【ジャン=ミシェル・バスキア】前澤友作が落札した若き天才画家の有名な絵画作品やドキュメンタリー映画、作品展について紹介!

Jean-Michel Basquiat
アーティスト紹介

DATA

ニックネーム
新表現主義の象徴
作者について
ジャン=ミシェルバスキアは1980年代に現れた新表現主義の画家。ポップアーティストのアンディウォーホルとのコラボレーションで知られています。 日本では2019年9月から11月まで、バスキア展 メイド・イン・ジャパンが森アーツギャラリーセンターで開催されました。

現在の値段

12,589,477円

ZOZOTOWNの前澤社長が、2017年サザビーズのオークションでバスキアの頭蓋骨の絵である「無題」を、約120億円(1億1,050万ドル)で購入したことで注目が集まりました。2017年以降価格が伸びています。

1980年以降に作成されたアメリカ人アーティストの作品の最高価格の記録で、さら黒人アーティストの絵画の最高落札価格でもあったため世界中で人気が沸騰しました。

経歴

ジャン・ミシェル・バスキア(以下、バスキア)は1960年12月22日にニューヨークのブルックリンでハイチ系アメリカ人の父親とプエルトリコ人の母親の元に生まれました。バスキアは、幼少から多様なバックグラウンドで育ったため芸術的なインスピレーションを受けました。

1970年代、バスキアは友人と「SAMO」と名乗り、地下鉄や路上にアートワークを残し、注目を集めました。

彼の初期の作品では、バスキアは王冠のモチーフを使用することで知られていました。王冠は、黒人を王族や聖人と表現する意味が含まれています。

バスキアの生きた時代は、未だ黒人差別が行われており、アートを通じて差別や社会問題を発信する作品を多く描きました。

1980年代半ばに、アンディ・ウォーホルがバスキアの才能を認め、共同で作品を制作しました。その結果、彼らの作品やスタイルがさらに人気を高めました。

特にバスキアの作品は、芸術を愛する著名人に愛されるようになったため、バスキアのオリジナル作品は、若手アーティストでは当時珍しく、5万ドル(日本円で約550万円)の値段が付けられました。

バスキアは精力的にアーティスト活動をしており、10年間のアーティスト活動で4000点以上の作品を残しています。

アメリカ国内だけでなく、ヨーロッパやアフリカなど世界中で展覧会を行っていましたが、1988年8月12日に薬物の過剰摂取のためニューヨーク市で亡くなりました。

バスキアの有名な絵画作品

「無題(ポロ・フリット)」1982年

バスキア 作品
引用:Artnet「How One Lucky Art Collector Bought Basquiat’s Multimillion-Dollar ‘Fried Chicken’ Painting for $5,200—and Got the Artist’s Cat in the Bargain」https://news.artnet.com/market/basquiat-pollo-frito-sothebys-1395265

1982年、ニューヨークに旅行に来ていたアートディーラーのフェイ・ゴールドが、夫からのプレゼントの5000ドル小切手でダイアモンドのブレスレットを買おうとしていたところ、偶然見つけたバスキアの作品を購入します。

「POLLO FRITO(ポロ・フリット)」と呼ばれるようになったこの作品は、制作されてから20年後の2002年には約100万ドル、2018年には2570万ドルで販売されました。

バスキアが世界のアート界に進出して名を轟かせるきっかけとなった作品だといえます。

「タクシー、45th/ブロードウェイ」1984〜1985年

バスキア 作品
引用:Medium「Taxi, 45th/Broadway — Jean-Michel Basquiat」https://medium.com/dipchain/taxi-45th-broadway-jean-michel-basquiat-22020390316a

バスキアが尊敬していたアーティストのアンディ・ウォーホル(以下、ウォーホル)とのコラボレーション作品として有名な「タクシー、45th/ブロードウェイ」は、1985年に開催されたニューヨークのトニーシャフラジギャラリーでの共同展に向けて、1980年代半ばから制作されました。

実際にバスキアが苦しんだ人種差別による生きづらさがこの作品にも表現されています。

「無題(黒人の歴史)」1984年

バスキア 作品
引用:mattieux「Jean-Michel Basquiat, The Radiant Child」https://mattieux.wordpress.com/tag/basquiat/

厳しい人種差別を受けてきた黒人の歴史として、大西洋での奴隷貿易、エジプトでの奴隷貿易やアメリカでの奴隷制度などを混ぜ合わせて表現していると言われるのが「無題(黒人の歴史)」です。

奴隷を意味するEsclave、Slaveのような文字や、貿易によく用いられてきた塩(salt)という文字も見られます。

元ZOZO前澤友作が購入したバスキアの作品は?

2017年5月18日、実業家の前澤友作(以下、前澤)が老舗オークションハウスであるサザビーズのオークションで、バスキアの作品「無題(頭蓋骨)」を1億1050万ドル(約123億円)で落札。

バスキアの作品至上、そして当時オークションで取引されたアメリカ人アーティストとしての最高落札額を更新しました。

バスキアは、幼い頃に母親にもらった「グレイの解剖学」という本から学んで影響を受けたと言われており、頭蓋骨をモチーフにした作品を多く残しました。

有名なものでは1982年に制作された前澤が所有するも作品以外にも、1981年に制作された「無題(頭蓋骨)」があり、ザ・ブロード美術館に収蔵されています。

前澤が購入した「頭蓋骨」は、普段数日ほどで作品制作をしていたバスキアが、初の個展を控えてプレッシャーと戦いながら数ヶ月かけて完成させた作品として知られています。

バスキアの作品を所有している有名人

バスキア 作品
引用:Insider「Basquiat’s friends and collaborators say they are ‘horrified’ by Beyoncé and Jay-Z’s Tiffany campaign with his art」https://www.insider.com/basquiat-friends-collaborators-horrified-beyonce-jay-z-tiffany-ad-2021-9

日本の実業家の前沢友作以外にも、たくさんの世界の有名人がバスキアの作品を所有しているようです。

ミュージシャンのデイヴィッド・ボウイやマドンナ、ジェイ・Z、ビヨンセ、俳優のジョニー・デップやレオナルド・ディカプリオなど数々の著名人のアートコレクションにバスキアの作品が含まれていると知られています。

バスキアの作品展・展示されている美術館

2019年に日本で開催された「バスキア展 メイド・イン・ジャパン」

バスキア展
引用:CINRA「『バスキア展 メイド・イン・ジャパン』が六本木で開幕。日本初の大規模展」https://www.cinra.net/article/report-201909-basquiat_gtmnmcl

日本でも、2019年秋に六本木の森アーツセンターギャラリーにて、初めて大規模なバスキア展が開催されました。

このバスキア展では、バスキアの作品を研究するディーター・ブッフハートが特別にキュレーションした作品約130点が展示され、生前来日したこともあったバスキアの日本との関わりについても紹介されたようです。

この展示には、実業家の前沢友作が所有する「無題(頭蓋骨)」も展示されました。

ニューヨークで2022年春開催予定の「Jean-Michel Basquiat: King Pleasure」

バスキア展
引用:BNC「Jean-Michel Basquiat Exhibit ‘King Pleasure’ Will Be on Display in 2022」https://bnc.tv/jean-michel-basquiats-exhibit-king-pleasure-display-nyc-2022/

アメリカ・ニューヨーク、チェルシーエリアにあるスターレット・リーハイ・ビルで2022年の春から、バスキアの未公開作品や希少な作品を約200点も集めた展覧会「Jean-Michel Basquiat: King Pleasure」の開催が予定されています。

没入型のアート展を手がけて注目されているSuperblueとのコラボレーションにより開催されるこの展示は、バスキアの家族によって運営され、作品だけでなくバスキアの人生について、鑑賞者に深く触れてもらえるように考えられているそうです。

バスキアの作品を観ることができる美術館

世界中の有名アートコレクターがバスキアの作品を所有していますが、世界各所の美術館でバスキアの作品を鑑賞することができます。

ザ・ブロード美術館(アメリカ)

アメリカ・ロサンゼルスにあるザ・ブロード美術館には、1981年に制作された「無題(頭蓋骨)」など13点のバスキアの作品が収蔵されています。

バルセロナ現代美術館(スペイン)

スペイン・バルセロナの現代美術館は、3つの作品「Sterno」、「自画像」、「キング・ズールー」を所蔵しています。

ダロスコレクション(スイス)

スイスのチューリッヒにあるダロスコレクションには、「アルフォンソ王」と「フォームレス」の他に32展のバスキアの絵画作品が収蔵されています。

ソーホー現代アートギャラリー(アメリカ)

アメリカ・ニューヨーク、マンハッタンのロウアー・イースト・サイドにあるソーホー現代アートギャラリーには、バスキアの作品で象徴的な頭蓋骨や王冠などのモチーフが用いられた作品8展があります。

バスキアのコラボ商品

バスキアは現在に至るまでアート界だけでなく、ファッションなどのカルチャーにも多大な影響を与えていると言われています。

デザイナーのヴァージル・アブローやルシアン・ペラフィネなどもこれまでバスキアのアートワークを用いた商品を販売しました。

最近のバスキアのコラボ商品をチェックしてみましょう。

バスキア × ユニクロUT

バスキア コラボ
引用:Hypebae「UNIQLO UT’S NEW TEES CELEBRATE ANDY WARHOL, JEAN-MICHEL BASQUIAT AND KEITH HARING’S ART」https://hypebae.com/2021/7/uniqlo-ut-andy-warhol-jean-michel-basquiat-keith-haring-tshirts-tees-collaboration-art-price-where-to-buy

2021年6月28日に、ユニクロのTシャツプロジェクトであるUTは、ポップアート界の伝説的存在とも言える3名のアーティストであるアンディ・ウォーホルキース・へリング、そしてジャン=ミシェル・バスキアとコラボレーション商品を販売しました。

バスキアとのコラボ商品に王冠や頭蓋骨のようなバスキア作品を代表するモチーフが使用されているなど、それぞれのアーティストの象徴的な作品やフレーズが、商品に用いられています。

バスキア × コーチ

バスキア コラボ
引用:UOMO「コーチの新作コラボ。大人のビジネスバッグが、バスキアのアートで変わる!」https://www.webuomo.jp/fashion/94858/

バスキアと同じくニューヨーク発のブランドであるコーチ(COACH)は、2020年の秋冬コレクションとして、バスキアとのコラボレーションコレクションを発表しました。

トレンチコートやスニーカー、バッグなどにバスキアのアイコニックなモチーフがプリントされ、存在感のあるアイテムになっています。

ドキュメンタリー映画「バスキアのすべて」

バスキア 映画
引用:MUBI「JEAN-MICHEL BASQUIAT: THE RADIANT CHILD」https://mubi.com/films/jean-michel-basquiat-the-radiant-child

バスキア本人がインタビューに答えている映像など貴重なシーンをもとに制作されたドキュメンタリー映画「バスキアのすべて」は、バスキアの作品についても多く触れられ、短い生涯で多くの名作を残したカリスマ的アーティストの生き様や哲学について知ることができる映画になっています。

この映画はバスキア生誕50周年を記念して制作されました。

『ブラック・ピカソ』とも呼ばれたように、天才的なアーティストとして認められたバスキアには、英語の他にスペイン語・フランス語と多言語を流暢に操り、母からもらった解剖書や歴史に影響を受けるなど、技術的レベルの高さだけでなく、知的さを感じることができます。

アーティストとしても成功し、自身が願ったように有名になったバスキアですが、80年代当時の黒人に対する差別などの影響も受け、天才画家は苦悩も抱えていたようです。

バスキアの死因は何?

バスキア 死因
引用:美術手帖「バスキアとは何者か? 「黒人アーティスト」というレッテルを嫌った男」https://bijutsutecho.com/magazine/insight/20049

1988年、27歳のときにバスキアはニューヨーク、マンハッタンのイーストビレッジのアパートでヘロインの過剰摂取により亡くなりました。

有名アーティストとしてその才能が世の中に認められて華やかな日々を送っていたように見えたバスキアですが、白人が多くを占める富裕層のアート業界人などから搾取されていたことに苦しんでいたという声もあります。

また、黒人アーティストとして一躍有名になったものの、当時はジェフ・クーンズなど次世代のアーティストたちが続々と注目され始めており、バスキアの人気はそう長くないと考えていた人もいたようです。

当時は手に入れることが簡単だったヘロインなどの薬物についても、その使用を止めるように導いていたバスキアとの親交の深かったアーティスト、アンディ・ウォーホルが亡くなってしまったことが影響し、バスキア自身の歯止めが効かなくなったのではないかと言われています。

まとめ

バスキアの絵は、直感的に書かれた作品が多く、力強い線は見る人を惹きつけます。言葉、記号、棒人間、動物が組み合わせられ、表現力の高いアーティストです。

一見、抽象画のように見える作品も色々な意味や想いが込められており、バスキア自身の興味や葛藤を、絵に表現しています。

27歳という若さで亡くなってしまった天才的アーティストは、今でもアート界で高い評価を得ており、展示会は常時人気でオークションでも高額で取引され続けています。

バスキアの生涯についてのドキュメンタリー映画「バスキアのすべて」などで彼の人生や価値観などのバックグラウンドを知ることで、その作品をより深く理解することができるのでおすすめです。

参考

美術手帖「ジャン=ミシェル・バスキアによる4つの作品がサザビーズに登場。合計予想落札額は約44億円以上に」https://bijutsutecho.com/magazine/news/market/18566

Artnet「How One Lucky Art Collector Bought Basquiat’s Multimillion-Dollar ‘Fried Chicken’ Painting for $5,200—and Got the Artist’s Cat in the Bargain」https://news.artnet.com/market/basquiat-pollo-frito-sothebys-1395265

Jean-Michel Basquiat: King Pleasure https://kingpleasure.basquiat.com/

Culture Trip「The 6 Best Places to See Jean-Michel Basquiat’s Art」https://theculturetrip.com/north-america/usa/new-york/new-york-city/articles/the-6-best-places-to-see-jean-michel-basquiat-s-art/