Non-fungible token:非代替トークンの略であるNFTは、デジタル資産の所有権を証明するためにブロックチェーンを使用したものです。
その技術を活用して、アートの世界でもデジタルアートが数千万ドルで落札されるなどの革命が起こりました。
一時は大ブームと捉えられ、世界中が熱狂したNFTですが、最近少し下火になってきていると言われているようです。
まだ実態のわからない新しいものという認識で、NFTに対して否定的に考えていた方も多いかもしれません。実際、NFTに関する状況は今後どうなっていくのでしょうか?
NFTのブームが下降ぎみである理由をいくつか考察し、将来的にどうなっていくのかについて予想してみましょう。
NFTブームは終わった?!最近の状況は?
検索ボリュームなどから、一般的な人々の関心度を測ることができるGoogle トレンドによると、「NFT」の検索は最高値を示しており、世界中でたくさんの人々がNFTの情報を検索していることがわかります。
NFTの取引は、2021年には約400億ドルの市場に爆発的に拡大しましたが、現在の世界最大級のNFTマーケットプレイス「OpenSea(オープンシー)」における1日あたりの取引高やユーザー数などは、昨年の夏と比較するとかなり低下しています。
データ追跡会社のDappRadarによると、2022年4月末のNFT市場の売上は約3500万ドルで、2月のピーク時から大幅に減少していたそうです。
また、同じ期間のNFTマーケットプレイスのアクティブな利用者数は、ピーク時の65万人から80%減少し、約12万人になったといいます。
NFTが最近下火な理由
1. 詐欺などが横行した
多くの人々の注目を一気に集めたNFTは、詐欺師やハッカーたちも引き寄せてしまったようです。
2021年のNBCニュースの調査によると、大手NFTマーケットプレイスであるOpenSea(オープンシー)では、プラットフォーム上で違法な行為を行う販売者たちへの措置や対策を十分に行っていなかったと言われています。
『爆発的ブーム』となったNFTや暗号資産について、詳しくわかっていない人々も多く市場に参入し始めた中、そのような層がターゲットとなった詐欺事件などが世界的に発生しました。
その結果、詐欺の報道などを見た人々から、この新しいブームは敬遠されてしまったのかもしれません。
2. 市場価格が上がりすぎた
単刀直入に言うと、バブルが弾けて皆が冷静になっているのかもしれません。
NFTの売り上げの減少に関する最近のウォールストリートジャーナルの調査によると、話題になったTwitterの共同創設者であるジャック・ドーシーの最初のツイートのNFTは、2021年3月に290万ドルで販売されましたが、最近の最高入札額は14,000ドルでした。また、スヌープ・ドッグがキュレーションしたNFTは2550万ドルでオークションにかけられましたが、その最高入札額はなんと210ドルだったといいます。
NFTの価格が急落していることが影響して、取引高が減少していることも『NFTが下火になっているように見える』大きな要因でしょう。
自身のNFT作品が6930万ドルで落札されたことが歴史的快挙として世界的に有名になったデジタルアーティストのビープルも、過去にNBCニュースに『自分のデジタル作品がこの価格で販売されたことは、現在の市場の一時的で気まぐれな影響を受けている可能性がある。』と語っていました。
NFTを巡る誇大広告や、有名人たちの参加など様々な要因が影響し、一気に大きなブームがきて、過剰に期待値が上がったことから『暗号資産やNFTで、一攫千金したい人たち』も押し寄せ、どんどん価格が釣り上がってしまったのでしょう。
3. 暗号資産の大幅な値下がり
ビットコインやイーサリアムなどの暗号資産が、大幅に値下がりしていることも、NFTの盛り上がりが減ったことに関連していると言えるのではないでしょうか。
2022年6月20日時点で、ビットコインの価格は「1BTC=2,703,505円」で推移しています。
2017年から4年間でその価値が約80倍となったビットコインですが、世界情勢など様々な要因でこれまでも何度も暴落してきています。
今年でいうと、3月に起こったロシアとウクライナの問題などから世界的に物価が上がったことや、5月4日に米連邦準備制度理事会が、約20年ぶりとなる0.5%の大幅利上げを決めたことなどが、暗号資産だけでなく株価など市場に大きな影響を与えています。
暗号資産をいち早く保有してきた層が、ブームに乗っかり、投資の一環としてNFTアートを買い漁った時期もありました。話題になったNFTプロジェクトなどは、一躍注目を集めるようになり、二次市場にもでて高値で取引されてきました。
取引に使われる暗号資産の価値が大幅に下落してしまったここ最近、取引が以前と比べて少なくなるのはごく自然なことでしょう。
NFTは今後どうなる?!
上記のような理由から、 NFTは世界的に下火だと見なされているようです。
しかし、『NFT市場は終わった』『もうそこに希望はない』というわけではありません。
大手企業が引き続き参入している
大手企業の参入は、利用者である一般の人々を、新たなNFT市場の参入者として自然と連れてくることになるでしょう。
スターバックス社は、NFTロイヤルティプログラムのローンチを発表している他、アメリカで最大の暗号資産プラットフォームであるCoinbaseは、全ての利用者がNFTの取引も行うことができる「Coinbase NFT」を発表しました。
より本質的になる
劇的なブームが起こると、いろんな人がいろんな目的で集まってくるのは世の常です。
NFTアートに関しても、その保有者には『アートに関心がある』という人は実際どれぐらいいたのでしょうか?
その多くは、暗号資産を保有しており、投資目的として人気NFTプロジェクトを購入したという層かもしれません。
誇大広告によって『単なるお金儲け目当て』だった人々、さらにはその層を狙ってローンチされた『アート性が皆無のプロジェクト』などは、徐々に淘汰されていき、真の価値を持つものだけが残っていくようになることが予想されます。
現在見られる『NFTの下火感』は、一般的な『ブームが終わった後の自然な縮小』なのではないでしょうか。
購入されるNFTの数が減っていることは、必ずしも『NFTが終わった』というを意味しておらず、何千点もの安い粗悪なNFTではなく、少数の高額で真の価値を見出されたNFTに、資金が集中しはじめているのだと考えられます。
環境が整備され、より使いやすくなる
暗号資産、NFT、メタバースなど、新しい物事には詐欺などのトラブルも多いことから、回避してきた人も少なくはないでしょう。
NFTの過剰なブームが落ち着いてきた現在、やっとプラットフォームが豊富になったり、コミュニティが醸成されたり、規制ができ始めたりと、徐々に環境は整備され、改善されていくことが期待されます。
『NFTは終わった!』と思い込まずに引き続き注目し、正しい判断ができるように勉強しておくことが大切になるのではないでしょうか。
まとめ
NFTや暗号資産、メタバースについて、悪い印象をもったり、その可能性を諦めたりすることは簡単です。
しかし、『まだどのように発展していくかはっきりわからないもの』だからこそ、面白さがあるのも事実でしょう。
世界情勢などに影響され、今後もNFTの価値は上昇、下降を繰り返していくかもしれませんが、NFTアートについては、より質が担保されたものが出回り、価値がつくようになるのではないかと期待しています。
表面的なイメージに流されず、引き続き賢く関わっていけるよう、最新情報をチェックして勉強しておきましょう!
参考
QUARTZ「The NFT boom has gone bust — for now」https://qz.com/2016058/the-nft-boom-is-over-for-now/
NBCニュース「NFTs were a hot market, but the number of accounts trading has dwindled」https://www.nbcnews.com/tech/crypto/nfts-market-decline-rcna27338
CNET JAPAN「「NFTブームは終わった」?–終焉説を信じるべきでない理由」https://japan.cnet.com/article/35187522/