コロナウイルスによるパンデミックの影響で、2020年から他のオフラインイベントと同様に、世界の名だたるアートフェアも開催が中止されてきました。
多くのアートファンが直接足を運べるイベントの再開を待ちわびていた中、ワクチンの接種が進むニューヨークでは、2021年5月5日から9日までフリーズ・ニューヨークが開催されました。フリーズ・ニューヨークは、世界的アートフェアの1つである「フリーズ・アートフェア」のニューヨーク会場でのイベントを指します。
今回は、第10回目を迎えた2021年度のフリーズ・ニューヨークで注目を集めた、知っておきたい展示や開催状況などを紹介します。
フリーズ・アートフェアとは?
フリーズ・アートフェアは、ロンドンで始まり、その後ニューヨーク、ロサンゼルスへと進出した国際的な現代アートフェアです。フリーズは、もともと現代美術専門の雑誌としてスタートした30年近くの歴史があるため、アート作品の展示・販売だけでなく、アート・フェアの開催期間中に、現代アートに関する議論の場としての「フリーズ・トーク」を開催したりもしています。
2021年度はどのように開催された?
約200のギャラリーが参加し、世界中からアート関係者やアートファン、コレクターが集まるため、毎年開催都市は来場客で賑わっていたのですが、パンデミック後初の開催であった2021年のフリーズ・ニューヨークでは、出店ギャラリー数も4分の1程度に縮小され、人数制限に合わせたチケットの販売、コロナウイルスの陰性証明書あるいはワクチン接種済みの証明書のいずれかの持参に加え、体温チェックとマスク着用を来場客への入場条件として開催されました。
また、これまでのフリーズ・ニューヨークの開催場所であったマンハッタン島北部のイースト・リバーに浮かぶランダルズ島から、今回はハドソンヤードの新しいアートセンター「ザ・シェッド」に場所を変更して開催されました。交通の便のいいマンハッタン内での開催は、フェアの成功にも繋がったようです。
一方、2020年度の開催中止を受けて設立されたオンライン・ビューイング・ルーム(オンラインで閲覧可能な展示プラットフォーム)も、実際のアートフェアとともに開催されました。
2021年度の展示のテーマ
ハーバード大学のサラ・ルイス教授が、「ビジュアルリテラシーを向上させ、人種、市民権、イメージ作りの繋がりを探る」ために立ち上げた「ビジョン&ジャスティス・プロジェクト」に50以上のギャラリーや機関が敬意を表し、「Representational Justice(表現の正義)」に焦点を当てることを、2021年フリーズ・ニューヨークの会場での展示テーマとしました。
アート・フェア期間中、ギャラリストたちはビジョン&ジャスティス・プロジェクトのミッションと、「公共の場における視覚的表現の物語をどのように破壊し、複雑にし、変化させる責任が芸術にはあるのか」という問いに、作品やデジタルイベントなどでの表現を通じて応えました。
注目を集めた展示
今回は、例年の約200軒から大幅に縮小され、64軒のギャラリーが出展した、フリーズ・ニューヨーク。
数々の有名なギャラリーが集結し、出展総数は少なくなったものの、見応えがあり大盛況だったようです。
その中から、特に注目されたブースを3つご紹介します。
ガゴシアン・ギャラリー
「世界で最も影響力のある画商」と言われるラリー・ガゴシアンのギャラリー、ガゴシアンは、美術史でみられた象徴的な表現を組み合わせたような作品を展示しました。
エワ・ユシュキェヴィッチの肖像画の中の人物は、ルネッサンス期に描かれた肖像画のように見えますが、頭部が織物やフラワーアレンジメントで隠されています。
マリアン・グッドマン・ギャラリー
アート業界通の間で人気のあるマリアン・グッドマン・ギャラリーは、フランス人アーティスト、アネット・メサジェによる彫刻インスタレーションに展示の大部分を割いています。
「Petite Babylone」(2019年)は、薄暗い洞窟のような場所に設置され、数十個の小さな黒い彫刻や、ぬいぐるみ、ターンテーブルに取り付けられた照明などから構成された作品です。ブースの壁に投影された影が踊り、まるで先史時代の壁画のような雰囲気を醸し出しています。
インスタレーション (英語: Installation art) とは、1970年代以降一般化した、絵画・彫刻・映像・写真などと並ぶ現代美術における表現手法・ジャンルの一つ。 ある特定の室内や屋外などにオブジェや装置を置いて、作家の意向に沿って空間を構成し変化・異化させ、場所や空間全体を作品として体験させる芸術。
引用:ウィキペディア(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%82%B9%E3%82%BF%E3%83%AC%E3%83%BC%E3%82%B7%E3%83%A7%E3%83%B3#:~:text=%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%82%B9%E3%82%BF%E3%83%AC%E3%83%BC%E3%82%B7%E3%83%A7%E3%83%B3%20(%E8%8B%B1%E8%AA%9E%3A%20Installation%20art),%E4%BD%9C%E5%93%81%E3%81%A8%E3%81%97%E3%81%A6%E4%BD%93%E9%A8%93%E3%81%95%E3%81%9B%E3%82%8B%E8%8A%B8%E8%A1%93%E3%80%82)
デヴィッド・ズウィナー・ギャラリー
パンデミック渦中もギャラリー展示のオンラインへの移行を主導してきた、世界的な画商であるデヴィッド・ズウィナーのギャラリーブースでは、アメリカ人アーティストであるダナ・シュッツの新作が展示されました。
今回の展示では、社会風刺を目的としたグロテスクな人物や、災難に見舞われた状況の中で様々な人物が移動する様子、ブリーフケースを持った労働者が様々な資料を抱えて倒れている様子を描いた印象的な作品など、ユニークで革新的なアプローチが見られました。
まとめ
2020年は、世界的に有名なアート・フェアも中止をせざるを得ない状況となってしまいましたが、ようやく足を運べるアート・フェアが再開されたのはアートファンにとっては嬉しい知らせですよね。
実際に来場できる展示会とオンラインでの展示会とのハイブリット型という形式も、今後は一般的になっていくのかもしれません。そうなると、海外のアーティストの作品にもっと気軽に触れることができるので、世界各国で開催されるアートのイベントにも注目しておく価値があるのではないかと思います。
個人的には、現場でしか感じられない空気も含めてインスタレーション作品を見るのが好きなので、美術館やアートのイベントにも実際に足を運びながら、より知識を深掘りしたり、気軽に新しい作品・アーティストと出会うために、オンライン展示の機会を利用していきたいです。