経歴
キース・ヘリングは、1958年5月4日にペンシルバニア州レディングで生まれ、近くのペンシルバニア州カッツタウンで育ちました。趣味で漫画を描いていた父親から漫画の基礎知識を学び、幼い頃から絵を描くことが好きで、同世代の多くの子供たちと同様に、彼もディズニー、ドクター・スース、ルーニー・トゥーンズなどの人気アニメに憧れを抱いていました。
高校卒業後にはピッツバーグのアイビー・スクール・オブ・プロフェッショナル・アートに入学しますが、わずか2学期でグラフィック・アーティストになる気がないことを悟り中退しました。
その後、一時的にピッツバーグに残り、独学で勉強と制作を続けましたがその後、ニューヨークのスクール・オブ・ビュジュアル・アートに入学しました。
NYに引っ越してすぐに、ストリートや地下鉄のストリートアートの存在を知りました。彼は、ケニー・シャーフやジャン=ミシェル・バスキアと友人になりました。地下鉄の広告スペースにある黒板に、白いチョークで絵を描き始めました。これは、チョーク・アウトライン形式(犯罪現場で被害者の位置を書き記しするための白い線)と呼ばれる方法です。
キース・ヘリングの生、愛、性、そして死をテーマにした絵は、ニューヨークの地下鉄に乗る人たちの目に留まりました。彼は何千もの作品を制作し、自身のスタイルを確立するとともに、知名度を高めていきました。
1982年にソーホー・ギャラリーで開催された個展で注目を集め、高い評価を受けてデビューしました。その後はヨーロッパ、南米、オーストラリアなど、世界各地で数十点の壁画や作品を公開していきます。また、アンディ・ウォーホルとも友好関係があり、美術界へ頭角を表していきました。
1986年、キース・ヘリングはマンハッタンのダウンタウンに自身のアートグッズ店「ポップ・ショップ」をオープンしました。内装は彼が手がけ、Tシャツ、おもちゃ、ポスター、ボタン、マグネットなどに、彼の作品が描かれていました。彼の店は大量生産や低価格の小売商品への扉を開き、アートが商業化になる第一歩を確立しました。
自身の作品を使ってエイズの啓発活動を行っていたヘリングは、人気絶頂であった時にエイズと診断されました。1989年にはキース・ヘリング財団を設立し、エイズ関連団体への資金提供や画像の提供、エイズの治療法の発見に向けた活動を行っています。亡くなるまで作品を発表し続けましたが、1990年にエイズ関連の合併症で31歳の若さで亡くなりました。
エイズだけでなく、同性愛者でありドラッグの経験もあるキース・ヘリングは、世の中に対して「エイズ予防啓発」「LGBTQの認知」「ドラッグの禁止」「核放棄」「反アパルトヘイト」など社会的・政治的な問題をテーマとした作品を制作しました。
キース・ヘリングの代表作品
「Crack is Wack」1986年
アメリカ・ニューヨークのイースト・ハーレム地区128丁目と2番街にある壁画「Crack is Wack」は、ニューヨーク市でのクラック(コカイン)の流行とその影響を受け、警告を意図して制作されました。
当初、キース・ヘリングはこの壁画を市の許可なしに制作しましたが、その後すぐに市の保護・管轄下に置かれ、現在でも現在でも観ることができます。
「Ignorance=Fear. Silence=Death」1989年
友人や昔の恋人がエイズであることを知ったキース・ヘリングは、1987年3月12日に約300人が集まって発足されたエイズ予防啓発運動団体に参加し、HIV陽性者の権利拡大のために活動します。
キース・ヘリングは、政府、マスメディア、反同性愛を唱える宗教指導者に訴えかけるために「見ざる・聞かざる・言わざる」の三猿を彷彿とさせる目、耳、口を覆う3つの人物像とスローガンが印象的な「Ignorance=Fear. Silence=Death」を1989年に制作しました。
「Radiant Baby」1990年
キース・ヘリングのアイコン・シリーズの「ラディアント・ベイビー」は、1990年に制作されたキース・ヘリングのクラシックなスタイルを表現した作品です。
「ラディアント・ベイビー」は、キース・ヘリングの最も代表的なアイコンの一つとして彼の作品でよく見られます。
中村キース・ヘリング美術館
山梨県・北杜市小淵沢町に「中村キース・ヘリング美術館」があるのをご存知でしょうか?
ここの美術館に所蔵されている作品は中村和男氏のコレクションで、世界で唯一キース・ヘリングの作品を中心として展示している美術館です。
中村氏はサラリーマン時代、ニューヨークに出張した際に、キース・ヘリングの作品に出会いました。観た瞬間から元気をもらった氏は、少しずつコレクションを増やしていきます。その数、300点を超えたというのですから、その熱量には驚かされます。
引用:LINEトラベル
コレクションをを1人で独占するのはキース・ヘリングの考え方にも反すると、美術館を地元の山梨県に作ったそうです。
しかも併設のカフェがとてもカフェが可愛いのです!アートに興味がない方でも楽しめますね。
中村キース・ヘリング美術館は2015年春に『生命の荒々しさ』をイメージしてリニューアルオープンしました。
外壁には波動、中庭には稲妻形の壁を造って自然の地形に反響する生命力を表現した斬新な設計を楽しむこともできます。
標高1,000メートルの山奥にある当美術館の位置するエリアは、山梨県と長野県に横たわる山塊・八ヶ岳に近く、美しい自然の中で静かにキース・ヘリングの作品と向き合い、彼のエネルギーを感じることができます。
中村キース・へリング美術館
引用:中村キース・へリング美術館 https://www.nakamura-haring.com/visit/
〒408-0044 山梨県北杜市小淵沢町10249-7
TEL:0551-36-8712
開催中のキース・へリングの展覧会
キース・ヘリングは、日本でもかなり知名度が高く人気があるため、特別展・展覧会などで作品を鑑賞できる機会は比較的多くあるようです。
現在開催中の展覧会についてチェックしてみましょう。
「Keith Haring: 360°」
中村キース・ヘリング美術館にて、2021年5月15日(土)から2022年5月8日(日)まで展覧会「キース・ヘリング(Keith Haring): 360°」が開催されています。
本展覧会での注目の作品は、彫刻作品「無題(犬の上でバランスをとる人)」で、通常カラフルな作品が多いヘリングですが、本作品は珍しくシルバーのアルミ素材で作り上げられています。
人が犬に乗って遊んでいるように、あるいはバランスをとっているように、見るアングルによって違った姿に見える遊び心のある作品です。
本展覧会では、絵画や彫刻作品以外に、美術ジャーナリストの村田真が1982年12月から翌年1月にかけてニューヨークでヘリングに密着取材した際に撮影された写真群も世界で初めて公開されています。
キース・ヘリングのコラボアイテム
ポップ・アートの巨匠キース・ヘリングの作品は、世代を超えて世界中で愛され続けており、様々なブランドとのコラボ商品は常に注目を集めています。
最近のブランドとキース・ヘリングとのコラボレーションアイテムをいくつかチェックしてみましょう。
ユニクロ × キース・ヘリング
2021年6月に、ユニクロのTシャツプロジェクトであるUTは、ポップアート界のレジェンド、アンディ・ウォーホル、ジャン=ミシェル・バスキア、キース・ヘリングとのコラボレーション商品ラインを発表した。
アーティストたちのアイコニックな作品のグラフィックがプリントされたUTの他に、バッグやハンカチ、キャップ、傘、食器など日常的にアートを楽しむことができるような幅広い商品ラインナップで人気を集めました。
キプリング × キース・ヘリング
2020年10月2日(金)より、キプリングはキース・ヘリングとのコラボコレクションを販売しています。
キプリングは、キース・ヘリングのインクルーシブな生き方と、発見と繋がりの場としての都市をたたえる姿勢に共鳴し、バイスプレジデントであるデニエル・ウォルフブランドも、このコラボレーションはブランドにとって大きな意味を持つパートナーシップである語りました。
旅行用のトートバッグからナイロン製のバッグパックなど、キプリングのアイコンともいえるアイテムにキース・ヘリングのアートが鮮やかなカラーでプリントされた遊び心溢れるコレクションとなっています。
H&M × キース・ヘリング
2021年7月には、H&Mがキース・ヘリングの作品をデザインに取り入れたコラボレーションアイテムを発表しました。
商品ラインナップは、プリントTシャツやスニーカー、ジャケットなど一目でキース・ヘリングとわかる特徴的なプリントが施されたアイテムを全18型で、税込499円〜6999円という手頃な価格で販売されました。
今回のコラボレーションのルックは、アメリカ・ニューヨークのイースト・ハーレム地区にあるキース・ヘリング本人が描いた壁画「Crack is Wack」の前で撮影されました。
MoMA × キース・ヘリング
ニューヨーク近代美術館(MoMa)のキュレーターが国内外から厳選したMoMAの代表的なプロダクトや雑貨、インテリアなどを販売しているMoMAデザインストアから、キース・ヘリングの作品がデザインされたアナログインスタントカメラ「ポラロイド ナウ」が2021年8月15日(日)より販売されています。
40年前に発売されたポラロイドカメラのワンステップをオマージュし、機能性を高めた「ポラロイド ナウ(Polaroid Now)」は、キース・へリングのモノクロ作品が大胆にあしらわれたポップなデザインとなっています。
また、ポラロイド ナウと合わせて、キース・へリングの代表的な作品がフレームになる8枚入りのインスタントカラーフィルムも販売されています。
リーボック × キース・ヘリング
シューズブランドのリーボックは、2021年10月22日(金)からキース・ヘリングとのコラボレーションアイテムをリーボックストア渋谷、リーボッククラシックストア各店やゾゾタウンなどのオンラインショップで販売しました。
リーボックの1980年代のアイコンモデル3種であるクラシックレザー、クラブシー、クラブシーレガシーをベースとして、キース・ヘリングのグラフィックを取り入れた、ポップでキャッチーなコレクションとなっています。
キース・へリングのゴルフ用品
2019年より、セントラル工商がキース・ヘリングのグラフィックを採用したゴルフ用品「キース・へリング・ゴルフ」を販売しています。
商品ラインナップは幅広く、キャディバッグやトートバッグ、シューズケースといった袋物から傘やヘッドカバーまで、誰もが知るアイコニックなキース・ヘリングのグラフィックがプリントされたアイテムはゴルフ好きの老若男女に愛用されています。
価格帯は、キャディバッグが46,200円(税込)、ヘッドカバーが4,620円(税込)などと比較的手頃な値段で手に入るようです。
まとめ
私がNYに住んでいる時、キース・ヘリングの作品をよく発見しました。
彼の絵のメッセージ性や社会的に意味を知ると納得できました。わずか31年で美術界を変えた1人と言っても過言ではありませんね。
20歳の時の彼の日記からは、「人生は芸術で、芸術は人生だ」と記されていたそうです。
理想を追い求め、それを発信していく生き方に感銘を受けました。
参考
This is Media「キース・ヘリングはどんなアーティスト?彼の作品と死因について分かりやすく解説」https://media.thisisgallery.com/20209465
LINEトラベル「絶対楽しい!山梨県・小淵沢「中村キース・ヘリング美術館」」https://www.travel.co.jp/guide/article/42947/
中村キース・ヘリング美術館 https://www.nakamura-haring.com
FASHION SNAP「H&Mがキース・へリングとコラボ、アイコニックなイラストがプリントされたTシャツなどを発売」https://www.fashionsnap.com/article/2021-07-10/hm-keithharing/