世界最大級のNFTマーケットプレイスOpenSeaのデータによると、2022年2月現在でランキング上位4位に入るNFTプロジェクトは全て、過去7日間だけの間でも、推定3億6590万ドル(約422億円)の価値を生み出しています。
なぜこれらのプロジェクトが注目を集め、大きなお金が動いているのでしょうか?
今回は、2022年2月上旬時点でOpenSeaでランキング上位にランクインしているNFTプロジェクトを前編・後編に分けてクローズアップし、コンセプトや特徴、どのような理由で人気があるのかなどについて解説していきます。
OpenSeaとは?
OpenSeaは、現在NFTの取引量世界ナンバーワンを誇る世界最大手のNFTマーケットプレイスで、アメリカのニューヨークを拠点として2017年12月からサービスを提供しています。
ブロックチェーンの技術によって非代替のものとなるNFTアートや音楽、仮想体験、トレーディングカードなどの売買をしたい方は、まずチェックするべきプラットフォームです。
ユーザーは、プラットフォーム上で第三者や仲介業者を挟むことなく直接NFTアセットを作成、取引、交換することができます。
現状NFTの取引にメインで使われているイーサリアムは、ガス代が高いことや取引速度が低いことなどが問題となっていますが、OpenSeaはイーサリアム以外にもテゾスやクレイトンといったブロックチェーン上のNFTにも対応しているため、取り扱えるNFTの種類や数量が豊富になっています。
分散化され、透明性の高いプラットフォームとして世界中のNFT取引に利用されているOpenSeaは、一貫して1日の総売上高約1億ドル(約115億円)生み出し続けながら、現在の国際的なNFTの動きを牽引しています。
ランキングの見方
OpenSeaのプラットフォーム上で、人気の高いNFTプロジェクトのランキングを見ることができます。
これらのランキングは、取引総額、販売最低価格などの統計値を元に設定されているようです。
ランキングページやプロジェクトごとのページに出てくる用語の定義は、
- Collection:プロジェクトの名称
- Volume:取引の総額
- Floor Price:販売最低価格
- Owners:所有している人の数
- Items:作品の数
となり、ランキングの時間軸やカテゴリー、ブロックチェーンの種類もソートして結果を表示することができます。
Azuki(あずき)
2022年2月6日時点で、ランキング1位となっているプロジェクト、「Azuki(あずき)」。
Azukiは、イーサリアムブロックチェーン上に構築された1万個のユニークなアバターのコレクションで構成されるプロジェクトです。
これらのユニークなアバター「Azuki」は、メタバース「ザ・ガーデン」へのアクセス権・メンバーシップとして機能し、メタバース内でのアイデンティティとなります。
Azukiのプロジェクトチームはカリフォルニア州ロサンゼルスを拠点として、暗号資産やテクノロジー、ゲームなどの関連分野における多様で豊富な経歴を持ったメンバーによって始まり、未来のための分散型ブランドを構築するという意志のもと、独自のコミュニティを育ててきました。
まだ新しく、これから発展していくであろうメタバースにおける希少なブランドを一緒に育てていく存在として、Azukiのコミュニティは盛り上がりを見せており、世界トップのNFTマーケットプレイスOpenSeaでも突如トップにランクインしたのです。
また、Azukiのアバターは、アニメにインスパイアされていることがわかります。
それぞれのアバターの特徴の一部に日本をイメージさせる持ち物や装いが見られ、NFTマーケットプレイスでよく見る海外発のプロジェクトの他のアバターがなんだかしっくり来ないという方も、気にいる物が見つかるかもしれません。
アニメは世界的に人気があり、そのファンのコミュニティの繋がりは深いため、今後のさらなる広がりにも期待できそうです。
Azukiの値段や所有者数は?
※2022年2月10日現在
平均価格: 12.7546イーサリアム(過去7日間平均)
所有者数:5400人
取引の総額:102,966.9321イーサリアム
CLONE X – X TAKASHI MURAKAMI(クローンエックス × 村上隆)
2021年11月に、ポップで斬新な作風が世界的に人気を誇る現代アーティスト村上隆と、バーチャルアパレルなどをプロデュースするデザイン集団として業界を牽引するRTFKT(アーティファクト)が共同で、NFTアバタープロジェクト「Clone X(クローン・エックス)」を発表しました。
村上は、「Clone X」のアバターの目や口、髪型、服などのデザインを担当しており、2万個存在するアバターは、各パーツの要素がランダムに組み合わさってできています。
村上は、2021年3月にアイコニックな「お花」をモチーフにしたドット絵をNFT化して販売する予定でしたが、業界への理解、準備の不足などを理由として取り下げました。
現在、NFTデジタルアートとして販売されているものの多くは、主にメタバースの今後の普及を想定した仮想世界で使えるアイデンティティ、アバターとしての利用を想定してデザインされていますが、人気の現代アーティストをそのデザインに携わらせたプロジェクトとして、既存のアートファンにとっても気になるニュースとなったでしょう。
アバターデザインの中には、村上の作品を彷彿とさせる「お花」や「DOB(ドブ)君」のモチーフも多々見られるため、メタバースにおけるアイデンティティとなるアバターとして、『現代アート、村上のファンである』という表現ができるものとして、ファンにとっては価値の高いものなのではないかと考察できます。
CLONE X – X TAKASHI MURAKAMIの値段や所有者数は?
※2022年2月10日現在
平均価格: 19.5513イーサリアム(過去7日間平均)
所有者数:8,300人
取引の総額:120,198.4995イーサリアム
Bored Ape Yacht Club(ボアード・エイプ・ヨットクラブ)
アメリカでジャスティン・ビーバーやエミネム、パリス・ヒルトンなどの著名人たちがNFTを購入したことでも話題になった、Bored Ape Yacht Club(ボアード・エイプ・ヨットクラブ)は、NFTプロジェクトの中でも安定した人気があります。
1万種類の様々な特徴の見た目をした猿のアバターのNFTは、それぞれBored Ape Yacht Clubのオンラインソーシャルクラブへの入場権・メンバーシップとして機能しています。
Bored Ape Yacht Clubのメンバーには、パーティーやエクスクルーシブなイベントなどの得点が付与されるなど、コミュニティづくりやブランドとしての世界観の構築も徹底して行われていることが印象的です。
Bored Ape Yacht Clubはアバターの販売だけでなく、アディダスなどの大手ブランドとのライセンス契約や、クリス・ロックなどのアーティストのコンサートにも参加するなど、バーチャルの世界だけでなく、リアルの世界の中にもその存在が広まってきています。
Bored Ape Yacht Clubは、なぜ猿が題材にされているのでしょうか?
暗号資産のトレーダーが、トークン・プロジェクトの立ち上げ直後に、十分な調査を行わずにトークンを購入するために巨額のお金を注ぎ込むことを『Aping』と表現するところから、猿を意味する英語『Ape』とかけて、猿が題材になったという経緯があるそうです。
このアイコニックなアバターのコンセプトは、『沼地のクラブハウスに住むお金持ちの猿のグループ』というところからきていると、ローリングストーンやニューヨーカーなどの雑誌のインタビューで創業メンバーが語っています。
Bored Ape Yacht Clubの値段や所有者数は?
※2022年2月10日現在
平均価格: 109.3097イーサリアム(過去7日間平均)
所有者数:6,300人
取引の総額:390,658.7329イーサリアム
HAPE Prime(へイプ・プライム)
HAPEBEAST(へイプ・ビースト)から2022年2月4日にリブランドして生まれ変わった「HAPE Prime(へイプ・プライム)」は、Bored Ape Yacht Clubと同じように類人猿がモチーフとなったアバターをNFTとして発表し、人気を集めています。
HAPE Primeはロンドンを拠点にファッションとアートの遊び場を提供するDigimental Studio(デジメンタル・ストゥディオ)が制作した3DデジタルアートによるNFTコレクションです。
HAPE Primeのアバターデザインは、Bored Ape Yacht Clubからのインスピレーションを大きく受けているとしばしば指摘されていますが、よりストリートファッション、テック、音楽などの文脈をよりうまく取り入れているとも評価されています。
他のプロジェクトと同様に、NFTを購入したメンバー同士の繋がりを大切にしていることから、よりファッションやストリートカルチャーに関心のある層のコミュニティを構築し、今後さらに広がっていくメタバース内での更なる可能性に繋げていくのではないかと予想できます。
HAPEBEASTの値段や所有者数は?
※2022年2月10日現在
平均価格: 5.7951イーサリアム(過去7日間平均)
所有者数:5900人
取引の総額:46,021.4281イーサリアム
Mutant Ape Yacht Club(ミュータント・エイプ・ヨットクラブ)
Bored Ape Yacht Clubと同じクリエイターによってローンチされ、同じく注目されているプロジェクトが「Mutant Ape Yacht Club(ミュータント・エイプ・ヨットクラブ)」です。
Bored Ape『退屈な猿』が進化したMutant Ape 『突然変異の猿』というコンセプトで、既存のBored ApeのNFTに「MUTANT SERUM(血清)」というNFTを投与することで作成する、もしくはミュータントバージョンのBored ApeをNFTマーケットプレイスで購入することができます。
MUTANT SERUMは、Bored Ape NFTの所有者に付与されたほか、OpenSeaの「Bored Ape Chemistry Club(BACC)」でも購入することができるようです。
Bored Ape Yacht Clubの関連プロジェクトはMutant Ape Yacht Clubのような形でいくつかあり、このようにストーリー性やゲーム化、そしてメンバーの特典などが上手く連携して構築されているのがわかります。
Mutant Ape Yacht Clubの値段や所有者数は?
※2022年2月10日現在
平均価格: 22.5808イーサリアム(過去7日間平均)
所有者数:11,700人
取引の総額:239,650.2364イーサリアム
まとめ
OpenSeaでトップにランクインしているNFTプロジェクトは、どれもメタバースを想定したアバターとして利用できるNFTデジタルアートを販売しているようです。
いずれも、プロジェクト自体にコンセプトやストーリー性があり、ターゲット層が明確に分かれているように感じます。
村上隆とのコラボプロジェクトも人気があるように、今後更にNFTアートもデジタルアセットとしてだけでなく、自己表現として、よりアート性を重視したものが出てくるかもしれません。
参考
coincu「What is Azuki NFT? A Manga-Style NFTs is making a big movement on the OpenSea’s Ranking Board? Check this out and you won’t be disappointed」https://news.coincu.com/61175-what-is-azuki-nft/
Cryptos R Us「What Is Azuki NFT?」 https://cryptosrus.com/what-is-azuki-nft/
Cointelegraph「OpenSea monthly volumes top $5B as NFTs continue to mainstream」https://cointelegraph.com/news/opensea-monthly-volumes-top-5b-as-nfts-continue-to-mainstream
Highsnobiety「NO MONKEYING AROUND: HAPEBEAST’S STREETWEAR SIMIANS ARE WORTH BIG BUCKS」https://www.highsnobiety.com/p/hapebeast-nft-hapes-interview-digimental/
Bitcoin.com「Bored Ape, Mutant Ape Yacht Club NFT Sales Skyrocket — Floor Prices Spike More Than 40%」https://news.bitcoin.com/bored-ape-mutant-ape-yacht-club-nft-sales-skyrocket-floor-prices-spike-more-than-40/
BOARDROOM「The Bored Ape NFT Family Tree」https://boardroom.tv/bored-ape-yacht-club-family-nft/