アメリカ・ニューヨークの近代美術館(MoMa)に、「ユニクロ・フリー・フライデー・ナイト」というプログラムがあるのはご存知ですか?
ユニクロの出資によって、毎週金曜日の夕方4時から閉館まで、来場者は無料で入館することができるプログラムです。
このように、世界的に有名な美術館は、来場者からの入場料やグッズ販売だけでなく、多くの企業や個人からの寄付やパートナーシップを結ぶことで美術品のコレクションを守り続け、新しい展示会のための作品購入などを続けることができています。
特にアメリカでは、企業は自社の宣伝などももちろん兼ねているものの、コミュニティへの貢献の意識が強い傾向にあり、アート関連の寄付に積極的な企業が多いようです。
今回は、日本でアート関連の寄付ができる財団やコミュニティなどについてまとめてみました。
美術館に寄付する・支援する
独立行政法人 国立美術館
日本国内に6ヶ所ある国立美術館は、4万点以上の美術作品を所蔵し、通常は年間で約400万人の来場者を迎え、日本における芸術文化の創造と発展あるいは継承や教育に、常設展示や企画展を通じて貢献しています。
独立行政法人国立美術館のウェブサイトを通じて、国立美術館のあらゆる事業に対しての寄付をすることができます。
含まれる寄付できる事業としては、展覧会・上映会の開催、調査・研究、所蔵作品・フィルムなどの修復、子供から大人までへの芸術教育の普及、美術館の建物や施設設備の整備、情報・資料の収集などがあります。
独立行政法人国立美術館のウェブサイトを通じて支援できる6つの日本の国立美術館
- 東京国立近代美術館
- 京都国立近代美術館
- 国立西洋美術館
- 国立国際美術館
- 国立新美術館
- 国立映画アーカイブ
寄付の方法
独立行政法人国立美術館への寄付は、クレジットカード決済によるオンラインあるいは郵便局・ゆうちょ銀行からすることができます。
寄付をしたい美術館と事業を選択し、1口1,000円から寄付することができます。
寄付の特典
1年間で5口(5,000円)以上の寄付をすると、5口ごとに1枚、郵送にて国立美術館で開催される展覧会のチケットがもらえます。
また、10口(10,000円)以上の寄付した場合には、限定のノートやモバイルバッテリーなどの国立美術館のオリジナルグッズがもらえます。
美術館のメンバーシップに登録する
上記で紹介した国立美術館以外の美術館でも、それぞれの美術館のメンバーシップに登録することで支援することができます。
(例)森美術館「MAMC(マムシ―)」
東京・六本木で現代アートを中心としてファッション、建築、デザイン、写真、映像など幅広いジャンルの展覧会を開催していることで人気の美術館、森美術館の「MAMC(マムシ―)」は、個人・法人を対象としたメンバーシッププログラムです。
森美術館で体験できる国内外の現代アートを楽しむコミュニティとして、アートファン同士の交流、アーティストの活動支援として機能します。
メンバーシップに登録すると様々なプライベートツアーや優先入場などの特典や特別イベントに参加することができるようです。
美術館のグッズを購入する
ほとんどの美術館では、館内あるいはオンラインでそれぞれの美術館のグッズを販売しています。
美術館を何らかの形で支援したい場合、美術館のストアにはおしゃれなグッズもたくさんあるので、ギフトなどの購入に美術館のお土産ショップやオンラインストアを利用するのもオススメです。
(例)ポーラ美術館オンラインショップ
印象派など西洋絵画を中心に約1万点を収蔵する神奈川・箱根のポーラ美術館。そのオンラインショップでは、モネの《睡蓮の池》をプリントしたポーチや日傘、アンリ・マティス《オセアニア 海》をモチーフにしたストールなど、同館の収蔵作品とコラボレーションしたファッション小物のラインナップが充実。また、モネやマティスの絵画をイメージしたポップコーンのようなユニークなものも取り扱われている。
モネなどの印象派をはじめとする西洋絵画を中心とした作品を所蔵している神奈川・箱根にあるポーラ美術館のオンラインストアには、Tシャツからマグカップ、複製絵画など幅広く、展示されているアーティストや展示会にちなんだオリジナルグッズなどが豊富に揃っています。
モネの「睡蓮の池」をプリントしたアイテムなどが人気だそうです。
(例)ワタリウム美術館「ON SUNDAYS」
建築、写真、映像メディアなど幅広い世界の現代美術作品を紹介していることで人気のある東京・青山のワタリウム美術館のオンラインストアもオススメです。
ニューヨークのメトロポリタン美術館と、独自のグラフィックやタイポグラフィ、デザインをプロダクトに落とし込んだブランド「TAGS WKGPTY(タグス ワーキングパーティ)」のコラボレーションTシャツなど、スタイリッシュなアイテムが揃っています。
現代アーティストたちを支援する
公益財団法人 現代芸術振興財団
アートコレクターとして有名な元ZOZO TOWN創設者である前澤友作が設立し、会長を務めている公益財団法人 現代芸術振興財団は、日本でもより多くの人々が芸術に触れて豊かでクリエイティブな暮らしを営むことができるようにという意思のもと創設されました。
現代芸術振興財団は、展示会事業やアートコンペのような表彰イベントの開催を通じて、多くの人々が現代美術に親しみを持つことができる環境を作ったり、若きアーティストたちの活躍機会を作ったりして、日本の現代アーティストたちを支援しています。
現代芸術振興財団が企画する展覧会やウェブサイトを通じて多くの現代アーティストたちに出会うことができるため、展示会に足を運んだり、作品を購入することでアーティストたちを支援することもできます。
アーティストを直接支援する
アーティストたちを直接支援したい場合には、直接作品を購入したり、製作のためのファンドレイジングで支援をしたりすることができるでしょう。
ほとんどのアーティストが公式のインスタグラムアカウントやウェブサイトを持っており、そこから作品購入やイベントへの参加依頼などをすることもできます。
アート関連のNPO法人・財団
上記で紹介した以外にも、アート関連の団体や個人を支援したり、芸術に関連した教育などの活動をしているNPO法人や財団法人なども多くあるようです。
一般財団法人東京アートアクセラレーション
2019年に設立された一般財団法人東京アートアクセラレーション(Tokyo Art Acclereration [TAA])は、アーティストの支援やアートファンのコミュニティ形成などを通じて、新しいエコシステムを社会に醸成していくことを目的としています。
拠点として、東京・六本木にコンプレックスビル「ANB Tokyo」を持っており、アーティストの支援やコミュニティ活性化のため、展覧会やイベントなどを企画・運営しています。
一般財団法人 全世界シンクロ・アート財団
一般財団法人 全世界シンクロ・アート財団は、地域振興・社会貢献を目指すための芸術文化活動として展覧会の開催や他業種との交流、アーティストの活動支援などをしています。
2021年5月には、「シンクロアート銀座店」としては、アーティストたちが路面店を直接運営することで、これまで『稼げない職業』というイメージを持たれ続けているアーティストたちとアートコレクターたちを繋げる機会を創出するなどの活動をしているそうです。
2018年から2019年には単一ギャラリーで日本一の売上、そして参加アーティストの年俸2500万円超を記録しました。
公益社団法人 日本工芸会
公益社団法人 日本工芸会は、工芸作家が中心となり、無形文化財の保護・育成を目的として、1955年に設立されました。
工芸技術の発表の場として「日本伝統工芸展」を毎年開催したり、伝統工芸技術の伝承者育成、調査・研究、海外への紹介などの活動をしたりと、日本に古来からある工芸の文化の継承・発展に貢献しています。
日本全国に9支部(東日本・東海・富山・石川・近畿・中国・山口・四国・西部)、7部会(陶芸・染織・漆芸・金工・木竹工・人形・諸工芸)がある日本工芸会は、工芸の伝統を守り続けるため、個人・団体からの寄付を募っています。
NPO法 芸術家と子どもたち
NPO法人 芸術家と子どもたちは、現代アーティストと子どもたちを繋げる活動をしています。
アーティストによって開催されるワークショップの実施などの芸術家と子どもたちの活動を通じて、子どもたちにとっての潜在的な力を発見・発揮し、伸ばしていく機会を生み出し、アーティストにとっても子どもたちとの交流の中で新たな表現のヒントを得ることを目的としています。
ワークショップなどのイベントは、公立小中学校や児童養護施設などで開催されているそうです。
ボランティアとしての参加や、単発あるいは継続の寄付によって団体の活動を支援することができます。
一般社団法人 障がい者アート協会
一般社団法人障がい者アート協会は、障害を持っている人々がもっと気軽、自由、自然に自己表現できる場所を提供し、社会的に認知されて経済的対価を得ることができる機会を創出するため、その機会・場所・仕組みを作る活動をしています。
個人・法人からの寄付などの経済的支援や展覧会訪問、作品購入などで障害のあるアーティストたちを応援することができます。
アーツサポート関西
アーツサポート関西(Arts Support Kansai/ASKアスク)は、関西で芸術・文化活動をする法人・団体・個人に対しての寄付金を集めて、『市民の力によって関西のアートや文化をサポートし、育てていく』活動をしている一般社団法人です。
アーツサポート関西を通じてアーティストに寄付をすることで、誰でも自分の意思で気に入った関西出身アーティストの『パトロン』になるというシンプルなシステムで地域のアーティストを支援し、コミュニティの活性化に貢献できます。
まとめ
2020年にコロナウイルスによるパンデミックの影響を受け、多くの美術館・ギャラリーなどの芸術関連施設が経営不振に陥ったり、アーティストたちの生活が苦しくなったりした影響でオンラインプラットフォーム上でのファンドレイジングが行われていていたのをいくつか目にしました。
芸術活動は、災害時などに最優先されるような必要不可欠なものではないものの、人間にとってなくてはならないものだと思います。
時代やその地域・国の文化的特徴を反映しながら、長い歴史の中で変遷してきたアートをどんな状況下でもコミュニティとしてみんなで守っていけるような余裕が生まれると理想的だなと感じました。
日本においてのアートに対する教育や人々の関心は、アメリカなどの他国に比べまだまだ低いと言われていますが、少しでもアートに興味がある方は、ぜひアート業界やアーティストの支援について考えてみてください。
参考
芸術家と子どもたち https://www.children-art.net/support/donation/
Arts Support Kansai http://artssupport-kansai.or.jp/contribution/
一般社団法人 障がい者アート協会 https://www.borderlessart.or.jp/
独立行政法人 国立美術館 https://kifu.artmuseums.go.jp/
森美術館 https://www.mori.art.museum/jp/mamc/
公益社団法人日本工芸会 https://www.nihonkogeikai.or.jp/donation