コラム記事

NFT/メタバースの多様性。メタ社の取組やBoss Beautiesなど解説。

NFT、メタバース とダイバーシティ&インクルージョン

ダイバーシティ、インクルージョンとは?

ダイバーシティ、インクルージョンの説明
引用:Montgomery County Public School「Montgomery County Public Schools News
All In: Diversity, Inclusion and Equity in Education」https://news.montgomeryschoolsmd.org/staff-bulletin/all-in-diversity-inclusion-and-equity-in-education/

ダイバーシティ(Diversity)とインクルージョン(Inclusion)は、互いに関連する概念ではありますが、互換性があるというわけではありません。

ダイバーシティは、日本語で言うところの『多様性』という意味合いで、人種や性別、年齢、宗教、文化的背景や価値観など、さまざまなバックグラウンドを持つ人々で組織が構成されている状態やそれらの代表性などを指します。

一方で、インクルージョンは日本語だと『受容』にあたり、異なるグループの人々の貢献、存在、視点がどれだけ評価されているか、そして様々なバックグラウンドを持った人々が互いに受け入れ合って、環境に統合されているかという、多様性を実現するための文化の尺度となります。

つまり、ダイバーシティは 『What(何を)』、インクルージョンは 『How(どのように)』を表しているということになります。

最近ではグローバル化や顧客ニーズの多様化のような市場の変化への対応のため、また2020年改めて話題にあがった人種差別問題などを経て、世界の多くの企業がダイバーシティ、インクルージョンを意識しています。

NFT、メタバースとは?

NFT、メタバースについては、当サイトでも関連する記事を多く掲載しています。

簡潔にまとめると、NFT(Non-Fungible Token:非代替性トークン)とは、ブロックチェーン技術を用いることにより、これまで資産価値を証明することが難しく、簡単にコピー・複製することができたデジタルコンテンツを代替できないものにしたもののことを指します。

メタバースとは、インターネットの次の世界とも言われています。

現実世界と同じように遊んだり、仕事をしたり、取引をしたり、何かを創ったり、交流をしたりできる仮想世界であるメタバースは、常に同期されて、インタラクティブで、総合運用性のあるリアルタイムプラットフォームです。

現状、NFTやメタバースでダイバーシティ&インクルージョンは実現している?

引用:NFT CALENDAR「PokerFace Art」https://nftcalendar.io/event/pokerface-art/

NFTの中でも特にNFTアートを切り取って見てみると、従来の歴史的なアートの世界と比べて格段にダイバーシティ&インクルージョンが実現しやすい環境が整っていると言えるでしょう。

これまで美術の世界は、歴史的に偏った人種、階級を中心として組織されてきたと言われています。

例えば、アメリカの美術館のコレクションは85%が白人、87%が男性アーティストで構成されています。

従来の一般的なアートの世界では、アーティストたちが世の中に認められるには一流のギャラリーやアートイベントなどに出展してその価値が評価されることが必要であり、その業界のほとんどが偏った人種、性別で構成されていることから、どうしても平等に機会が与えられてなかったという事実がありました。

現在ではNFTを通じて、より多様なアーティストが、従来のゲートキーパーを通さずに自身の作品を世の中に出すことができるようになっています。

NFTはOpenSeaのようなオンラインのプラットフォームを用いて取引がされるため、出品・購入のどちらも、すべての人々にその門戸が開かれているのです。

また、メタバースについて考えても、仮想世界の中でアバターを用いて現実世界と同じように活動ができる場所であるため、メタバースとは普段の現実世界の自分とは全く違う自分として表現し、存在することもできる世界になります。

そのため、現実世界でのこれまでの歴史や現状などから人々の意識の中に存在している無意識のバイアスを取り除くこともメタバースであれば実現する可能性があるのです。

とはいえ、現時点でNFTやメタバース界隈に精通していたり、業界を牽引している人々の構成はやはり白人男性が一番多いようです。

これは、そもそも現在の世の中を支配していると言っても過言ではないGAFAM(Google, Amazon, Facebook, Apple, Microsoft)のような大手企業やゲーム業界、アート業界の多くが白人男性を中心の構成されていることなどが関係しているのだと思われます。

ダイバーシティ&インクルージョンを意識した取り組み

メタ社のダイバーシティ&インクルージョンへの姿勢

メタ社のバーチャル会議
引用:NEW YORK POST「Facebook launches virtual-reality business meetings in ‘metaverse’ push」https://nypost.com/2021/08/19/facebook-launches-virtual-reality-business-meetings/

2021年に世界的に影響力の大きい大企業であるFacebookが社名をMeta(メタ)に変更したことは、おそらく多くの方が知っているでしょう。

メタ社は、今後メタバースの構築を優先する戦略をとり、2021年だけで約1兆1000億円の予算をメタバース事業に投じています。

そんな同社の年次会議もアバターを用いて行われた様子が公開されており、その様子を見るとあらゆる人種、体型、ファッションスタイルを表現した多様なバーチャルのペルソナも登場していました。

メタ社のチーフ・ダイバーシティ・オフィサーであるマキシーン・ウィリアムスによると、同社は製品開発の際に公平性を考慮するよう、チームを訓練しており、サービスがさまざまな人々にどのような影響を与えるかについてフィードバックを提供できる多様な従業員グループであるインクルーシブな評議会を利用しているそうです。

メタバースという概念がまだしっかりと形作られる前の発展途上の状態で、そのスタートラインからすでにメタ社がダイバーシティ&インクルージョンを意識しているという事実は、少なくともかつてのシリコンバレーの状況と比較すれば大きな進歩を踏み出していると言えるでしょう。

一方で、メタ社がダイバーシティ&インクルーシブのビジョンを実現するためには、困難もあるようです。

メタ社が今後も採用していきたい職種は、高度かつ専門的なスキルや知識を必要とする可能性が高く、その層はまだ偏ってしまう傾向にあるからです。

女性による女性のためのNFTプロジェクト

引用:Boss Beauties https://bossbeauties.com/roadmap

これまでのアート界において、人種的あるいは性的マイノリティは歴史的にあまり存在感を出せていなかったことや、2020年に起こったコロナウイルスによりパンデミックによって、一般的に人とのつながりが欠如していた状況を受け、マイノリティなグループに所属する多くの人々が、世の中や組織への帰属意識を持つことが難しかったといえます。

そんな中、マイノリティのグループを代表して、横のつながりや密接なコミュニティを作り出し、互いに助け合ったり、インスピレーションを与え合うことを目指したNFTプロジェクトも多く立ち上がっています。

NFTプロジェクト「Boss Beauties(ボス・ビューティーズ)」は、多様でパワフルな女性たちの姿を描いたコレクションで、My Social Canvas(マイ・ソーシャル・キャンバス)のCEOであるLisa Mayer(リサ・メイヤー)によって創設されました。

ボス・ビューティーズでは、NFTを所有する人々が特別なコミュニティに参加し、ゲストスピーカーを招いたトークイベントや、Discord(ディスコード)でのディスカッションを行ったりと、メンバーが帰属意識を持つことができ、お互いに刺激を与え合える環境を提供しています。

世界中の黒人アーティストの作品を紹介するNFTオークション

17歳の黒人女性アーティスト、写真家、活動家であるDiana Sinclair(ダイアナ・シンクレア)
引用:This week in Photo「NFT and the Digital Diaspora, with Diana Sinclair」https://thisweekinphoto.com/nft-and-the-digital-diaspora-with-diana-sinclair/

マイノリティのコミュニティ主導の取り組みとしては、NFTオークション「The Digital Diaspora(デジタル・ディアスポラ)」も話題になりました。

デジタル・ディアスポラは、17歳の黒人女性アーティスト、写真家、活動家であるDiana Sinclair(ダイアナ・シンクレア)によってキュレーションされた、6か国から集まった黒人アーティストの作品を用いたNFTオークションです。

アメリカで奴隷解放宣言が出された6/19を祝う『ジューンティーンス』のある2021年の6月に、美術展、公開インスタレーション、資金調達のNFTオークションが開催されました。

キュレーターであるダイアナ・シンクレアは、自身がNFTについて知った時、NFTスペースに黒人女性のアーティストなどがほとんど存在しないことに気がつき、落胆したといいます。

それは本当に、NFTスペースにおけるこの公平性の欠如を見ることについてでした。

黒人女性アーティストであるダイアナも、自身の作品を出品したものの2週間売れず、まずはコミュニティを構築することにシフトしたといいます。

まず、NFTのスペースにいなかった黒人女性たちに対しての教育を行い、彼女たちをプラットフォームに連れてくることに力を注ぎました。

デジタル・ディアスポラは、経済的にも成功し、NFT界へのインパクトも与えることができ、ポジティブな効果をもたらす動きでした。

6/19 に展覧会を開催したSuperchief Gallery(スーパーチーフ・ギャラリー)は、これを機にマイノリティを中心としたアーティストを対象としたNFT展を開催しています。

まとめ

人種的、性的マイノリティがそのグループを代表して世の中で存在感を出すことはまだまだ難しい状況にありますが、NFTやメタバースに関連する企業やプロジェクトの動きを見てみると、着実に進歩しているように感じました。

根本的な問題に対してまだまだ課題はあるものの、NFTやメタバースはまだ新しく発展中であるため、ダイバーシティ、インクルージョンを実現することができるポテンシャルが十分にあると期待しています。

参考

Forbes「The Diversity, Equity And Inclusion Potential Of NFTs」https://www.forbes.com/sites/rebekahbastian/2021/10/24/the-diversity-equity-and-inclusion-potential-of-nfts/?sh=1d25f2613179

Bloomberg「Building a Metaverse That’s Not Just For White Guys」https://www.bloomberg.com/news/newsletters/2021-11-04/building-a-metaverse-that-s-not-just-for-white-guys

OBSERVER「“The Digital Diaspora” Curator Diana Sinclair Talks NFTs, Afrofuturism, and Crypto」https://observer.com/2021/06/diana-sinclair-digital-diaspora-nft-interview/

ABOUT ME
あやね
2018年にアメリカ NYへ移住した、京都生まれの大阪人。日本の伝統工芸が持つ独特で繊細な美しさが好きで、着物や器を集めている。郊外の家に引っ越したことをきっかけに、アート作品やアンティーク家具を取り入れたインテリアコーディネートにも興味を持ち始める。アメリカで日常生活に様々な形でアートを取り入れる人々に出会い触発され、2021年より趣味で陶芸をはじめる。