コラム記事

天才彫刻家イサム・ノグチとその作品

東京都美術館で2021年8月29日(日)まで開催中の展示「イサム・ノグチ 発見の道」には、皆さんもう行かれましたか?

20世紀を代表する天才彫刻家と言われた日系アメリカ人アーティストのイサム・ノグチが残した作品の中で、現在国内外に貯蔵されている多数の大型彫刻をはじめ、およそ90作品を一度に見ることができる貴重な展示会となっています。

今回は、そんなイサム・ノグチという人物、彼が残した作品などについてまとめてみました。

イサム・ノグチとは?

イサム・ノグチ
引用:ARTnews「Departing Pace, Isamu Noguchi Heads to White Cube Gallery」https://www.artnews.com/art-news/news/isamu-noguchi-white-cube-departs-pace-1234591251/

イサム・ノグチ(以下、ノグチ)は、1904年にアメリカ・ロサンゼルスで日本人の父、アメリカ人の母のもとに生まれました。

2歳の時に母親と一緒に日本へ移住して13歳までを過ごし、1918年の夏、ノグチは単身アメリカに戻り、現地の高校に通います。

高校卒業後はコネチカット州で彫刻家のガットソン・ボーグラムのもとで短期間働いた後、ニューヨークのコロンビア大学に入学し、医学部に通いながらも夕方はレオナルド・ダ・ヴィンチ美術学校の彫刻家のオノリオ・ルオトロのもとで彫刻クラスを受講していました。

その後はパリに留学したり、アジア、メキシコ、ヨーロッパ各地を旅したりしながら、様々な著名人とコラボレーションして作品を製作しました。

主に彫刻家として知られているノグチですが、生涯に渡って、彫刻だけでなく、庭園、家具や照明のデザイン、陶芸、建築、セットデザインなど多岐に渡る芸術作品を残した多彩なアーティストでした。

ノグチの両親の出身国、日本とアメリカが戦争中には敵対国となり、アメリカでは日系アメリカ人に対する反発なども経験したため、ノグチは政治活動にも参加するようになりました。そのような経験から、平和への願いを込めた作品も残しています。

1986年、ノグチはヴェネツィア・ビエンナーレにアメリカを代表して出展し、1982年に芸術への卓越した生涯貢献に対してエドワード・マクダウェルメダルを受賞しました。

1986年には日本で京都芸術賞、1987年にはアメリカで国民芸術勲章、そして1988年に日本政府からの瑞宝章と、生涯を通して数多くの賞を受賞したノグチは、1988年にニューヨークで亡くなるまで、世界から認められるアーティストとして現在も世界中のアートファンから愛されています。

イサム・ノグチの人気作品は?

ノグチの作品は、そのミニマルながらも個性的で洗練されたデザインで多くの人々の心を掴んできました。

特にインテリアとして非常に人気があり、復刻版やノグチのデザインを模した商品さえも多く出回っています。

コーヒーテーブル:ノグチ・テーブル

ノグチ・テーブル
引用:Noguchi Shop「Noguchi Coffee Table, Black」https://shop.noguchi.org/products/noguchi-coffee-table-black

ノグチ・テーブル(Noguchi Coffee Table)の名で知られるこのテーブルは、1939年にニューヨーク近代美術館の館長のためにデザインされたと言われています。

美しい曲線を描いたガラスと、非対称ながらもスタイリッシュな無垢アッシュ材の脚が組み合わさったテーブルは、今から80年近く前にデザインされたとは思えないほどモダンな印象を持っています。

主張しすぎず他のインテリアにもうまくマッチするのにしっかりと存在感があり、その美しさに見とれてしまいます。

照明:AKARI

あかり イサム・ノグチ
引用:The Architect Newspaper「Two shows explore Isamu Noguchi’s legacy of experimentation with craft」https://www.archpaper.com/2018/11/isamu-noguchi-museum-ymermalta-akari/

日本の岐阜提灯からインスピレーションを得て1950年代以降に製作された照明彫刻シリーズの「AKARI」も、ノグチの有名な作品の1つです。

竹ひごと和紙を使い1点づつ熟練の職人により製作された作品は、日本の伝統工芸とシンプルでモダンな芸術性をコラボレーションさせた照明彫刻の傑作として、現在でも世界各地で愛用されています。

およそ35年をかけて、200種類以上ものバリエーションのAKARIがデザインされました。

フリーフォーム・ソファー

イサム・ノグチ ソファー
引用:PHILLIPS「Rare “Cloud-form” sofa, model no. IN-70, and “Cloud-form” ottoman, model no. IN-71」https://www.phillips.com/detail/isamu-noguchi/NY050414/21?fromSearch=isamu%20noguchi&searchPage=1

非対称で柔らかい印象の曲線美が特徴のソファーは、どの角度から見ても美しく、まさにアート作品のようです。

1950年ごろに限定生産された当時はノグチの家具の中でも特に希少性が高かったこのソファーは、2002年にスイスの家具メーカーであるヴィトラ社によって復刻されました。

イサム・ノグチの作品はどこで購入できる?

あかり イサム・ノグチ
引用:PHILLIPS「‘Ellipse’ Akari floor lamp, model no. 31N」https://www.phillips.com/detail/isamu-noguchi/UK050110/96

ノグチの作品は、クリスティーズサザビーズ、フィリップスなどのような大手オークションハウスで取引がされています。

作品の種類や大きさによって値段は様々ですが、例えばAKARIシリーズのこちらの照明は、フィリップスで £4,000(約52万円)で販売されていました。

また、ニューヨークにあるイサム・ノグチ美術館では、美術館の運営などに関わる資金調達を目的として毎年数点を出展するオークションを開催しているそうです。

復刻版はイサム・ノグチ美術館のオンラインショップでも購入することができます。

イサム・ノグチの作品を観ることができる場所は?

前述したように2021年8月現在は東京都美術館で特別展「イサム・ノグチ 発見の道」が開催中ですが、日本国内・海外でノグチの作品を作品を観ることが出来る場所をいくつかご紹介します。

イサム・ノグチ庭園美術館(日本・香川県)

イサム・ノグチ庭園美術館
引用:イサム・ノグチ庭園美術館http://www.isamunoguchi.or.jp/newyork/newyork.htm

香川県・牟礼(むれ)は、ノグチが1956年に初めて訪れてから晩年の25年間を過ごした場所です。日本人の父親を持つノグチは、日本の四季の美しさを学ぶため、アメリカと行き来しながらも日本ではアトリエと住居を構えた牟礼を拠点に活動したといいます。

牟礼では、当時25歳だった石彫家・和泉正敏(以下、和泉)をパートナーに、代表作である「黒い太陽」などを共同制作しました。
和泉はノグチのパートナーとして、ノグチ亡き後には未完の遺作も完成させたそうです。

イサム・ノグチ庭園美術館には、約150点の作品が展示されているほか、ノグチの住居、彫刻庭園などができるだけノグチの生前の雰囲気をそのまま残されています。

晩年のノグチがどのような環境で何を感じながら制作活動をしたのかに想いを馳せながら、作品を楽しむことができる場所です。

イサム・ノグチ庭園美術館へのアクセス

住所:〒761-0121 香川県高松市牟礼町牟礼3519
電話番号:087-870-1500

JR高松駅からタクシーで約25分、高松空港からはタクシーで約45分で行くことができます。

イサム・ノグチ庭園美術館への見学 予約方法

イサム・ノグチ庭園美術館の見学には、往復ハガキ・FAX・Eメールでの事前予約が必要です。

  • ハガキ送付先:〒761-0121 香川県高松市牟礼町牟礼3519 イサム・ノグチ庭園美術館
  • FAX:087-845-0505
  • Eメール:museum@isamunoguchi.or.jp

往復はがきは見学したい日程の約10日前まで、FAX・Eメールは前日正午までに届くように申し込まなければいけないそうなので、早めに日程を決めて申し込みましょう。

モヌレ沼公園(日本・北海道)

モヌレ沼公園
引用:「モエレ沼公園 テトラマウンド」https://ameblo.jp/den0624deko/entry-12302263473.html

1982年に着工し、2005年に完成・オープンしたモヌレ沼公園は、『全体をひとつの彫刻作品とする』というコンセプトのもとにノグチがデザインした札幌市の総合公園です。

北海道札幌市の市街地に緑を増やすことを目的とした『環状グリーンベルト構想』の拠点公園として計画されたこの公園は、季節ごとにそれぞれ変わる美しさを持ち、広大な敷地の中にある噴水や遊具が自然とアートの融合した芸術作品のように見えます。

広大な土地と美しい景観を活かして、ウェディング会場あるいは写真撮影スポットとしても人気を集めているそうです。

イサム・ノグチ美術館(アメリカ・ニューヨーク)

イサム・ノグチ美術館
引用:イサム・ノグチ美術館https://www.noguchi.org/museum/exhibitions/view/jorge-palacios-at-the-noguchi-museum/

1961年、ニューヨークのマンハッタンから現在の所在地であるクイーンズ・ロングアイランドシティに移転したイサム・ノグチ美術館は、ノグチ自身によって考案され、建てられました。

ノグチのシンプルでアブストラクトな作品の数々が、広い空間を使って美しく配置されており、じっくりと作品を楽しむことができておすすめです。

人気でよくコピーされがちなAKARIシリーズも多数展示されており、日本に帰ってきたかのような気持ちになります。

室内だけでなく、屋外(庭園)にも作品が展示されており、幅広い分野の作品を通して自身の哲学を表現したノグチのセンスを体感できるつくりになっています。

観光地として人気のニューヨークとはいえ、マンハッタンから少し離れた場所に位置しているため、平日を狙っていけば人混みを避けて楽しめるのではないかと思います。

まとめ

今回は個人的にも大好きなアーティストである、イサム・ノグチについてご紹介しました。

ノグチの作品は洗練された見た目の美しさだけでなく、日本人の父とアメリカ人の母との間に生まれたことで、アイデンティティの葛藤に苦しんだ彼独自の経験や想いが反映された哲学を感じます。

日本の伝統工芸のような、削ぎ落とされた本質的な美しさが感じられるところや、しっかりと存在感があるのにシンプルで空間の中で浮かない特別なデザイン。

日本人の私からするとどこか懐かしく落ち着く、『禅』の精神を感じるような雰囲気がありながらも、モダンでスタイリッシュなノグチの作品は、半世紀以上経った現在でも色褪せません。

イサム・ノグチ庭園美術館、モヌレ沼公園には私もまだ行ったことがないので、四国・北海道に行く時にはぜひ立ち寄りたいと思います。

参考

イサム・ノグチ美術館:https://www.noguchi.org/

東京都美術館「イサム・ノグチ 発見の道」https://www.tobikan.jp/exhibition/2021_isamunoguchi.html

イサム・ノグチ庭園美術館:http://www.isamunoguchi.or.jp/index.htm

モヌレ沼公園:https://moerenumapark.jp/

ABOUT ME
あやね
あやね
2018年にアメリカ NYへ移住した、京都生まれの大阪人。日本の伝統工芸が持つ独特で繊細な美しさが好きで、着物や器を集めている。郊外の家に引っ越したことをきっかけに、アート作品やアンティーク家具を取り入れたインテリアコーディネートにも興味を持ち始める。アメリカで、日常生活に様々な形でアートを取り入れる人々に出会い触発され、今年は自宅で陶芸も始める予定。