草間彌生の生い立ちと芸術家としての歩み
草間彌生(以下、草間)は、長野県松本市で、種の卸商人のもとに生まれました。
草間は、10歳で絵を描き始めました。その頃からしばしば幻覚を見るようになり、大変苦しんだといわれています。しかし、この幻覚が、現在草間彌生の代表作として知られるドット作品のモチーフとなっています。
草間は専門的な絵の訓練をほとんど受けておらず、京都市の専門学校で芸術を短期間(1948年から49年)だけ勉強していました。芸術家になりたいという願望が芽生え、1957年にアメリカに移住し、アメリカ・ニューヨークに定住しました。初期の作品は、「インフィニティネット」という絵を書き始めました。
大きなキャンバス全体で何千もの小さな丸を描いたものです。その丸は、まるで無限に続くかのように構成されています。
その後、草間の作品はポップアートとパフォーマンスアートに移行しました。草間はニューヨークのアバンギャルドの中心人物となり、その作品はドナルド・ジャッド、クレス・オルデンバーグ、アンディ・ウォーホルなどのアーティストの作品と並んで展示されました。セントラルパークやMoMaの敷地で、平和の促進や芸術の確立を批判しする目的で、パフォーマンス始めました。これらのパフォーマンスの多くがヌードで表現されていたため、日本でスキャンダルを引き起こし、米国のマスコミも批判的な見解をしていました。
精神的な不調が続き、1973年日本に帰国し、入院しました。
家族や友人の支援なしに、自分が絵を描くことができないことに気づき、草間は自殺を試みました。
しかし、再度ゼロから自分自身のアートを確立することを決意しました。作品は徐々に再評価され、国内外で展覧会が開かれました。そして草間の人気は確固たるものとなり、様々な賞を受け、彼女の作品は多くの展覧会や美術館をまわっています。90歳を超える今も現役で活動を続けています。
世界中で愛される草間彌生の代表作品とその魅力
草間彌生の代表作品「南瓜(かぼちゃ)」を徹底解説
草間が「かぼちゃ」を作品に使う意味とは
幼い頃、草間は何時間もかけてカボチャの絵を描いていました。草間にとってカボチャは、安定性、快適性、そして謙虚さの象徴なのです。草間によると、かぼちゃは色も形も魅力的であるだけでなく、手触りも優しいため、好んで使っているそうです。彼女の作品にかぼちゃが登場するのは子供時代の記憶によるものです。
草間は、幼少期のトラウマを抱えていました。自分の感情や情動をコントロールするために、このカボチャという反復的なテーマを作品やインスタレーションに使い始めました。
自分の恐怖心を抑える手法を、感動的なアートへと変えてきました。
初めて「かぼちゃ」を作品に登場させる
草間が、カボチャに魅了されたのは、幼少期です。しかし、草間の作品に初めてカボチャが登場したのは、1946年に幼少期を過ごした松本で開催された巡回展に出品したときのことでした。最初の作品は、日本画で描かれています。
この作品以降、1970年代になって再びカボチャが登場するようになりました。
直島から世界へ
1994年には、瀬戸内の直島で、黄色の巨大な彫刻に黒のドット模様を施した巨大なカボチャのインスタレーションを発表しました。現在は台風の影響で展示されておりませんが、ベネッセアートサイトの桟橋の端に設置されており、水面に浮かんで周囲の風景と調和していました。
この1994年の作品を皮切りに、世界へと草間の作品が展開されました。
2000年代に入ってからは、松代駅(東京都港区)、福岡市美術館、リール・ヨーロッパ駅、ビバリー・ガーデンズ公園など、世界各地で野外インスタレーションを展開しています。草間のカボチャは、ステンレススチール、モザイク、ブロンズで鋳造されることが多いです。
草間彌生の有名なインスタレーション作品「ミラールーム」
「ミラールーム」は、草間彌生のインスタレーション作品の中でも非常に人気があります。部屋全体に鏡が配置され、無限に広がる空間が作り出されています。ドットやかぼちゃのモチーフが配置されていることが多く、訪れる人々に不思議な感覚を与えます。この作品は、ヴェネチア・ビエンナーレなどで展示され、大きな反響を呼びました。
ドットのミラールーム
1980年代に入ると、草間はドットモチーフの絵画、版画を制作していました。インスタレーション「ミラー・ルーム」などにドットを取り入れるようになりました。
「ミラールーム」は、1993年のヴェネチア・ビエンナーレの日本館にも展示されました。この時、草間は来場者に小さなカボチャを配って持ち帰らせたというエピソードもあります。
現在海外でも人気の「ミラールーム」に入ると無限にかぼちゃが置かれているよに見えるインスタレーションが体験できます。かぼちゃの中に立っていると無限のエネルギーを感じることができます。
草間彌生の代表的なシリーズ「インフィニティネット」
「インフィニティネット」は、草間彌生の作品の中でも特に有名なシリーズです。この作品は、キャンバス全体にわたって細かいネット模様が繰り返し描かれており、そのパターンが無限に続くかのような錯覚を引き起こします。草間の独自のビジョンと彼女の精神的な状態を反映したこの作品は、見る者に強烈な印象を与えます。
「インフィニティネット」の誕生背景や影響
「インフィニティネット」のコンセプトは、草間彌生の個人的な経験と心理的な状態に深く根ざしています。幼少期から幻視や幻聴に悩まされた草間は、その幻覚を作品の原動力としたそうです。草間は、「無限の網の中に自分自身が溶け込む」ような感覚を抱いていると語っており、その感覚をキャンバス上で表現することで、自分の内なる世界と向き合っているといいます。
「インフィニティネット」は、草間が1960年代にニューヨークで活動していた頃に初めて注目を集めました。当時のアートシーンで主流だったミニマリズムや抽象表現主義と共鳴しつつも、独自のスタイルを確立したため、草間の名前をアート界に広めるきっかけとなりました。このシリーズは、観る者に瞑想的な体験を提供し、草間の作品に普遍的な魅力を与えています。
「インフィニティネット」の特徴
「インフィニティネット」は、小さな円や曲線が連続して描かれ、無限に広がるような印象を与えます。これらの模様は細かく繰り返され、キャンバス全体を埋め尽くしています。草間は、筆を用いて非常に細かく、幾何学的な精度でこれらの模様を描いています。
ほとんどの「インフィニティネット」作品では、単一の色、特に白や黒のパレットが使用されています。このシンプルな色使いにより、パターン自体の複雑さと緻密さが際立って、視覚的なインパクトが強調されているのがわかります。
作品のタイトルである「インフィニティネット(Infinity Net)」からも推測できるように、草間はこのシリーズを通じて『無限性』を表現しています。網目模様が途切れなく続くことで、視覚的に終わりのない空間が創り出され、観る者に無限の広がりを感じさせるのです。
草間彌生の人気グッズ
かぼちゃストラップ
草間の代表作である「かぼちゃ」の作品をモチーフとした可愛いストラップです。ロフトでも取り扱っているようです。価格:1980円。
ドット柄の犬のぬいぐるみ
草間といえば「かぼちゃ」のイメージが強いですが、ドット柄の犬「リンリンとトコトン」も密かな人気を集めています。ゆるーい感じの2匹の犬のキャラクターに癒される人も多いかもしれません。価格:4179円。
かぼちゃ柄お財布
がま口にすることで草間彌生の「かぼちゃ」の形に似た、ふっくらとして可愛らしい商品とですね。大きさも4×11×4.5㎝となっていてちょうど使いやすいサイズ
となっています。価格:9680円。
ドキュメンタリー「≒草間彌生~私大好き」Tシャツ
2008年に公開された草間のドキュメンタリー映画「≒草間彌生~私大好き」のオリジナルグッズとして作られた下記のTシャツは、草間ワールドが全開でおしゃれなデザインとなっています。価格:4950円。
草間彌生の作品が見られる美術館ガイド
草間彌生の作品は、世界中のさまざまな美術館で展示されています。以下は、代表的な草間彌生の作品を鑑賞できる美術館です。
松本市美術館(長野県松本市)
草間の故郷である長野県松本市にある美術館「松本市美術館」では草間が手掛けたアート作品が数多く展示されています。
特に、草間の大型彫刻や、鮮やかな色彩の作品は必見です。
草間彌生の展覧会などを毎回行い、入れ替えもしているので新たな発見ができます。
松本市美術館で購入可能なグッズ
松本市美術館のグッズショップでしか取り扱っていない下記の「水玉強迫」をモチーフとした手ぬぐいも人気商品の1つです。価格:880円。
草間彌生展示会「わが永遠の魂」限定水玉ドットスマートフォンケース
2017年3月に国立新美術館の開館を記念して行われた「草間彌生 わが永遠の魂」展の会場で発売されていた下記のスマートフォンケースが大人気で、特に赤と白の水玉柄のものに関しては他のPCサイトで倍近くの値段で転売されているほどです。価格:各2963円。
草間彌生美術館(東京・新宿区)
2017年東京・新宿区に草間彌生美術館がオープンしました。年に2回、企画展が開催されており大人気の「ミラールーム」の展示もあります。建物は4Fと屋上となっており、1階と4階は撮影OKです。
草間の多様な作品やインスタレーションが展示されるため、訪れる度に新しい発見があります。
ベネッセアートサイト直島(香川県・直島)
直島は、現代アートの島として知られており、草間彌生の代表的なかぼちゃの彫刻が展示されています。黄色のかぼちゃに黒いドットが描かれたこの彫刻は、直島のシンボルとも言える存在で、多くの観光客が訪れます。自然の中に設置されたかぼちゃは、海や空と調和し、特別な雰囲気を醸し出しています。
直島かぼちゃ
香川県にあるアートの島「直島」には、皆様も存じの通り「かぼちゃ」のオブジェが島のシンボルとして展示されていました。2021年に台風被害があり、現在は展示されていません。
直島で購入できる草間彌生グッズ
直島に展示されている2つのかぼちゃのうち直島の玄関口で観光客を待ち構えている「赤かぼちゃ」をモチーフとした下記の商品も直島のベネッセハウスパークかベネッセミュージアムのミュージアムショップでしか買えない商品となっています。草間の完全監修によって作成されたもので細部まで彼女のこだわりが込められています。価格:33000円。
草間彌生 × ルイヴィトンのコラボレーション
草間彌生とルイ・ヴィトンのコラボレーションは、2012年と2023年の2回にわたり行われ、それぞれが草間彌生のユニークなデザインとルイ・ヴィトンの高級ファッションを融合させた人気のアイテムを生み出しました。
2012年のコラボレーション
初めてのコラボレーションは、ルイ・ヴィトンの当時のクリエイティブディレクター、マーク・ジェイコブスによって企画されました。マーク・ジェイコブスは、草間彌生の作品に強い影響を受けており、彼女の大胆な色使いと特徴的なドット柄をルイ・ヴィトンの製品に取り入れたいと考えていたそうです。
草間彌生の象徴である水玉模様が、バッグ、洋服、アクセサリーなどに大胆に採用されました。特に、「スピーディー」バッグや「ネヴァーフル」トートバッグが草間のドット柄で装飾され、鮮やかな赤と白、黒と白のカラーバリエーションが展開されました。また、ドット柄だけでなく、かぼちゃモチーフも一部のアイテムに使用され、独特のアートスタイルが注目を集めました。
特に「Infinity Net(無限の網)」と「Dots Infinity(無限の水玉)」の作品を用いたシリーズは大好評だったようです。バッグ価格:298000円。
引用:https://amorevintagetokyo.com/fs/amore/ao19685
このコラボレーションを記念して、世界中のルイ・ヴィトンの店舗で特別なインスタレーションが展開されました。例えば、ニューヨークの5番街店では、草間のインスタレーションが店内に設置され、多くのファッション愛好家とアートファンが訪れ、草間の作品がファッション業界とアートシーンの両方で大きな話題を呼びました。
2023年のコラボレーション
2023年には草間の独特の美学が再びルイ・ヴィトンの世界観に取り入れられ、さらに広範な商品ラインが展開されました。このコラボは、ルイ・ヴィトンの新たなクリエイティブディレクター、ニコラ・ジェスキエールのもとで実現されました。
2023年のコレクションでは、草間のアートスタイルがより進化した形で「インフィニティ ネット」や「かぼちゃ」などのアイコニックなモチーフが反映されました。カラフルで大胆なドット柄や、草間のサインがプリントされたバッグや洋服に加え、アクセサリーやジュエリーにも草間のデザインが取り入れられ、ファンに新たな魅力を提供しました。
今回のコラボレーションも世界中のルイ・ヴィトンの店舗で大々的にプロモーションされ、特別なポップアップストアやインスタレーションが設置されました。東京やニューヨーク、パリなど主要都市で行われたプロモーションでは、草間のアートとファッションの融合を体感できる空間が提供され、話題になりました。
草間彌生の師匠:ジョージアオキフ
ある日、草間が長野県松本市の書店に足を運んだところ、偶然アメリカ女流画家のジョージア・オキーフ(以下、オキーフ)の絵が目が留まったようです。
オキーフの絵に魅了され、刺激を受けた草間彌生はオキーフ本人に手紙を送ったようです。オキーフからも『是非アメリカに来るように…』と返事があったようです。そして、日本ではその才能を見出されなかった草間彌生がアメリカの地で少しずつ、実績を積んでいくのです。
ジョージア・オーキフは20世紀のアメリカを代表するアーティストの1人です。
花や風景を抽象的に描いた作品が現在でも人気を集めています。 シカゴとニューヨークで美術の基礎を学びました。
オキーフのニューヨークでの作品展示デビューを手伝った画廊オーナーであり写真家のアルフレッド・スティーグリッツとのちに結婚。 彼の死後は夏に通って絵を描いたニューメキシコ州へ移住し、98歳で亡くなるまで製作活動を続けました。 オキーフ亡き後には、晩年を過ごした土地ニューメキシコ州・サンタフェに、ジョージア・オキーフ美術館が開設され、作品や彼女の遺品が展示されています。
草間彌生が影響を受けたアーティストの絵画を集めてみましたでもあるように、およそ70年に渡るキャリアの中で、花の絵のシリーズなど数々の代表作を残しました。
まとめ
草間さんの作品を見に、長野にある松本市美術館に訪れたことがあります。ミラールームと呼ばれる作品の一つである「無限の彼方へかぼちゃは愛を叫んでゆく」を体感しました。この一室に入った瞬間、自分がどこにいるかわからなくなる錯覚を起こしました。どこまでも続いていくかぼちゃを見ていると平衡感覚がなくなっていく感覚でした。それまで、草間さんの作品は「可愛いな!」程度しか感じることができなかったけれど、草間さんのテーマである「永遠」そして「愛」の真髄を知ることができる展示でした。東京に2017年に開館された「草間彌生美術館」でかぼちゃのインスタレーションがあるので是非体感してみて欲しいです。
参考
This is media「草間彌生とは?経歴・人生について分かりやすく解説」https://media.thisisgallery.com/20187748
This is media「無限の彼方へかぼちゃは愛を叫んでゆく」https://media.thisisgallery.com/works/yayoikusama_02
Vouge「草間彌生が語る、愛とアートに生きる理由。」https://www.vogue.co.jp/lifestyle/culture/2017-02-21
アンドアート「草間彌生」https://and-art.jp/works/1
美術手帖「2019年最後のSBIアートオークションが開催。草間彌生が9000万円、ルノワールが8500万円で落札」https://bijutsutecho.com/magazine/news/market/208391