コラム記事

【アニメとNFTの今後について】現在のアニメ制作環境との意外な相性とは!?

2021年頃から注目を浴びるようになり、今では海外アートにとどまらず日本の人気イラストレーターや漫画家なども続々と参入してきているNFTですが、実は日本のアニメ業界とも相性が良いことはご存じでしょうか?
この記事では、日本のアニメとNFTの今後について考察していきます。

今のアニメ市場

昨今ますます市場規模の広がるアニメ業界、日本動画協会による2021年の世界の日本アニメ関連市場の集計結果はなんと約2兆5000億円を超え、過去最高を更新したとのことです。
そんな右肩上がりの成長を続けるアニメ市場ですが、肝心のアニメ制作会社自体の市場規模は約3000億と、アニメ市場全体の約1/8程度しかありません。

なぜアニメ市場とアニメ制作会社自体の市場は解け離れてしまっているのでしょうか?
今のアニメ市場は作品の配信以外にも映画やBlu-ray/DVD、音楽、ゲーム、パチンコ、さらにはライブエンターテイメントなど多岐に渡っています。
しかも近年は市場の半分近くが海外の市場になっているため、作品1つ1つから生み出される市場の幅がどんどん広がっていることが大きな理由となっています。

年々大きな市場規模になりながらもアニメ制作の現場に還元されている金額としては、市場全体の約10%ほどなのです。
上記のような理由もあり、アニメ制作業界は激務薄給、やりがい搾取などと揶揄されるほど、肝心の制作現場にはあまり還元されていない現状が続いていると言われています。

今のアニメ制作現場

ではなぜアニメ制作現場にはあまり還元されないような状態になったのでしょうか?
原因は今のアニメ業界のセールスのスタンスそのものにあるのではないかと私は考えます。

現在のアニメは春夏秋冬ごとの約3か月を1クールとして定められています。
1クール10~13話のアニメが1シーズンに50本以上、合計すると年間約300本ほどのアニメが制作されており、少し前と比べても数倍の数のアニメが日夜生み出されています。

ほとんどのアニメが日本国内向けに作られており、年々アニメを視聴する層は増えてはいるものの、今のアニメの全体数に反して視聴者の数はまだまだ足りていません。
そしてアニメ同士で視聴者を奪い合う椅子取りゲームのような状態になり、より質が高く予算も今まで以上にかかる、じり貧の企業間の競争が起こってしまっているのです。

アニメ制作にかかる費用

現在主流とされている30分テレビアニメの制作期間は1~2年、制作費は1話あたりにつき1300~1500万円ほどかかると言われいます。
もし1クールのアニメを制作する場合、総制作費は1シリーズ約2.5~3億円もの金額がかかっているのです。

劇場版を含むアニメ作品で配信のみで投資予算を回収できる作品は年間数本くらいしかありません。
世間的に話題性のある作品であっても、マルチメディア化した際にその媒体との相性が悪く、逆に赤字になってしまうケースも多々あるのです。

もちろん話題性のあるアニメですらこのようなことが起こっているのですから、話題にならなかったアニメはその周辺のビジネスも必然的に赤字になってしまっていると言えるでしょう。

アニメ制作に伴うリスク

少し前であればこのような事があっても下手な鉄砲も数撃てば当たると、10本アニメを作って1本でも大ヒットを生み出せばその赤字を回収することも不可能ではありませんでした。
しかし今はアニメの全体数が増えすぎてしまったことにより、その大ヒットを生み出せる確率が相対的に低くなってしまっています。
アニメ制作に投資するコストに対しての興行的な成功確率がギャンブルのようなハイリスクハイリターンになってしまっているのです。

アニメとNFT

アニメ制作に携わる企業において、新たなビジネスの形の一つとして注目されてき始めているのが、ブロックチェーン技術によるNFTです。

NFTはデジタルデータ自体を販売できるため、新規にグッズ制作などの事業を展開させるなどといった商品化にまつわる労力がほとんどありません。
クリエイターが普段アニメ制作で作っている段階の過程のデータなどがそのまま商品として売れる可能性が高いのです。

上記の理由に加えデジタルデータであるため、グッズなどと違い在庫を抱える必要もなく、販売に伴うリスクもほぼありません。
今やワールドワイドな人気を持つ日本のアニメとインターネットを通じて販売できるNFTの相性は非常に良いのではないでしょうか。

更にNFTを使った二次流通により、世界中のアニメファン同士でのアニメ転売が繰り返されるたびにNFTの制作者に収入が入ってくる仕組みを作ることもできます。
NFTならではの仕組みにより、売れれば売れるほど二次流通市場も盛り上がりなおかつアニメ制作に携わるクリエイターサイドにも長く収益が入り、ロイヤリティも還元されるようになるのではないでしょうか。

日本のアニメにおけるNFTの活用事例

すでに国内で行われているアニメ×NFTの活用事例を3つご紹介していきます。

【進撃の巨人】

引用:https://www.coindeskjapan.com/9545/

販売:https://anique.jp/

アニメ『進撃の巨人』はAnique(アニーク)にて、アートワーク26点のデジタル所有権を販売しました。
講談社・『進撃の巨人』製作委員会の公認のもと、『進撃の巨人』のアートワークはデジタル所有権のみが1万円、デジタル所有権に特典の額装セル画を付けたものが6万円で抽選で販売されました。
アートワークの著作権自体はクリエイターや製作委員会が保有しますが、デジタル所有権を別に設定してユーザー間の売買により流通させることで、二次流通でも創り手に貢献できるようになっています。

【約束のネバーランド】

引用:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000029.000035719.html

販売:https://yakuneba-community.com/

アニメ『約束のネバーランド』はGaudiyが2021年7月17日から12月30日まで六本木ミュージアムにて開催した体験ミュージアム『約束のネバーランド』GFハウス脱獄編にて、NFTを活用したキャンペーンを行いました。
この企画では、ファンがミュージアムに来場したり、SNSのキャンペーンに参加することで、公式のファンコミュニティサービス『みんなのネバーランド』で無料でNFTを受け取れたようです。
限定NFTを保有するファンは、コミュニティ内で限定デジタルイラスト集を閲覧でき、イベント期間終了後には、ミュージアムの記念動画コンテンツを視聴できるようになりました。
ひとつのNFTに対して新たな体験価値が加わることで、単一的なアートアイテムとしてのNFTではなく、今後の外部サービスとの連携によって、様々な価値を付加させていく狙いです。

【秘密結社鷹の爪】

引用:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000081.000026677.html

公式サイト:https://www.dle.jp/jp/

アニメ『秘密結社鷹の爪』の制作を手掛ける株式会社ディー・エル・イー(DLE Inc.)は公式NFTプロジェクト「TAKANOTSUMEDAN」を開始しました。
このプロジェクトの第一弾として、鷹の爪団の各キャラクターの画像素材をランダムに組み合わせたジェネレーティブNFTを発行し、販売する予定です。
また、鷹の爪団は分散型自律組織”DAO”の理念に深く共感しています。
そこで、一定の条件を満たした団員の皆様に、皆様が保有している鷹の爪団NFTの商用利用を認め、本プロジェクトをファンの皆様と一体となって盛り上げていこうと計画しています。

まとめ

今回は、日本のアニメ市場の現状とアニメのNFT活用事例についてご紹介しました。

NFTは実用され始めてからまだまだ日も浅く、アニメ制作を行う1企業だけでは完結することが難しいのもまた事実です。
今後はアニメ業界全体でこの新しいNFTという技術を新たなビジネススタイルとして取り込み、全方位で支えあっていければ日本のアニメ市場はもっともっと盛り上がるはずです。
NFTがアニメ制作とうまく合わさっていけば、結果的に1アニメファンである私たちの楽しみにもつながっていくのではないでしょうか。

参考:https://www.youtube.com/watch?v=Tv7zJj_FWp4&t=248s
   https://nft-media.net/animation/manga-anime/292/

ABOUT ME
羽稲まを
専門学校時代、ゲームデザイナーを志すも周りに絵を描ける人材がいなかったため独学でイラストを勉強、絵も描けるゲームデザイナーとして重宝された。 道半ばで「自分、デザイン関連の方が向いてるのでは?」と、ウェブデザイナーを志しまたも独学で「ウェブデザイン技能士」を会得するも、大事故に遭い九死に一生を得る。 現在はフリーゲームデザイナーとしても活動中!