Anderson & Hsin-Chien Huang」https://www.clotmag.com/digital-culture/vr-installation-chalkroom-by-laurie-anderson-and-hsin-chien-huang

例えば、最近アーティストのローリー・アンダーソンがホァン・シンシエンと共同制作したVR作品「Chalkroom」では、言葉や絵、物語でできた巨大な黒い構造物の中を観客は飛び回ることができます。

会場に足を運んで得られる臨場感とはまた違った、自分が浮遊してその空間の中を自由に歩き回り、飛び回ることができる没入体験を提供しており、言葉や絵などを用いた表現にはメッセージ性を感じます。

またこれまで主流であった絵画などのようなアート作品も、NFTによりデジタルアートの価値が保証できるようになった流れによって、新たに従来の『絵画』の枠を超え、幅が広がっています。

アートの歴史を振り返っても、時代背景やテクノロジーに対応して、昔から主流なアートのスタイルも変遷してきました。

もちろん、歴史的、文化的背景を理解して初めてその価値や意味を理解できる中世の西洋絵画の楽しさ、あるいは鑑賞者に完全な情報を渡さず、その作品を起点として自由に想像したり、ディスカッションしたりするという現代アートの楽しさというこれまで通りのアートの楽しみ方、概念は残り続けるとはいえ、メタバースが一般的になることによって、私たちの想像を超えたアートの新しい形、概念が生まれてくるかもしれません。

デジタルとフィジカルの両方を行き来するアートがどのように発展していくのか、メタバースにおけるアートの未来は様々な可能性を秘めているように感じられます。

メタバース × アート関連事業

サザビーズ・メタバースの立ち上げ

メタバース サザビーズ
引用:The Art Newspaper「Crypto-crazed Sotheby’s launches first virtual gallery in digital metaverse Decentraland」https://www.theartnewspaper.com/2021/06/07/crypto-crazed-sothebys-launches-first-virtual-gallery-in-digital-metaverse-decentraland

老舗オークションハウスであるサザビーズは、2021年10月に独自のNFTプラットフォーム「Sotheby’s Metaverse(サザビーズ・メタバース)」をローンチしました。

サザビーズ・メタバース」は、デジタルアートコレクター向けに、サザビーズの美術専門家によってキュレーションされたNFTアートを取引するプラットフォームとして立ち上げられ、スティーブ・アオキやパリス・ヒルトンなどの著名人も参加したオークションなどもすでに開催され話題になりました。

サザビーズ・メタバースでのNFTデジタルアートの売れ行きは好調で、老舗オークションハウスのNFT、メタバース向け事業参入により、従来のハイエンドなアートの世界と新しいデジタルアートの世界との繋がりも急速に深まってきているようです。

アート業界を変える?!MetaBloxz

メタバース スタートアップ
引用:Twitter

メタバースにおいて、現在アート関連の事業を展開するスタートアップMetaBloxzは、物理的な世界と仮想世界の間の橋渡しをすることで、従来のアートギャラリー、美術館、博覧会場をより豊かにし、世界最大のゲーム化されたアートギャラリーおよびアートマーケットプレイスを目指している会社です。

MetaBloxzの事業で、フィジカルな世界と仮想世界のアートの世界を融合させることによって、世界規模で観客を増やすことができ、アート界やアーティストのサポートにも繋がると想定されています。

MetaBloxzが提供していく具体的なサービスとしては、

  • 既存の物理的な美術館やギャラリー、アートイベントをメタバース内で開催
  • アーティストが所有権を持つ実際のアート作品、NFT、アバターなどをオークションに出品することができるようにする
  • 観客とのグループ交流やゲーム化した展示を組み込むことによってアート業界の潜在顧客の関与を増やす

のように、MetaBloxzはメタバースにおいてもアートの展示などのイベントやオークションを開催したり、フィジカルな世界でのアートをもメタバースに取り込んだり、メタバース内だからこそ実現するインタラクティブな手段を取り入れたりして、これまでのアート業界の常識を破っていく存在としてメタバース × アート業界を引っ張る存在となるかもしれません。

まとめ

NFTアートなどを始めとし、アート業界も昨今新たな領域に踏み出しています。

仮想世界であるメタバースが実際の世界と並行して、私たちの日常に根付くようになったら、アートの世界にも驚異的で前例のない概念や様式が生まれていくでしょう。

メタバースの未来は、まだ未知な部分も多くありますが、その分無限の可能性を秘めた新しい時代の幕開けが近いように感じます。

今後も、メタバース、そしてアート業界がどう変わっていくか注目していきましょう!

参考

Meagan Loyst 「The Metaverse 101」https://mirror.xyz/themeaganloyst.eth/kUmuLvRKFs6CimhFGVmlP7kBHPKCswPra_U05Clwncw

The Coinbase Blog「How Coinbase thinks about the Metaverse」https://blog.coinbase.com/how-coinbase-thinks-about-the-metaverse-16d8070f4841

SELECK「「Web3(Web3.0)」これだけは知っておこう!ブロックチェーンが実現する「次世代インターネット」徹底解説」https://seleck.cc/web3

GatesNotes「Reasons for optimism after a difficult year」https://www.gatesnotes.com/About-Bill-Gates/Year-in-Review-2021

CHAINWIRE「Disrupting the art industry – a new gamified metaverse launches」https://chainwire.org/2021/12/10/disrupting-the-art-industry-a-new-gamified-metaverse-launches/

DataArt「The Promise of Art in the Metaverse」https://www.dataart.com/blog/the-promise-of-art-in-the-metaverse

ABOUT ME
あやね
2018年にアメリカ NYへ移住した、京都生まれの大阪人。日本の伝統工芸が持つ独特で繊細な美しさが好きで、着物や器を集めている。郊外の家に引っ越したことをきっかけに、アート作品やアンティーク家具を取り入れたインテリアコーディネートにも興味を持ち始める。アメリカで日常生活に様々な形でアートを取り入れる人々に出会い触発され、2021年より趣味で陶芸をはじめる。