コラム記事

日本の伝統文化のNFT化|日本酒や京友禅、花火のNFTプロジェクト

日本の伝統工芸京友禅のNFT

日本の伝統文化は、衣食住など様々なジャンルにおいても各地域ごとのそれぞれの特徴があり、技術や風習が長年受け継がれるものです。

伝統工芸品などは、繊細なデザインや高い機能性などが、海外からも高く評価されていますが、次の世代を担う職人が不足していたり、時代の変化とともにその歴史が閉ざされてしまうのではないかと長年懸念されてきました。

当サイトでも多くの記事で紹介している、ブロックチェーン技術を活用したNFT(Non-Fungible Token:非代替性トークン)によって、これらの日本の伝統文化を発信して世界的な価値向上を目指したり、保護したりすることを目指した動きが出てき始めているようです。

今回は、日本の伝統文化のの例をいくつかあげて紹介していきます。

NFTとは?

NFTについては、当サイトでも関連する記事を多く掲載しているので簡潔にまとめると、NFT(Non-Fungible Token:非代替性トークン)とは、ブロックチェーン技術を用いることにより、これまで資産価値を証明することが難しく、簡単にコピー・複製することができたデジタルコンテンツを代替できないものにしたもののことを指します。

NFTについてまだあまりよくわからないという方は、こちらの記事で基本情報を確認してみてください。

伝統文化のNFT化の目的、メリットは?

なぜ今、伝統文化をNFT化する動きがあるのでしょうか?

まず第一に、継承者やビジネスチャンスの不足による衰退が危惧されている日本の伝統文化を次世代に伝えて行くために、より多くの人々に知ってもらえるように発信する手段としてNFTを活用するという理由が考えられるでしょう。

NFTのプロジェクトをローンチすれば、オンラインプラットフォームを用いて国境なく世界中にプロジェクト内容を発信することができます。

これまでもウェブサイトやSNSなどを使ってオンラインで発信することは可能でしたが、オンライン上には情報が溢れかえっており、なかなか新しい層に発見してもらうことは難しかったと言えるでしょう。

特に、NFTやメタバースは今世界各地でホットであり、特に若い世代を中心に注目されています。より若い世代の人々の中で認知をあげることは、伝統文化が国内に留まらず海外でも求められるようになるチャンスを広げるためにも、希望を持てる手段かもしれません。

また、伝統文化や伝統工芸品などは、『熟練職人の技』『一点物』が評価され、重宝されるものの、その一部をNFTとしてデジタル化して、希少性のあるデジタル商品として新しいプラットフォームで販売することで、新たな収入源を増やすことにも繋がるでしょう。

NFTマーケットプレイス「HINATA(ヒナタ)」

日本の伝統文化におけるデジタルの可能性を広げ、世界に発信できるプラットフォームとしてのNFTマーケットプレイス「HINATA(ヒナタ)」は、株式会社FUWARIによって2022年1月11日にベータ版としてローンチされました。

HINATAでは、日本のアーティスト、クリエイター、職人などの作品の発信をサポートするため、作品をNFT化・デジタルアートとしてマーケットプレイス上で売買するだけでなく、メディア運営も行うことで、作り手が作品に込めた思いや、そのストーリーを発信することにフォーカスしているようです。

現在は、伝統工芸品の「京友禅」や「日本酒」のNFTを活用したプロジェクトなどが発表されています。

NFT化されている日本の伝統文化の例

三陸花火大会

三陸花火大会のNFTアート
引用:「三陸花火大会2022よりNFTアートで日本の伝統文化DXスタート!人気NFTアーティストのオリジナル作品3点を会場展示」https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000020.000079321.html

岩手県陸前高田市のFIREWORKS株式会社は、花火をテーマにしたNFTアートを2022年4月29日(金・祝)に岩手県陸前高田市で開催された三陸花火大会にて初めて展示し、その収益を花火打ち上げ費用として全額寄付しました。

このプロジェクトで制作された「花火」をテーマにしたアート作品は、国内の人気NFTアーティスト3名(Skybase、RA、Nyice!)によって制作されています。

FIREWORKS株式会社は、日本の花火産業の世界的価値向上に貢献することを目指して、今後も花火師やNFTアーティストなど様々な業界と共同で「花火」をテーマにNFTアートを制作していくようです。

琉球びんがた

国指定伝統的工芸品「琉球びんがた」のNFT化
引用:PRTIMES「【国内初】国指定伝統的工芸品「琉球びんがた」のNFT化」https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000005.000041543.html

日本の文化や技術を活用して新しい事業価値を創造するビジネスデザインファームである株式会社ピハナコンサルティングは、琉球びんがた事業協同組合、琉球びんがた職人、一般社団法人琉球びんがた普及伝承コンソーシアム、知念紅型研究所と連携し、国指定の伝統工芸品「琉球びんがた(りゅうきゅうびんがた)」のNFTプロジェクトを2021年12月に発表しました。

琉球びんがたとは、沖縄の豊かな自然や特色を鮮やかな色彩や図柄で表現した、琉球文化の象徴とも言える沖縄の最も代表的な伝統的手染物です。

15世紀ごろに中国やインド、ジャワの更紗などの染色技術をもとに琉球びんがたが生まれたと言われており、歴史の中で何度もその伝統が失われる危機に直面してきました。

本プロジェクトでは、デザイン性が高い琉球びんがたの本染め、型紙のデジタルデータをNFT化して販売したり、デザインデータを使った商品の開発・販売の推進、琉球びんがた工房への視察が可能な権利もNFTとしてリリースしたりと、琉球びんがたの活用機会を拡大するとともに、新たな収益源獲得を狙っているそうです。

京友禅

日本の伝統工芸である京友禅のNFT
引用:PRTIMES「NFTマーケットプレイス「HINATA(ヒナタ)」にて、日本の伝統文化である「京友禅」や「日本酒」との新たなプロジェクトが始動。キャンペーンにてNFTの無料配布も開始します!」https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000002.000093068.html

京都の伝統工芸品として知られる京友禅に関するNFTプロジェクトも、NFTマーケットプレイス「HINATA(ヒナタ)」で発表されています。

京友禅とは、友禅染という染めの着物に模様をつけるための代表的な染色技法で作られた着物の中でも、江戸時代前期に京都で生まれたもののことで、1976年には経済産業省指定伝統的工芸品に指定されています。

花鳥風月などのような日本の伝統的な意匠を絹の生地に描く京友禅は、煌びやかな染色品として知られており、描きあげる職人の技術は、高く評価されています。

京友禅が作るため、伝統的な意匠を原寸大で描いたデザイン画である草稿が用いられます。草稿を基にして、伝統工芸の職人たちが数十もの工程を経て、着物などのような衣装を製作していきます。

草稿に見られるデザインは、伝統的に受け継がれてきたスタイルで、日本の美を象徴するものとして高い芸術性があります。

HINATAでは、この草稿の画像を、NFT化するというプロジェクトを京都・洛中で120年以上、京友禅を受け継いできた株式会社 関谷染色と共同でスタートし、世界に発信しています。

NFT化されて発信された京友禅の草稿は、デジタル化されて国内外のアーティスト、クリエイターに提供された際、そこから二次創作などを経て新しい価値のあるものへと広がっていくことが想定されているそうです。

草京友禅のデザイン画である草稿は、未完成だからこそ、無限の可能性を秘めているのです。

日本酒

日本酒のラベルアートのNFT
引用:PRTIMES「NFTマーケットプレイス「HINATA(ヒナタ)」にて、日本の伝統文化である「京友禅」や「日本酒」との新たなプロジェクトが始動。キャンペーンにてNFTの無料配布も開始します!」https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000002.000093068.html

NFTマーケットプレイス「HINATA(ヒナタ)」では、日本酒に関連するNFTプロジェクトも発表されています。

日本酒には、飲む以外にも楽しみ方があり、例えば日本酒のラベルはその意匠に注目すると奥が深く、好んでコレクションする人もいるほどだそうです。

日本酒のラベルのアート性を活かし、デジタル化してその可能性を広げることを目指して、コレクションアイテムとしてNFT化し、販売していくのが本プロジェクトです。

HINATAは、岐阜・各務原市にある創業100年の蔵元・林本店とともに、同蔵元のフラグシップ製品のグローバル展開である『百十郎 emotion series』の発売記念として、ラベルアートのコラボNFTを製作しました。

ワインのラベルに関しては、世界にコレクターが存在しているそうなので、日本酒のラベルアートも、NFT化をきっかけに注目を集めるかもしれません。

まとめ

私自身、独自の美しさを持っている日本の伝統工芸を応援したい気持ちを強く持っているため、今回紹介したNFTプロジェクトのように、衰退が危惧されている伝統文化を大切に継承し、新しいカタチを模索していくことができる取り組みは、素晴らしいと思いました。

NFTの特徴をうまく活用することで、より多くの人々に知ってもらい、新しい可能性を見つけながら、伝統を守って受け継いでいくことができたらと願っています。

参考

PRTIMES「三陸花火大会2022よりNFTアートで日本の伝統文化DXスタート!人気NFTアーティストのオリジナル作品3点を会場展示」https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000020.000079321.html

PRTIMES「【国内初】国指定伝統的工芸品「琉球びんがた」のNFT化」https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000005.000041543.html

PRTIMES「NFTマーケットプレイス「HINATA(ヒナタ)」にて、日本の伝統文化である「京友禅」や「日本酒」との新たなプロジェクトが始動。キャンペーンにてNFTの無料配布も開始します!」https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000002.000093068.html

ABOUT ME
あやね
2018年にアメリカ NYへ移住した、京都生まれの大阪人。日本の伝統工芸が持つ独特で繊細な美しさが好きで、着物や器を集めている。郊外の家に引っ越したことをきっかけに、アート作品やアンティーク家具を取り入れたインテリアコーディネートにも興味を持ち始める。アメリカで日常生活に様々な形でアートを取り入れる人々に出会い触発され、2021年より趣味で陶芸をはじめる。