コラム記事

伝統工芸「輪島塗」の歴史や値段、被災地への義援金募集情報など私たちに何ができるのか

輪島塗の歴史

輪島塗
引用:https://story.nakagawa-masashichi.jp/craft_post/116834

輪島塗(わじまぬり)とは、石川県の輪島を拠点に発展してきた、日本が誇るべき伝統工芸の一つです。

輪島塗の起源には諸説あるようで、約1000年前の大陸伝来説や、15世紀初めに輪島の重蓮寺に来た紀州の根来僧(ねごろそう)が普及させた説、柳田村の伝統である合鹿碗(ごうろくわん)が原型という説がありますが、1476年 (文明8年)には、輪島に職人(塗師)が存在していたことがわかっています。

輪島の地で輪島塗が発展してきた理由としては、土地の気候風土が漆器作りに適していたことや、下地の材料となる海成珪藻土や漆素材が豊富にあったこと、日本海航路の寄港地として古くから発展していたため材料や製品の運搬に便利だったことなどがあるようです。

どのように始まったかのには諸説ありますが、輪島塗の伝統技法が確立されたのは江戸時代前期です。

この頃に輪島で取れる珪藻土の粉(「地の粉」と呼ばれた)を漆の樹液に混ぜ込んで下地を強化する技術が生まれたことから、上から塗った漆の魅力を最大限に発揮できる、そして丈夫な漆器を作ることができるようになりました。

江戸時代中期、大工五郎兵衛によって「沈金」の技術が確立されました。「沈金」とは、輪島塗の特徴のひとつで、上塗りされた漆器の表面にノミで彫刻を施して、そのできたくぼみに漆の樹液を摩り込んだ後、金や銀の金属粉を充填して接着させて描く技法です。

この技術の発展により、それまで朱色や黒色の無地が主流だった輪島塗に、美しい装飾を加えられるようになったのです。

江戸時代後期には、会津から蒔絵師の安吉が輪島に移住したことから、「蒔絵」の技術が輪島塗りに取り入れられたといいます。蒔絵の技術の導入により、輪島塗はさらに華やかさを増しました。

海に面した寄港地であった輪島から日本全国に広がったことで、有名になった輪島塗りですが、輪島塗を売る塗師屋たちが、全国各地の顧客を訪問して製品の見本を見せながら商品を販売したことが貢献しているのだそうです。

輪島塗の特徴

輪島塗
引用:https://www.wajimanuri.co.jp/entry/1804/

輪島塗は、会津塗(福島)、紀州塗(和歌山)と共に日本三大漆器の一つとして知られています。日本全国の漆器で最初に重要無形文化財に認定された輪島塗は、世界最高級の漆器だと言えます。

輪島塗の製作用具など3804点が国の重要有形文化財も1982年に国の重要有形文化財に指定されました。

輪島塗の特徴は、その頑丈さと優美さです。100年以上持つという輪島塗の丈夫さは、歴史の中で発展してきた独自の技法によるものであり、100を超える製造工程のそれぞれを各工程の職人が分業する特殊な作り方によって丁寧に作られていることから実現しています。

何重にも塗られた漆が作る重厚な色合いや、蒔絵や沈金などの装飾の美しさは、このような細かく丁寧な工程とそれぞれの工程の技術を極めた職人たちによって作られています。

また、定められた規定を遵守している商品だけが輪島塗と認められるという徹底された品質管理で、そのブランドを保っています。

丈夫さが売りの輪島塗りですが、漆器であることには変わりありません。輪島塗りに使用される天然漆の表面は、長く直射日光や蛍光灯などの紫外線にさらされることで劣化・変質してしまうため、長く直射日光の当たる場所に置かないように適切に保存しましょう。

輪島塗の値段

輪島塗の種類ごとの値段の平均相場は、以下のようになっています。

  • 汁椀 20,000~30,000円
  • お盆 10,000~15,000円
  • おちょこ 13,000~15,000円
  • 重箱 120,000~200,000円

輪島塗は、長い伝統を受け継ぎ、100工程以上の丁寧な手作業で作られた、手間もコストもかかるブランドとして価値が高くなっています。

総輪島塗りの虎
引用:https://www.taigadou.com/price/post_116.html

総輪島塗りの虎は、輪島漆器大雅堂にて17,600,000円(税込)で販売されているなど、高級な日用品以外にアートとしても価値が高くなっています。

能登半島地震の被害状況

能登半島地震の被害状況
引用:https://www.worldjournal.com/wj/story/121488/7723182

輪島塗の産地である、日本海に面した能登半島の北西に位置する輪島市は、人口約3万人にも満たない小さな町です。

能登半島のエリアは、これまでにも大きな地震が起こってきた場所ではありますが、2024年1月1日の能登半島地震は、マグニチュード7.6という規模の大きなもので、新年早々から甚大な被害が生じました。

被害額は1.1兆~2.6兆円と言われており、被災地の石川県や近隣の県で人々は家を失ったり、現在も通常の生活を送れない状況が続いています。

輪島塗を守るための被災地支援・義援金募集情報

今回の地震で、輪島の伝統工芸・輪島塗も大きな被害を受けました。輪島漆器商工業協同組合によると、被害についての全容はまだ把握できていないものの、「朝市通り」の火災によって一部の工房や店舗が焼失したほか、作業に使用していた機械や道具が壊れたり、漆などの原材料が使えなくなったりするなど、「輪島塗」の生産に関わるほぼすべての職人が被害を受けていることがわかっています。

先述したように、伝統的に守られてきたきた100以上の工程、それらの技術を長い時間かけて磨き続けてきた職人の方々のあっての輪島塗ですが、そもそも輪島塗の担い手は高齢化などで最盛期に比べておよそ半分に減っていたため、今回の地震をきっかけに、廃業する生産者や販売店舗も多いのではないかと言われています。

今回の地震の影響を受けた伝統工芸である輪島塗を支援したいという人も多いと思うので、以下に義援金を募っている団体などをいくつか紹介します。

※P Art調べ。(1/25/2024)最新情報や実際の支援をするかどうかなどの判断は、ご自身での調査の上で行いましょう。

輪島漆器青年会

輪島漆器青年会は、石川県の伝統工芸「輪島塗」の若手団体です。

会員の活動報告や輪島塗に関する情報などを発信しているTwitter (X)にて、義援金募集情報が掲載されていました。

【支援の手順について】
1:こちらのメールアドレス(wajimasikkiseinenkai@gmail.com)まで「氏名、連絡先(電話番号、メールアドレス)、振込金額、振込予定日」をご連絡下さい。
2:北國銀行 輪島支店 普通預金296073 シッキセイネンカイ 宛に支援金をお振込み下さい。

↑こちらの手順につきまして、特に今後の連絡等がご不要という方はメールをお送り頂かず、また、匿名やハンドルネームでのお振込でも構いません。

連絡先:
輪島漆器青年会 会長
(有)蔦屋漆器店 大工 治彦
wajimatutaya@gmail.com

https://twitter.com/wajima_seinen/status/1743612517182538183

日本の匠と美 ほさか

1982年創業で、山梨県にて日本の伝統工芸品などを販売する、「日本の匠と美 ほさか」では、生産地や職人と直接取引をされている店主である保坂紀夫氏が義援金を取りまとめているようです。

生産者と直接の繋がりがある方に、要望に答える形で義援金を使ってほしいという気持ちがある方は、ぜひこちらを利用されるのが良いかもしれません。

寄付や支援物資は
①顔が見える関係で困っている方に直接
②要望を聞いてから
が基本です。
大きな団体・組織に送るのはお勧めしません(ここでは複数ある理由は書きませんが)。

振込先
郵便振替口座 ライブ工房ホサカ 00470-8-9725
(郵便局以外からのお振込の場合は 049店 当座0009725)

ご協力いただける方がいらしたら、宜しくお願い致します!

http://www.hosaka-n.jp/blog/cat01/7161.html

日本赤十字社

世界中で戦争・紛争犠牲者の救援をはじめ、災害被災者の救援、医療・保険・社会福祉事業など、人道的支援活動を展開する団体である日本赤十字社を通じても、被災地を支援できます。

2024年1月4日(木)から2024年12月27日(金)までの間、令和6年能登半島地震の被害地への義援金を受け付けています。(現在の配分先:石川県、富山県、新潟県、福井県)

以下の方法以外に地域を限定しての寄付も受け付けています。(それにより振込先が変わります。)詳しくは赤十字社のサイトをご覧ください。

被災地全域への寄付

1.ゆうちょ銀行・郵便局
当該義援金の専用口座である下記口座あて、お振込みをお願いいたします。
受付期間:2024年1月5日(金)から2024年12月27日(金)まで
口座記号番号 00150-7-325411
口座加入者名 日赤令和6年能登半島地震災害義援金

※窓口でのお振り込みの場合は、振込手数料は免除されます。
(ATMによる通常払込みおよびゆうちょダイレクトをご利用の場合は、所定の振込手数料がかかります)
※ゆうちょ銀行の振込用紙の半券が、受領証の代わりとして、税制上の措置が受けられます。(詳しくはこちら
※受領証をご希望の場合は、振替用紙の通信欄に「受領証希望」と明記のうえ、ご依頼人欄に「お名前・ご住所・お電話番号」を記載してください。(事前登録は不要です。)
※現在大変多くの協力をいただいていますので、受領証発行には3ヶ月程お時間を要します。ご了承ください。

2.銀行振込
当該義援金の専用口座である下記口座あて、お振込みをお願いいたします。
受付期間:2024年1月5日(金)から2024年12月27日(金)まで

三井住友銀行 すずらん支店 普通  2787501
三菱UFJ銀行 やまびこ支店 普通  2105493
みずほ銀行  クヌギ支店  普通  0620669

口座名義はいずれも「日本赤十字社(ニホンセキジュウジシャ)」

※お振込先のお間違いが多くなっておりますので、お振込前に必ず銀行名や口座番号等をご確認の上、お振込ください。
※ご利用の金融機関によっては、振込手数料が別途かかる場合があります。

※銀行振込の際の利用明細票が、受領証の代わりとして、税制上の措置が受けられます。(詳しくはこちら
※受領証をご希望の場合で、銀行からお振込みの際は下記ボタン「事前登録はこちら」から事前に登録手続きをお願いいたします。

https://www.jrc.or.jp/contribute/help/20240104/

ふるさと納税での寄附

以下のサイトでは、ふるさと納税を通じて、寄附をすることもできます。現在の状況により、御礼品不要として寄付をすることもできるようになっています。

詳細は各リンクからご確認ください。

まとめ

まずは少しでも早く被害に遭われた方々が通常の生活を送ることができるよう、復旧作業が円滑に進むことを願っています。

日本には全国各地に素晴らしい伝統工芸があります。世界的に見ても地震の発生が多い土地である日本ではありますが、私たちもできる支援をし、少しでも伝統工芸を守ることにつながればと思います。

天災だけでなく、都市部への人口集中による過疎化や少子高齢化など、さまざまな社会問題が日本の伝統文化を危機に追いやっているという現状についても、皆さんに改めて考えてみてほしいです。

参考

和家具・漆器修理工房:https://www.kagu-syuri.com/blog/5600/

田谷漆器店:https://www.wajimanuri.co.jp/history/

ABOUT ME
あやね
2018年にアメリカ NYへ移住した、京都生まれの大阪人。日本の伝統工芸が持つ独特で繊細な美しさが好きで、着物や器を集めている。郊外の家に引っ越したことをきっかけに、アート作品やアンティーク家具を取り入れたインテリアコーディネートにも興味を持ち始める。アメリカで日常生活に様々な形でアートを取り入れる人々に出会い触発され、2021年より趣味で陶芸をはじめる。