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【ネタバレ注意】初見では理解不可能!庵野秀明監督渾身の超大作「シン・仮面ライダー」を考察

2023年3月18日より、「シン・ゴジラ」、「シン・エヴァンゲリオン劇場版」、「シン・ウルトラマン」に続く、庵野秀明監督が手がける「シン・」シリーズ4作品目「シン・仮面ライダー」が公開されました。
初週の興行収入は期待に反してまさかの2位発進と、雲行き怪しい中上映が始まった今作ですが、賛否両論ありながらも一部からは根強い支持を集めています。

今回は超大作にして怪作、「シン・仮面ライダー」について庵野監督の行き過ぎた”仮面ライダー愛”が生み出してしまった「賛」と「否」の部分について、劇中の簡単な説明と考察を交えながら紹介していきます。

「仮面ライダー」とは?

「仮面ライダー」とは、1971年から1973年まで、全98話が放送された毎日放送・東映制作の特撮テレビドラマ作品です。

頭脳明晰、スポーツ万能でオートレーサーでもある大学生・本郷猛は、その能力に目を付けた世界征服を企てる悪の秘密結社・ショッカーに連れ去られバッタの能力を付与する改造手術をされてしまいます。
しかし、ショッカーに協力させられていた恩師・緑川博士に助けられ、脳改造寸前に脱出したことで、人々の自由をショッカーから守るため、仮面ライダーとなることを決意し、以後悪の秘密結社・ショッカーとの熾烈な戦いを繰り広げるていくというあらすじです。

仮面ライダーは第1作「仮面ライダー」放映以来、数度の中断を挟みながらも半世紀以上放映され続けており、今では昭和・平成・令和と3つの元号をまたぐ、大長寿シリーズとなっています。

「シン・仮面ライダー」あらすじ

謎の組織「SHOCKER」によって「オーグメンテーション(強化手術)」を施された青年・本郷猛は、組織を裏切った緑川弘博士と緑川ルリ子親子に連れられ、組織を脱走します。
裏切り者となった本郷たちを始末すべく遣わされたクモオーグ率いる追手たちをプラーナによって得た人並外れた力で応戦するも、クモオーグの策略によって緑川弘博士が殺されてしまいます。


本郷猛は、自身が得た強大な力に戸惑いながらも、緑川弘博士の死に際に託された「ルリ子を頼む」という願いと過去に味わった深い絶望から、覚悟を決めた本郷はルリ子からヒーローの象徴として与えられた赤いマフラーを首に巻き「仮面ライダー」としてSHOCKERと戦っていくのでした。

初代「仮面ライダー」と「シン・仮面ライダー」の違い

あらすじだけを見るとそこまで大きな違いがあるようには見えませんが、予告や映画を見た人なら「雰囲気が暗すぎる」と思った方もいるのではないでしょうか?
それもそのはずで今作「シン・仮面ライダー」は初代「仮面ライダー」のリメイク作品とは違い、オリジナル作品をベースに現代風に設定を変えたり、新しく独自の解釈を加えたリブート作品となっています。

また、初代「仮面ライダー」にはTV版と並行して、原作者・石ノ森章太郎先生が手掛けた漫画版「仮面ライダー」が存在します。

引用:http://ishinomori.jp/series.html?sid=1


漫画版「仮面ライダー」はTV版とは内容が異なるパラレルな世界観で、石ノ森章太郎先生の作品特有である勧善懲悪ではない、どこか暗い影が落ちている作風となっています。

「シン・仮面ライダー」のストーリーと世界観は漫画版「仮面ライダー」を基にアレンジが加えられているため、TV版のヒーロー然とした「仮面ライダー」ではなく、敵と同じ力で戦うダークヒーローとしての「仮面ライダー」としての側面が強く出ています。
それに伴って、敵である「SHOCKER」目的も「世界征服」のような絶対悪ではなく、「最も深い絶望を感じている人々を救済すること」という一概に悪とは言い切れないものとなっています。

なぜ「シン・仮面ライダー」はがっかりと言われてしまうのか?

私自身「シン・仮面ライダー」は映画館に3回ほど見に行っており、個人的には大好きな作品となりました。
我々世間一般でいう「オタク」という生物は、自分の好きなもの、気に入ったものは周りに布教したがる性質を持つものです。
ですが、「シン・仮面ライダー」という作品は見れば見るほど「好きだけど人には勧めづらい」という思いが強くなる、なかなかにレアな作品になっています。
また、「シン・仮面ライダー」についてネットで検索した際にもポジティブな意見よりもネガティブな意見の方がが多くみられます。
なぜ「シン・仮面ライダー」はがっかりと言われてしまうのか?その理由について、私が感じた点を3つほど紹介します。

作中の雰囲気が全体的に暗い

前節でも述べた通り、「シン・仮面ライダー」という作品はダークヒーローの物語として描かれています。
ですが、50年もの歴史を紡いできた「仮面ライダー」という名前は今や正義のヒーローの代名詞になっており、そのギャップから「なんか思ってたのと違う…」となってしまう人が多かったんじゃないかと思います。

「シン・」シリーズの前作である「シン・ウルトラマン」も「シン・仮面ライダー」同様リブート作品ではあるのですが、その描かれ方は一貫して地球人を守る正義のヒーローでした。
そのため、「シン・ウルトラマン」が面白かったから「シン・仮面ライダー」も見ようと思って、作品を視聴した人は違和感を感じてしまったのではないのでしょうか?

例えるならリブートされた「シン・キャプテン・アメリカ」という作品があって、それが正統派ヒーローだったから、「シン・アイアンマン」もそうだと思って見に行ったら中身が「バットマン」だった。
そんなイメージからの乖離が本作の「違和感」の一因となったのではないのでしょうか?

難しい単語が多く、説明が少ない

「シン・仮面ライダー」では、「プラーナ」や「パリハライズ」、「ハビタット世界」など、劇中に何度も出てくるのに具体的な説明がほとんどされない単語がよく出てきます。
これらは初代「仮面ライダー」のTV版、漫画版どちらにも存在しない本作オリジナルの設定です。
すなわちTV版、漫画版を履修していようが、初見だろうが、制作陣以外は初耳なわけですが、その説明は詳しくはされません。

これは庵野監督の良くもあり、悪くもあるクセのようなもので、あえて明言しないことで視聴者にその解釈を委ねるという風になっています。
そのため、1回の視聴では理解するのは難しく、全体の内容を知ったうえで2回、3回と見ることで解釈の幅が広げていくことでようやく「シン・仮面ライダー」という作品を理解し始めることができるのだと思います。
明確な答えがないからこそ、視聴者一人一人がそれぞれの答を見つけることのできる作品、それが「シン・仮面ライダー」という映画になのではないでしょうか?

独特なアングル、見づらいシーンが多い

特撮といえば、ド派手なアクションシーンや最近では綺麗なCGシーンなどが見どころとして挙げられます。
ですが、「シン・仮面ライダー」はやたら変な画角のシーンや、映画館の大スクリーンでも見づらいシーンが多くみられます。
一見、制作陣が下手なのかと疑ってしまうレベルの問題に見えますが、実はこれらは意図して”わざと”行われているのです。

なぜ、わざわざこんな撮り方を行っているのでしょうか?
それには庵野監督の狂気ともいえる「仮面ライダー愛」が関係しています。

今から50年前に放映されていたTV版初代「仮面ライダー」、もちろん今より技術は進んでおらず、CGなどもなく、ほとんどが人力のみで制作されていました。
そんな時代の特撮表現を”わざわざ”現代の最新技術で再現してしまったのです。

「シン・仮面ライダー」の感想でもよく話題になるトンネルでの11人のバッタオーグとの戦闘、「仮面ライダー」本郷猛と「仮面ライダー第2号」一文字隼人の初の共闘シーンです。
めちゃくちゃかっこいいシーンなのに「暗すぎてよく見えない…」、これ当時の暗所でのシーンがテレビで見づらかったのを再現しやがりました、してしやがりました。
「いや、こんな胸熱でかっこいいシーン普通に見せてくれよ!!」でもそこで一筋縄ではいかせてくれないのが庵野秀明、まさに狂気といえるこだわりです。

ちなみにTV版も漫画版も屋外での戦闘であるため、トンネルで戦うのは原作再現ではなくオリジナル設定です。
いや、なんでよりにもよってこのシーンで当時の暗所シーンの再現しちゃったんだ…。

とある界隈からは絶賛!?別視点から見る「シン・仮面ライダー」の面白さとは?

少しネガティブな内容が続きましたが、少し変わった観点から「シン・仮面ライダー」の面白さをご紹介しようと思います。
「シン・仮面ライダー」は特撮好きに作られている作品であるということは何となく感じられたと思いますが、実は別の層からも人気を集めているのです。
その層とは”バイク乗り”通称「ライダー」たちです。

そう、この作品は仮面「ライダー」、昨今道路交通法の規制などで作中数回しかバイクに乗らない仮面ライダーが多い中、これでもかというくらいバイクを魅せてきます。
絶対走ったら気持ちいいだろうロケーション、身体に風を受けるあの表現、そしてどこから引っ張り出してきたんだ初代サイクロン号のベース車両2台!?
兎にも角にもバイク好きの心をこれでもかってほど掴んでくる表現や描写に溢れています。

劇中の一文字隼人の「バイクは孤独を楽しめる、そこが好きだ」というセリフ、あの「バイクを通して自分自身と向き合える時間」を表しているようで、凄く印象に残っています。
私も父の影響でバイク乗りになった身なので、映画を見終わってバイクで帰路を走りながら、「バイクってやっぱいいな」と身体に受ける風と共にしみじみと感じました。
「好きだけど人には勧めづらい」と言いましたが訂正します、”バイク乗り”、「ライダー」たちには是非お勧めしたい作品です。

まとめ

今回は「シン・仮面ライダー」について、どうして賛否両論になっているのかを自分なりに考察してみました。
個人的には本当に大好きな作品の1本になりましたが、この映画に関しては好き嫌いが分かれるべくしてできている作品なのも凄くわかります。
もし、この記事を読んでくださったあなたが「こういう考え方もあるんだ」と思って、もう一度この作品を視聴してくださると私も1ファンとして嬉しいです!

画像引用:https://twitter.com/Shin_KR/status/1650345065510830086?s=20

     https://www.youtube.com/watch?v=PUcK-59_ykI

     https://www.youtube.com/watch?v=qwo4fFji8rc&t=1s

     https://www.youtube.com/watch?v=acZFZaie1RU

参考:https://www.shin-kamen-rider.jp/
   https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BB%AE%E9%9D%A2%E3%83%A9%E3%82%A4%E3%83%80%E3%83%BC
   https://ciatr.jp/topics/317715
   https://www.youtube.com/watch?v=6RVkQa5dGOE

ABOUT ME
羽稲まを
専門学校時代、ゲームデザイナーを志すも周りに絵を描ける人材がいなかったため独学でイラストを勉強、絵も描けるゲームデザイナーとして重宝された。 道半ばで「自分、デザイン関連の方が向いてるのでは?」と、ウェブデザイナーを志しまたも独学で「ウェブデザイン技能士」を会得するも、大事故に遭い九死に一生を得る。 現在はフリーゲームデザイナーとしても活動中!