経歴
20世紀を代表する女性画家の1人であるジョージア・オキーフ(以下、オキーフ)は、1887年にアメリカのウィスコンシン州で7人兄妹の2番目の子供として生まれました。
幼いころから画家になる夢を持っていたオキーフは、高校を卒業した後、シカゴ美術研究所、ニューヨークのアート・スチューデンツ・リーグで伝統的な美術のテクニックを学びます。
在学中に、油絵の絵画作品「Dead Rabbit with Copper Pot」でアート・スチューデンツ・リーグのウィリアム・メリット・チェイス静物賞を受賞しました。
ニューヨーク滞在中、オキーフは様々なギャラリーを訪れ、ヨーロッパの前衛芸術の中心地となっていたギャラリー291にて写真家のアルフレッド・スティーグリッツ(以下、スティーグリッツ)と知り合いました。
金銭的理由により、学校を途中退学したオキーフは、その後商業デザイナー、美術講師として働きました。
1912年の夏、ヴァージニア大学で美術レッスンを受ける機会に恵まれたオキーフは、日本の絵画様式にも影響を受けた画家アーサー・ダウの革新的なスタイルを研究したことをきっかけに、新たなスタイル・方向性を見つけて抽象画を描き始めるようになります。
その後もテキサス西部で美術講師をする傍ら、抽象的な木炭素描画シリーズなどを制作し続けていたオキーフは、友人の斡旋により、ニューヨークで美術商をするスティーグリッツと再会します。
スティーグリッツは、オキーフの抽象画を高く評価し、1916年に彼女の初めての展示会を、スティーグリッツのギャラリー291で開催しました。それ以降、オキーフはアメリカで最も重要なアーティストの1人として認められるようになっていきます。
その後オキーフとスティーグリッツは恋愛関係になり、1924年、オキーフが36歳の時に結婚しました。
1929年以降、オキーフはネイティブアメリカンやヒスパニックの文化が融合する地、ニューメキシコ州を約20年間毎年夏に訪れ、新しいインスピレーションを得ながら絵を描き続けました。
1950年代以降は、ペルーの山頂や日本の富士山など海外にも旅行で訪れます。訪問先の壮大の風景を作品に投影し、新たな方向性の作品を製作しました。
70代になったオキーフは、視力障害を患うも、製作意欲は衰えることなく、時にはアシスタントの助けを借りながら絵を描き続けました。
晩年までアーティストとして活動し続けたオキーフは、1986年に98歳で亡くなりました。
アメリカを代表する初期の抽象画家の1人として、現在も国内外から人気を集めるアーティストであるオキーフの作品は、ニューメキシコ州・サンタフェにあるジョージア・オキーフ美術館に彼女の所有物とともに貯蔵されています。
ジョージア・オキーフの有名な作品
「ヴァージニア大学の円形校舎」1912〜1914年
ヴァージニア大学で、構図やデザインにおいて日本の浮世絵の抽象的な表現から影響を受けていたアーサー・ウェスレイ・ダウの元で美術を学んでいた頃のオキーフの作品です。
「ドローイング No. 8」1916年
1915年後半に抽象的な木炭素描画シリーズを完成させた頃のオキーフの作品。
オキーフが友人に送った木炭素描画を見たスティーグリッツが彼女を高く評価し、その後のニューヨークでの展示が実現しました。
「平原に映る光」1917年
テキサスに住んでいた頃のオキーフが広大な風景を題材に描いた水彩画シリーズ「パロ・デュロ・キャニオン」シリーズを代表する作品として有名なのが「平原に映る光」です。
この頃のオキーフは、感情を自由に表現する実験として多くの水彩画を描いたそうです。
「アイリスの光」1924年
スティーグリッツのサポートを受けてアーティストとしてニューヨークで活躍を始め、彼と結婚したオキーフは、花や岩のような自然の中にある物をシンプルに描くようになります。
オキーフの作品シリーズでも特に有名なのが、1920年代の半ばから制作した花を主題とした抽象画シリーズ「フラワー・ペインティング」で、約200点も花を描いた作品を残したそうです。
「シェラトンホテルと太陽の光」1926年
ニューメキシコへ移る前に、ニューヨークのシェラトンホテルの部屋に移ったオキーフは、ニューヨークの超高層ビルを題材としたシリーズを描くようになります。
光や空の表現が美しく印象的です。
「サマー・デイズ」1936年
ニューメキシコ州に毎年通い、ついには移住するようになったオキーフは、その砂漠から動物の骨や岩を拾ってはそれらを題材に絵を描きました。
特に有名な「サマー・デイズ」は、鹿の骨と花を砂漠の中に描くことで生と死を表現したといわれています。
自宅に飾りたい!ジョージア・オキーフのアートポスター
自宅に気軽にインテリアとして飾るなら、アートポスターを購入するのも一つの手です。
ジョージア・オキーフのアートポスターも、MoMa(ニューヨーク近代美術館)などの美術館や、アートポスターを扱うオンラインショップなどで購入することができます。
価格帯は様々ですが、中には1000円代からのお手軽な価格で見つけることができるショップもありました。
ジョージア・オキーフ・ミュージアムの公式ウェブサイトのオンラインストアでは、フレームやサイズなどをカスタマイズしてオーダーすることも可能なので、オススメです。
ジョージア・オキーフの画集や本
「One Hundred Flowers」1987年
1920年代に描いた花を題材にした絵のシリーズが有名なオキーフの、花の絵画100点を収録した画集です。
「Georgia O’Keeffe / John Loengard: Paintings and Photographs」2016年
1966年に写真家のジョン・ローエンガードは、雑誌の撮影のため当時79歳だったオキーフの私生活を3日間観察しながら写真を撮りました。
50枚ほどのオキーフのモノクロ写真と、彼女の作品を並べた本になっています。
「Georgia O’Keeffe at Home」2017年
オキーフの作品と合わせて、家や友人や家族の写真なども紹介している本です。
ジョージア・オキーフ美術館
アメリカ・ニューメキシコ州サンタフェにあるジョージア・オキーフ美術館は、1997年にアメリカで初めての女性画家の個人美術館として開館しました。
美術館は2階建てになっており、1階展示室と売店があり、2階はオフィススペースになっているようです。
1000点を超えるオキーフの作品のみならず、オキーフが愛用した絵の具や筆などの画材、色見本が展示されていたり、オキーフに関するドキュメンタリーを観ることができるようです。
ジョージア・オキーフの作品がある日本・海外の美術館は?
前述したサンタフェにあるジョージア・オキーフ美術館以外で、オキーフの作品はどこで観ることができるのでしょうか?
収蔵作品と合わせてピックアップしてみました。
ジョージア・オキーフの作品を展示している美術館(日本)
東京国立近代美術館
「タチアオイの白と緑―ペダーナル山の見える」1937年
ジョージア・オキーフの作品を展示している美術館(海外)
MoMa(ニューヨーク近代美術館)
「Lake George, Coat and Red」1919年
フィリップス・コレクション
「Large Dark Red Leaves on White」1925年
メトロポリタン美術館
「牛の骸骨、赤・白・青」1931年
シカゴ美術研究所
「赤と白い貝」1938年
ワシントン・ナショナル・ギャラリー
「Jack-in-Pulpit Abstraction – No. 5,」1930年
ツアーで訪問できる!ジョージア・オキーフの家
オキーフは晩年を過ごしたニューメキシコ州に、オキーフはニューメキシコ州に、ゴーストランチの家とアビキューの家の2つを持っていました。
豊富な自然光が差し込む家には、シンプルでミニマルなモダン家具が並び、家の周りや中庭にはオキーフが集めていたであろう石やエルクの角などがあります。
オキーフの家は、事前に予約してツアーに参加することで見学することが可能だそうです。
ジョージア・オキーフの名言
アメリカの近代美術史の中で最も有名な女性アーティストとして多くの作品を残したジョージア・オキーフ。
人生や作品作りに反映されたオキーフの価値観を感じる名言をいくつか紹介します。
To create one’s world in any of the arts takes courage.
どんな芸術分野であれ自分の世界を創り上げるには勇気がいるのよ。I feel there is something unexplored about woman that only a woman can explore.
女性にしか探れない女性的なものがあると思うのです。Nobody sees a flower really; it is so small. We haven’t time, and to see takes time – like to have a friend takes time.
引用:tsuputon’s blog「英語の名言:女性にしか探れない女性的なものがあると思うのです(ジョージア・オキーフ)」https://tsuputon7.hatenablog.com/entry/2018/06/09/110809
実際に花を見る人は誰もいません。それはあまりに小さいからです。私たちには時間がないし、見るには時間がかかる。友人一人持つのにも時間がかかるように。
まとめ
日本を代表する現代アーティスト、草間彌生のドキュメンタリー映画「KUSAMA – INFINITY」によると、オキーフは赤の他人であった日本人画家の草間から手紙を受け取った際、親切に返信し、草間の渡米とアメリカでの活動をサポートをしたそうです。作品の美しさだけでなく、海外からのアーティストにも手を差し伸べた素晴らしい人柄が伺えますね。
私は、ニューヨークの近代美術館MoMaで観た、花を題材にした印象的な作品に惹かれたことがきっかけでジョージア・オキーフの存在を知り、彼女の作品のファンなりました。
ずっと行きたいと思いつつも、ニューヨークから遠いため、まだニューメキシコ州のジョージア・オキーフ美術館には行ったことがありません。
グーグルマップで確認したところ、私の大好きな人気ドラマ「ブレイキング・バッド」の舞台として知られるアルバカーキも近いことが判明!次の国内旅行の目的地の1つに追加しました。
彼女の作品が好きな方は、是非アメリカでの訪問先の候補に入れてみてはいかがでしょうか?
参考
ジョージア・オキーフ・ミュージアム:https://www.okeeffemuseum.org/
サザビーズ 「Georgia O’Keeffe」https://www.sothebys.com/en/artists/georgia-okeeffe#past-lots
Phillips「Elizabeth Goldberg in Conversation with Theresa PapanikolasVisit」https://www.phillips.com/article/54831752/tca-elizabeth-goldberg-theresa-papanikolas-georgia-o-keeffe-seatle-art-museum
Overnight New York「The New York Hotel You’ve Never Heard Of That Inspired Georgia O’Keeffe’s Skyscraper Paintings」https://overnightnewyork.com/hotel-history/the-new-york-hotel-youve-never-heard-of-that-inspired-georgia-okeeffes-famous-skyscraper-and-cityscape-paintings/
最高落札額は2014年に販売された「Jimson Weed/White Flower No.1」で約48億4,014万円を記録しました。他の作品の販売価格を見ると、大体が数億円で取引されています。