バーニングマンとは?
バーニングマン(Burning Man)とは、アメリカのネバダ州、ブラックロック砂漠で毎年8月〜9月に開催される世界最大の『共同生活フェスティバル』です。
野外フェスティバルといえば、よくある音楽イベントをイメージしやすいかと思いますが、バーニングマンは、音楽やアートだけの祭典というわけではなく、人間の精神を高めたり、社会問題に取り組んだり、文化やコミュニティの感覚を刺激することを目的とした体験の場を提供しています。
バーニングマンには、発起人であるラリー・ハーベイ(Larry Harvey)によって2004年に作られた10の原則があります。
- Radical Inclusion(どんな者も受け入れる)
- Gifting(無条件に与える)
- Decommodification(商業主義と決別する)
- Radical Self-reliance (根本的な自立)
- Radical Self-expression (本来の自分を表現する)
- Communal Effort (隣人と創造的にコラボレーションする)
- Civic Responsibility(市民としての責務を果たす)
- Leaving No Trace (跡を一切残さない)
- Participation (積極的に参加する)
- Immediacy (この瞬間を全力で楽しむ)
アメリカ国内のみならず、世界各国からおよそ7万人の人々が参加し、普段は何もない砂漠の中に1週間限定の街を作ります。イベントの最終日には、それらを全て片付け、元の何もない砂漠状態に戻すという、斬新で唯一無二なイベントです。
会場内には、多くのアート作品やDJブースがあり、一時的に作られた街の中で人々が生活を共にしながら、様々なイベントを楽しむことができます。
参加者は鑑賞者側にとどまらず、みんなでつくりあげるイベントというコンセプトになっているため、会場ではバーを出している人や、マッサージのサービスをしている人、オブジェを作る人などが見られ、それぞれが自己表現の場としてイベントを使っているのがわかります。
お金が使えない会場内では、これらの催しは全て利益を目的としておらず、参加者それぞれが『Give』の精神を大切にして与え合う喜びを分かち合っているところも、バーニングマンが『ユートピア』と表現される理由でしょう。
バーニングマン2022年開催情報
バーニングマンは2022年も、8月28日(日)から9月5日(月)の1週間ほどブラック・ロック砂漠のプラヤ開催される予定です。
2020年には、オンライン開催などに移行したこともありました。本年度は、参加者は新型コロナウイルスのワクチン接種証明書や陰性証明書を提示せずに参加することができるようです。
また、オープニングの夜には通常花火が打ち上げられてきましたが、今年はドローンショーがあるそうです。
バーニングマンのアート作品を振り返る
「Duel Nature」2006年
「Duel Nature(デュアル・ネイチャー)」は、2006年のバーニングマンで展示されたニューヨークを拠点とする彫刻家のKate Raudenbushによって制作されました。
この作品は、プラズマ切断されたスチールやスチールチューブ、そして赤いアクリルミラーでできており、DNAのような巨大な二重螺旋の形をしています。幅10メートルの作品の中にも入ると、全く異なる二重性の世界に入ることができます。
人間の『デュエル・ネイチャー』を表現し、暴力、恐怖、分裂といった人間の状況を示唆しているのだそうです。
「Big Rig Jig」2007年
「Big Rig Jig(ビッグ・リグ・ジグ)」は、2007年に大規模なパブリックアートプロジェクトで知られるアメリカの彫刻家マイク・ロスによって、バーニングマンでの展示のために制作されました。
2台の18輪オイルタンカーを溶接したこの作品は、高さが14メートルある巨大な作品で、実際に観るだけでなく、中を通りにけたり頂上に立つことができるようになっています。
アメリカの持続不可能な石油経済に対しての力強いメッセージを表現しているそうです。
「Fire of Fires」2009年
バーニングマンでは、2000年からブラックロックシティのスピリチュアルな側面を表現するために「バーニングマン・テンプル」をアーティストに依頼して建設してきました。
「Fire of Fires(ファイアー・オブ・ファイアーズ)」は、2009年のバーニングマンのためにDavid Umlas、Marrilee Ratcliffe、Community Art Makersによって制作されました。
無処理木材と合板で作られたこの作品は、中央の神殿の周りに建てられた6つの文化ポッドから構成されており、それぞれアジア、アフリカ、インド、中東、ヨーロッパ、アメリカ大陸の6種類の伝統文化様式を取り入れて表現されました。
「Gon KiRin」2010年
「Gon KiRin(ゴン・キリン)」は、2010年に香港在住のテックアート、LEDアーティストであるTeddy Loとデトロイト在住のメカニカル&インタラクティブビジュアルアーティストRyan C. Doyleによって制作されました。
全長20メートル、高さ4メートルの巨大なアートカーは、750メートル以上のLEDで覆われており、まるで恐竜の骨のように見えます。
進化、可能性、神の力を表現した、生とテクノロジーの両方が混在する光のドラゴン「Gon KiRin」は、DJブースや20人以上が座れるスペース、パーティー用のソファがあり、手動で尾を前後に動かしたり、口から炎を出したりできるようになっています。
「Bliss Dance」2010年
「Bliss Dance(ブリス・ダンス)」は、力強い女性の裸体像でよく知られているイタリアのベネチア生まれのアメリカ人彫刻家マルコ・コクレーンによって2010年に制作されました。
鉄で作られた目を閉じて踊る裸婦の像は高さ約14メートルで重さは3トン以上だったそうです。
バーニングマンで展示された後は、ダンサー、歌手のデジャ・ソリスの彫刻の3部作「Bliss Project(ブリス・プロジェクト)」の最初の作品として、2011年から15年までサンフランシスコのトレジャー・アイランドに設置された後、ラスベガスのザ・パークに常設されるようになりました。
「You are the Key」2013年
2013年のバーニングマンで展示された「You are the Key(ユー・アー・ザ・キー)」は、世界初・最大のクラウドファンディングサービスを提供するKickstarterによる共同出資プロジェクトとして、ブルガリア人抽象芸術家・グラフィックデザイナーのRalitsa Ivanovaによって制作されました。
高さ3メートル、長さ8メートルという大きな鍵の彫刻には、何百もの問いかけのメッセージと、それらの答えとして、レバー(鍵を開ける部分)には『YOU(あなた)』という答えが表現されています。
「The Penrose Triangle」2013年
「The Penrose Triangle(ペンローズ・トライアングル)」は、彫刻家のBlake CourterとBlake Courtneyによって、Kickstarterの共同出資で制作された作品です。
本作品は、2013年のバーニングマンのHonorarium Installations Project(オナーリウム・インスタレーション・プロジェクト)の一環として展示されました。
アルミニウムとスチールで作られた高さ約6メートルの作品は、LEDでライトアップされており、『どの角度から見ても人を混乱させるような』3次元のイリュージョンのように表現されています。
「Embrace」2014年
「Embrace(エンブレイス)」は、2014年にバーニングマンのHonorarium Installations Project(オナーリウム・インスタレーション・プロジェクト)で展示された、Matthew Schultz(マシュー・シュルツ)によるKickstarterの共同出資プロジェクトです。
高さ24メートルという巨大なこのモニュメントは、抱き合う二人の人間の姿が表現された木彫りの彫刻作品です。約1年かけて104人のボランティアチームとともに制作されたそうです。
バーニングマンの終盤にライトアップされ、壮大な炎によって燃やされました。
「Return to Innocence」2015年
「Return to Innocence(リターン・トゥ・イノセンス)」は、ウクライナのクリエイターAlexandr Milovによって2015年のバーニングマンのために制作されました。
金属の檻の形で作られた背中合わせで座り込む男女、そしてその檻の中にある彼らの内面は、半透明の繊細な素材で作られた『子供』のようで、男女の普遍的な葛藤や人間の外見と内面が表現されています。
「Awakening」2016年
「Awakening(アウェイクニング)」は、コロラド州デンバー在住のRyan ElmendorfとNick Geurtsによって制作された大規模なインタラクティブ・スチール彫刻です。
高さ約6メートルの人間の頭部と2本の手が地面から生えており、巨大な何かが自分の手を見ているように見えます。
頭部には、人が入ることができるようになっており、手を動かすことができるコントロールルームになっていたり、頭部の目を通して外を眺めることができるようになっています。
目の部分には、光学レンズが使用されていて、外からの光を集めて部屋の反対側に映像を投影するようになっています。参加者には3Dメガネが配布され、巨大なオブジェクトの遠近感や投影される映像に没入感を得ながら作品を楽しむことができます。
「Big Pollinator」2018年
「Big Pollinator(ビッグ・ポリネイター)」は、ニューヨーク在住のアーティストJakob Bokulichによって制作され、2018年のバーニングマンで展示されました。
高さ約7メートルの本作品は、花のようなモジュールがシンクロニシティを保ちながら回転する機械です。モジュールは花のような形状のオブジェクトの間の光と影が相互作用を生み出し、その回転に合わせて六角形のパターンが見えたり隠れたりし、まるで宙に浮いた蜂の巣のようにみえます。
『相互のつながり』をテーマとし、地球、気候、人間、動物、植物など私たちは皆共存し、機械の歯車のようにお互いに作用しあい繋がりを持っているということを表現しているそうです。
「Cloud Swing」2019年
「Cloud Swing(クラウド・スウィング)」は、Lindsay GlatzとCurious Formによる作品で、2019年のバーニングマンに展示された『光る雲のブランコ』です。
誰もが親しみやすく感じる『雲』をシンボルとして、子供時代を思い出すようなノスタルジックなブランコと組み合わせました。
ブランコは、誰も乗っていない間は白い光を放ち、暗闇の中に浮かぶ雲のように見えますが、使用されると色彩が変化するようになっています。
バーニングマンに参加する芸能人
バーニングマンは世界的に有名なイベントであるため多くの芸能人も参加しているようです。
過去にはケイティ・ペリーやパリス・ヒルトン、カーラ・デレヴィーニュなどが参加した様子をSNSなどで投稿していました。
バーニングマンの開催後には毎年、参加した芸能人たちの個性的な服装も注目を集めています。
まとめ
毎年夏の終わりに、アメリカネバダ州のブラックロック砂漠に1週間限定で作られる街でアートや音楽をはじめとした規格外の体験ができるフェスティバル「バーニングマン」は、世界中からその唯一無二の体験をしたい人々が集まってくるイベントとして、毎年話題になります。
通常の野外音楽フェスティバルのような商業的なイベントではなく、むしろ資本主義と対立するヒッピーの文化を根元に持ったバーニングマンで見られるアート作品は、メッセージ性やインパクト、作品の規模も特別です。
昨日スタートした2022年度のバーニングマンにはどんなアート作品が出展するのか、ぜひ注目してみてください。
参考
WIDEWALLS「30 Burning Man Art Installations」https://www.widewalls.ch/magazine/10-burning-man-festival-art-installations
iFlyer「アメリカ開催、砂漠の奇祭フェス「Burning Man(バーニング・マン)」2022年開催のチケットの詳細を発表、開催期間は8月28日〜9月5日まで」https://iflyer.tv/article/2022/02/01/burningman2022-ticket/
Tabippo「裸。砂漠。カオス。世界一周の初日、世界最大の奇祭「バーニングマン」に行ってみた。」https://tabippo.net/burningman/