街を歩いていていると、街中に文字が書かれていたり、壁に巨大な絵が描かれていることがありますよね?日本ではあまり見ませんが、私がNYに住んでいるときは至る所に落書きアートが存在しました。外で見られるアート作品を「パブリックアート」と呼んでいます。
パブリックアートで皆さんが想像する代表例は、バンクシーかと思います。バンクシーは壁などにアートを施していますが、このアート作品をなんと呼べば良いのでしょうか?
調べて見ると「グラフィティ」や「ストリートアート」という言葉を目にします。この言葉に違いはあるのでしょうか?本日はグラフィティとストリートアートの起源、共通点、そして相違点をご紹介します。
グラフィティの歴史
グラフィティという言葉はイタリア語の「graffio」から来ており、それは“引っかくこと”、“引っかかれたもの”などの意味を持っています。グラフィティは、もともと自分の名前やメッセージなどを街中に記す行為から始まりました。
グラフィティの定義は、壁や歩道などの公共の場所にスプレーやスケッチされた、言葉、イニシャル、図面などを指します。
1920年代にニューヨークやフィラデルフィアなどの地下鉄の車両に出現したのが始まりです。グラフィティは違法に作成されることがほとんどで、それが犯罪や非行、権威への反抗といったイメージに繋がっています。また、公共の場に勝手に描くので犯罪として警察に捕まることもあります。
しかし、1980年代には、麻薬の蔓延やエイズの危機を訴えたりしていました。最近ではジェンダーの不平等を訴えるメッセージなども描かれています。
ストリートアートの歴史
ストリートアートとは、文字通り「路上アート」です。ストリートアートは、基本的に「パブリックアート」と同義です。
ストリートアートの中で最も一般的なのは壁画です。企業やブランドや地域団体とのパートナーシップで制作されることが多いのが特徴です。
ストリートアートという言葉の正確な起源は不明ですが、グラフィティとストリートアートは1970年代から80年代にかけて区別されるようになっていきます。ストリートアートは、合法的でグラフィティより、社会的に受け入れられている印象です。
グラフィティとストリートアートの違い
グラフィティは文字がベースの作品になっています。グラフィティを知らない人にとっては、読んだり理解するのが難しいです。
ストリートアートは絵が中心のアートなので、一般的にイメージしやすく誰が見てもわかりやすく評価されることが多いです。
世界のグラフィティを見に行こう!
世界中にはグラフィティが有名な場所が存在します。私が今まで鑑賞したグラフィティでおすすめしたい旅行先をお伝えします。
コロンビア:ボゴタ
ストリートアートのメッカとして知られるコロンビアのボゴタ。街にスプレーでアートを描いても逮捕はされません。市全体でアーティストの権利を守り、奨励金制度や文化を大切にしているブログラムなどもあります。
しかし、ボゴタ市がこのようにグラフィティ文化を守り始めたは2011年からです。2011年以前、ボゴタの警察はグラフィティアーティストを厳しく取り締まりすぎたため、悲惨な事件が起きてしまいました。
16歳のアーティスト、ディエゴ・フェリペ・ベセラが絵をスプレーで描いていたところを警察が追いかけて殺してしまいました。警察はこの事件を隠蔽しようと、証拠を改ざんしてベセラを武装強盗の容疑者にしようとしたが、ベセラの両親と街のストリートアート・コミュニティにより抗議活動が行われ、最終的には警官が逮捕されました。
この事件が転機となり現在のボゴタは、ストリートアートで有名な都市のひとつになりました。ボゴタでは旅行者に向けたグラフィティツアーなども開催されていたり、アーティストが訪れ作品を残したりしています。
韓国:梨花洞画村
梨花洞(イファドン)は、ソウルにある壁アートが楽しめる築です。ここは大学街で、カフェ、レストランが多くあります。急で長い階段や坂道がありアートを見るのに一苦労しましたが国内外から観光客が集まる観光スポットになっています。
私は街全体でアートを応援しているかと思っていましたが、梨花洞に住む人の現地のインタビューを見ると落書きとして認識されいることに驚きました。「勝手に家に落書きされる」「観光客が落書きされた自分の家を撮影する」「観光客のマナーが悪い」「落書きを消したのに新たにまた落書きされた」
梨花洞画村では、村民からはグラフィティがアートではなく「落書き」として認識されてるようです。確かに家を勝手に撮影されたりするのは嫌ですものね。
後述のリスボンやNYのようにグラフィティには住民の方のご理解も大切だと思いました。
ポルトガル:リスボン
治安の良さNO.3のリスボンの街はグラフィティの街と言っても過言ではありません。
リスボンは日本で生まれ育った私に「グラフィティ=治安が悪い」という固定概念を壊してくれた場所でもあります。
リスボン市議会は、都市再生のためにパブリックアートを積極的に推進しており。ポルトガルの首都リスボンは、他のヨーロッパの街よりもカラフルで芸術的な印象を抱きました。
路地や活用されていない場所をアートの力で、活性化することを勧めています。実際に、空き家に目立つアートを描くようアーティストに依頼したところ、申し込みが殺到した事例などもあるそうです。リスボンでは、アートを芸術の経済の一部として捉えているのではないかと思いました。
イギリス:Leake Street
イギリスといえば、バンクシーやキング・ロボが有名なグラフィティアーティストですね!
ロンドンにあるウォータールー駅の線路の下にはリーク・ストリートがあり、「グラフィティ・トンネル」と呼ばれる活気に満ちた都市景観が広がっています。誰でも合法でスプレー缶を使って芸術的才能を表現できる、クリエイティブな空間です。
ドイツ:ベルリンの壁
ベルリンの壁は、1961年8月13日に作られ1989年11月9日に壊されました。東ドイツ政府の国家機密が国民が西ドイツに逃亡しないために作られました。現在は高さ3メートル、長さ1.3メートルの巨大な壁にアートが施されています。
1980年代半ばに西ドイツのアーティストたちが西側の壁に絵を描き始めました。ベルリンの壁に描かれたアートは、「冷戦」を体現したものが多くあります。
有名な壁画は、「兄弟キス」または「独裁者のキス」と呼ばれるこの作品には旧ソ連のブレジネフ書記長と旧東ドイツのホーネッカー書記長のキスシーンです。
ベルリンは現代アートが有名な街としても知られています。街歩きの際にもたくさんのグラフィティを見つけることができました。
アメリカ:ブルックリン
アメリカNYのグラフィティ出身アーティストいえば、KAWS、バスキア、Mr.Doodle、キース・ヘリングなど名だたるアーティストが多くいます。
特にNYでもブルックリンのウィリアムズ・バーグやブッシュウィックのエリアには多くのアートが残されています。NYではグラフィティアーティストを積極的に支援しているそうです。
人気なのはジェームズ・ゴールドクラウンが書いたラブウォール。他にも新しい作品がNYでは次々と生まれています!
まとめ
グラフィティアートにおいてアーティスト同士には暗黙のルールがあります。
それは、「かっこ良いグラフィティには上書きをしてはいけない。もし上書をするのならばより優れたアートを生み出さなければならない。」このルールによってグラフィティはアーティスト同士の切磋琢磨の末、成長してきたのだと思います。
グラフィティ出身のアーティスト、バンクシー、KAWS、バスキア、Mr.Doodle、キース・ヘリング、KYNEなど元々は違法な落書きから始まり今では数千万円で取引されていますね!
これからグラフィティやストリートアートの歴史はどのように変化を遂げていくのでしょうか。とても楽しみです。