日本でも人気の高い海外ドラマとして知られる「ゴシップガール」(Gossip Girl)は、アメリカのテレビドラマとして、2007年から2012年まで全6シーズン(全121話)が放送されました。
10年以上の時が経っても変わらない人気を誇るこのドラマは、ニューヨークのアッパーイーストサイドに住むリッチな高校生の生活を描いたストーリーです。
登場人物たちの自宅も多くのシーンで映っており、その中で彼らの家には多数のアート作品が飾られていることに気がつくでしょう。
今回は、ゴシップガールを観たことがある方なら見覚えがあるであろう、ドラマに登場したアート作品やその制作者について紹介します。
チャックバスの部屋に飾られた作品
Ruvan Wijesooriyaの作品
Ruvan Wijesooriya(ルヴァン・ウィジェソーリヤ)は、ニューヨークを拠点に活動するフォトグラファーで、ファッションや音楽シーンの撮影を得意としてきました。2020年からは、ニューヨーク周辺で起こるプロテストや参加者に密着して撮影しているようです。
また、ゴシップガールの脚本家はルヴァン・ウィジェソーリヤのキャラクターを気に入り、シーズン2に登場するフォトグラファーのマックスというキャラクターの役をウィジェソーリヤをモデルに作ったと言われています。
チャック・バスの部屋に飾られたルヴァン・ウィジェソーリヤの作品には、以下のようなものがあります。
Richard Phillips「Scout」
チャック・バスのベッドルームに飾られている印象的なこの作品はRichard Phillips(リチャード・フィリップ)の「Scout」という作品です。
リチャード・フィリップは、1962年マサチューセッツ州マーブルヘッド生まれの画家で、ポップカルチャーや広告、ニュースなどのメディアからインスパイアされた作品を多く制作していることで知られています。ポップでレトロな雰囲気が特徴的です。
彼の作品は、ポピュラーなイメージに古典的な絵画技法を施すことで、その親しみやすさを排除して、新たな意味を吹き込んでいます。
ブレア・ウォルドーフがルイに出会った時に眺めていた作品
シーズン5で、ブレア・ウォルドーフがルイ王子に初めて出会ったシーンで登場する作品は、1863年のエドゥアール・マネの油彩画「草上の昼食」です。
エドゥアール・マネは、印象派の先駆的な画家であり、流動的な線と伝統的な方にはまらない個性的な色使いが特徴で、日常的な風景や風俗、静物、裸婦などさまざまなモチーフの作品を残しています。
1862年から1863年にマネによって描かれたこの作品は、裸の女性と服を十分に着ていない女性が、服を着た二人の男性と田舎の屋外で食事をしている様子を描いており、その違和感を感じる様子から当時物議を醸しました。
マネの作品の意図としては、倫理的に不適切な様子を描き伝統的な型を打ち破る挑戦的な意味があったのではないかと言われています。
現在はパリのオルセー美術館に所蔵されています。
セリーナ・ヴァンダーウッドセンの家に飾られた作品
「プラダ・マーファ サイン」
「プラダ・マーファ サイン」は、ゴシップガールの主役であるセリーナ・ヴァンダーウッドセンの家に飾られた最もアイコニックな作品でしょう。
アメリカのテキサス州にある砂漠のような荒野の中にあるマーファ(Marfa)という町から車で60キロほどの場所にあるイタリアの高級ファッションブランド、プラダ(PRADA)のお店を模したアート作品「PRADA MARFA(プラダ マーファ)」があります。
この作品は、アーティストユニットであるElmgreen & Dragset(エルマグリーン&ドラッグセット)の作品で、「プラダ・マーファ サイン」はこの「プラダ・マーファ」への方向を示したポスターです。
「プラダ・マーファ」は、何もない砂漠の中に高級ブランドのブティックを置くことで、時間と共に荒廃していく様子を見せるアートとして物質主義に対する疑問を投げかける意図で作られました。
ところが、ビヨンセなどの多くのセレブの写真とともに一気に有名になってしまい、結局は観光スポットとなり、本来のアーティストの狙いとは違うものとなってしまったのだそうです。
Richard Phillips「Spectrum」
セリーナ・ヴァンダーウッドセンの家に飾られたアート作品で、忘れてはいけないのがRichard Phillips(リチャード・フィリップス)の作品「Spectrum」です。
本作品は、1998年に制作されており、リチャード・フィリップスの特徴的なポップでレトロなスタイルが印象的です。
リチャード・フィリップスは作品を通じて、社会問題への問題提起もしていることから、ゴシップガールでも取り上げられたような処女喪失、10代の妊娠、離婚、レイプ、過失致死、10代の自殺、ゲイの性的アイデンティティ、摂食障害などのような問題との共通点も見出せるように感じます。
Ryan McGinley「Untitled (Blonde Smoke)」
Ryan McGinley(ライアン・マッギンリー)は、ニューヨークを拠点に活動するアーティストで、ホイットニー美術館で最年少で個展を行ったフォトグラファーとして知られています。
「Untitled (Blonde Smoke)」は、 2007年の作品で、幻想的な煙の向こう側にブロンドの髪を持つ女性が裸で立っているように見えます。
ミステリアスで魅力的なセリーナ・ヴァンダーウッドセンやその母リリーのイメージに合うような作品のように感じられます。
まとめ
これらのアート作品がドラマのセットで使われたことで、ニューヨークのリッチなエリアを舞台にした作品の雰囲気や登場人物たちのキャラクターとマッチして、より一層作品の世界観に浸ることができたのかもしれません。
気になる方は、もうドラマを一度見直してみてはいかがでしょうか。
画像引用元
https://www.artspace.com/magazine/interviews_features/close_look/what-gossip-girl-got-right-and-wrong-about-the-art-world-55038