コラム記事

日本刀の種類や値段、所持に必要な資格や美術品としての価値は?

日本刀とは

中国や台湾など、隣国にも刀があり、形や装飾からどれが日本刀なのか見分けがつかないという方もいるでしょう。

まず日本刀とは何なのか、その定義から見ていきましょう。

日本刀は、「玉鋼」(たまはがね)を使って、日本独自の「折り返し鍛錬」という方法により、日本で作られた刀剣類の総称です。

その大きな特長は、刀身に反りがあること、そして片側だけに刃が付けられていることにあります。平安時代末期頃に出現したこのような形式を持つ刀が、「日本刀」と呼ばれているのです。

日本刀は刀身の寸法によって、①「太刀」(たち)、②「打刀」(うちがたな)、③「脇差」(わきざし:同音で「脇指」とも表記する)、④「短刀」(たんとう)の4つに分類されるのが基本。

さらに広義では、「薙刀」(なぎなた)や「槍」(やり)、「長巻」(ながまき)なども日本刀に含まれます。

名古屋刀剣ワールド https://www.meihaku.jp/touken-qa/touken-qa-detail_1-1/

日本刀は、もともと武器として生まれましたが、神秘的で美しいものとして、徐々に天皇や武士の権威の象徴、信仰の対象として神や天皇に捧げる「宝物」、やがて「美術工芸品」「文化財」として扱われるようになりました。

1945年に第二次世界大戦に日本が敗戦して以降は、日本刀は「武器」として所有が一切禁止されました。現在では、「美術品」としてのみ所有が許可されています。

有名な日本刀・刀工

他の美術品同様に、その歴史的背景や制作者によって、日本刀の価値は変わってきます。

特に有名な日本刀をいくつか紹介します。

有名な日本刀

大包平

大包平(おおかねひら)
引用:
https://www.tnm.jp/modules/rblog/index.php/1/2018/03/13/%E3%83%88%E3%83%BC%E3%83%8F%E3%82%AF%E3%81%8F%E3%82%93%E3%81%A8%E5%A4%A7%E5%8C%85%E5%B9%B3/

「大包平(おおかねひら)」は、平安時代末期に当時活躍していた古備前派の刀工・包平によって作られたとされる太刀で、国宝に指定されています。

現存する全ての日本刀の中でも最高傑作と言われており、童子切安綱と並び称されて「日本刀の東西の両横綱」と例えられることもあります。

江戸時代に岡山藩主だった池田光政の祖父、池田輝政の代の時から池田家に代々受け継がれ、家での年中行事に用いられていたといいます。1967年に当時の文部省が6,500万円で池田家より購入し、現在は、東京国立博物館が所蔵しています。

一期一振

一期一振(いちごひとふり)は、鎌倉時代中期に作られたとされる太刀です。御物(皇室の所有物)として、宮内庁侍従職が管理しています。

短刀を得意とした「天下三作」の粟田口吉光によって作られた数少ない太刀の中でも傑作であることから「一期一振」という名称がついたという説もあります。

もともと毛利家伝来のものだったのが、毛利輝元から豊臣秀吉に献上され、豊臣秀頼に受け継がれましたが、大坂夏の陣で焼失してしまいます。徳川家のお抱え鍛冶であった越前康継によって再刃(火災等で刃がなくなった刀剣に再度焼き入れを行なうこと)したことによって現在の形となりました。

天下五剣(「童子切安綱」、「三日月宗近」、「大典太光世」、「数珠丸恒次」、「鬼丸国綱」)

「天下五剣」(てんがごけん)とは、日本刀の中で最高傑作と言われる5つの日本刀、「童子切安綱」(どうじぎりやすつな)、「三日月宗近」(みかづきむねちか)、「大典太光世」(おおでんたみつよ)、「数珠丸恒次」(じゅずまるつねつぐ)「鬼丸国綱」(おにまるくにつな)のことです。

童子切安綱は、鬼退治の伝説に由来して付けられた名称です。平安時代に京で暴れまわっている鬼の退治を依頼された源頼光が、酒呑童子(しゅてんどうじ)という名の鬼を切ったとして、童子切と名付けられたと言われています。平安時代の刀工、大原安綱によって作られました。

三日月宗近は、三日月のように見える打除け(うちのけ)という刃文の一種から、名付けられました。平安時代の刀工、三条宗近によって作られ、足利家に受け継がれた後、徳川秀忠によって所有され、現在は東京国立博物館が所蔵しています。

鬼丸国綱は、天下五剣の中で唯一、御物(皇室の所有品)となっている日本刀です。鎌倉幕府5代執権北条時頼が重病を患った際に、小鉢に取り憑いた鬼を鬼丸国綱がひとりでに斬り、時頼の病も快復したという逸話から名付けられました。鎌倉時代の刀工粟田口国綱によって作られました。

大典太光世は、霊力を発揮したという逸話をいくつか持ち、『霊力の宿る日本刀』と言われています。平安時代の刀工、三池典太光世によって作られました。

数珠丸恒次は、仏法と深いつながりのある日本刀です。日蓮宗の開祖、日蓮が信奉者から日本刀を献上された際に『邪なものを打ち破って正しい考えを示す太刀=破邪顕正の太刀』として体に刀を身につけます。その際に、数珠が巻かれていたことから、数珠丸と名付けられたそうです。

日本刀の種類

時代による区分

大きな戦が起こったり、戦闘形式が変化したことが影響して、時代によって日本刀の形や材料、技術も変化してきました。

「古刀」(ことう)

「古刀」とは、平安時代中期から1595年(文禄4年)までに作られた日本刀のことで、それぞれの地域の砂鉄から作られた玉鋼によって作られ、地域ごとの伝統的な製造法で作られているのが特徴です。

「新刀」(しんとう)

「新刀」とは、1596年(慶長元年)から1780年(安永9年)までに作られた日本刀のことです。当時は、古刀の時代に比べて均質な鋼が流通していたため、地域による差がなくなっています。

「新々刀」(しんしんとう)

「新々刀」とは、1781年(天明元年)頃から1876年(明治9年)の廃刀令頃までに作られた日本刀のことを指します。当時の刀工は、注文に応じて刀を自在に作り分けられるようになっていました。

「現代刀」(げんだいとう)

「現代刀」とは、新々刀期以降から現代までに制作された日本刀のことです。

形状による区分

太刀(たち)

太刀は、戦国時代ごろまでに一般的だった刀です。太刀は、刃を下にして太刀緒(たちお)と呼ばれる紐や革で腰から吊るして携帯する刀で、現代の分類では刃長60cm以上(おおよそ刃長約80cm前後)のものを指します。

打刀(うちがたな)

打刀は、室町時代ごろから登場した日本刀の一種で、太刀に比べて刀身の反りが少なく、刃を上にして帯に差して携帯する刀です。現代の分類では、刃長が60cm以上のものが打刀、60cm未満のものが脇差とされています。

脇差(わきざし)

脇差とは、太刀や打刀など一般的な日本刀よりも短い刀剣のことで、長い刀剣が使えなくなった場合の予備の武器として、腰に刺して携帯された刀です。

刃長30cm以上60cm未満のものが脇差で、刃長の長さによって、江戸時代にはさらに大脇差、中脇差、小脇差の3種類に分類されます。

短刀(たんとう)

短刀とは、もともとは全長約30〜36cmの刀のことを指していましたが、現代の分類では刃長30cm未満のものを指します。

最小の刀剣なので、女性や子どもでも扱える護身刀として、用いられてきました。

日本刀の値段の相場は?

日本刀の価格は、数万円から5億円まで幅広く、その歴史的背景や製作者などによって価値が決まります。

最も高価な日本刀は、戦国時代を代表する5億円の日本刀で、岡山県瀬戸内市の備前長船刀剣博物館にある国宝「太刀無銘一文字(山鳥毛)」です。

上杉謙信が所有した以降、上杉家で代々受け継がれてきた刀剣で、鳥の羽のような華やかな刃文が特徴的です。

刀剣の価値は、どのように評価されるのでしょうか。現在は日本国家と公益財団法人「日本美術刀剣保存協会」の2つの機関によって、その評価分類が行なわれています。

「国宝」、「重要文化財」、「重要美術品」という評価は、日本国家が定めた評価基準です。

一般的に国宝に指定された日本刀は高額な値段がつくことが多く、例えば1967年に当時の文部省が6,500万円(1967年の貨幣価値を現在に換算すると約2億6000万円)で戦国武将、池田輝政の子孫より購入し、現在は、東京国立博物館が所蔵しています。

一方で、公益財団法人「日本美術刀剣保存協会」による評価には、「特別重要刀剣」、「重要刀剣」、「特別保存刀剣」、「保存刀剣」、「特別貴重刀剣」、「貴重刀剣」があり、優れた刀剣に対して、鑑定書を発行しています。

一般的に、特別保存刀剣は30万~300万円、重要刀剣は100万~500万円が価格の相場となっています。

保存状態によっては、室町時代や江戸時代の日本刀であっても10万~100万円程度で購入できる場合もあるようです。

所持に必要な資格

日本刀は、警察に届け出た後に審査を経て合格すれば、各都道府県の教育委員会から登録証が交付され、登録証のある日本刀については、所持については特別な許可は必要なく誰でも可能です。

ただし、携帯や運搬については銃刀法による制限があります。

購入したり、相続したりと所有者を変更する必要がある場合には、登録証記載の各都道府県教育委員会への届け出が必要となります。

登録証のない日本刀は、レプリカの可能性もあるため、購入する日本刀に銃砲刀剣類登録証が付いているかどうかは、必ず確認しなければなりません。

日本刀はどこで購入できる?

日本刀を購入する場合は、日本刀についての深い専門知識を持ち、日本刀を専門で扱う古物商である「刀剣商」が経営する刀剣専門の店での購入がおすすめです。

骨董市などで日本刀を販売しているのを見かけたことがある方もいるかもしれませんが、日本刀の専門性がなく、価値がわからずに販売している場合も多く、時には、贋作を販売しているかもしれないというリスクもあります。

刀剣商の中でもさらに詳しい知識を持つ「刀剣評価鑑定士」の資格を持つ専門家もいます。刀剣評価鑑定士は、全国の刀剣商によって組織されている「全国刀剣商業協同組合」が創設した刀剣商の専門資格で、日本刀の価値を正確に判断し、美術的な価値などの査定を行うために十分な知識や経験を持っていることが証明されているため、さらに信頼できると言って良いでしょう。

まとめ

日本刀は、制作された時代の歴史的背景や制作者、保存状態などにより数万円から5億円まで幅広い価格帯で取引されています。

歴史的には武器や信仰の象徴などの意味合いを持ってきた日本刀ですが、現在では美術工芸品としてもコレクターから人気がある日本固有の工芸品です。

購入したい方は、刀剣商など信頼できる売り手から購入しましょう。

参考

Wikipedia「日本刀」https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%97%A5%E6%9C%AC%E5%88%80

名古屋刀剣ワールド「」https://www.meihaku.jp/touken-qa/touken-qa-detail_1-1/

ファイナンシャルフィールド「最も高価な「日本刀」は5億円!?そもそも相場はどのくらい?」https://financial-field.com/living/entry-159477#:~:text=%E7%89%B9%E5%88%A5%E4%BF%9D%E5%AD%98%E5%88%80%E5%89%A3%E3%81%AF30,%E3%81%AA%E3%82%8B%E3%81%93%E3%81%A8%E3%82%82%E7%8F%8D%E3%81%97%E3%81%8F%E3%81%82%E3%82%8A%E3%81%BE%E3%81%9B%E3%82%93%E3%80%82

ABOUT ME
あやね
2018年にアメリカ NYへ移住した、京都生まれの大阪人。日本の伝統工芸が持つ独特で繊細な美しさが好きで、着物や器を集めている。郊外の家に引っ越したことをきっかけに、アート作品やアンティーク家具を取り入れたインテリアコーディネートにも興味を持ち始める。アメリカで日常生活に様々な形でアートを取り入れる人々に出会い触発され、2021年より趣味で陶芸をはじめる。