【特別展】日本の風景を描く―歌川広重から田渕俊夫まで―:山種美術館で開催中!
2022年12月10日(土)から2023年2月26日(日)まで山種美術館で開催している「【特別展】日本の風景を描く―歌川広重から田渕俊夫まで―」では、日本の夕景や自然を題材にした作品に焦点を当て、江戸時代から現代までの画家たちが描いた作品をキュレーションして展示しています。
「東海道五十三次」などに代表される歌川広重の作品の他には、川合玉堂や田渕俊夫、石田武、黒田清輝の作品までが展示され、多くの風景画の巨匠の作品を一挙に鑑賞することができます。
【特別展】日本の風景を描く―歌川広重から田渕俊夫まで―
会期:2022年12月10日(土)~2023年2月26日(日)
https://www.yamatane-museum.jp/exh/2022/landscapes.html
会場:山種美術館
主催:山種美術館、朝日新聞社
協賛:SMBC日興証券株式会社
開館時間:午前10時~午後5時 (入館は午後4時30分まで)
休館日:月曜日
入館料:一般1300円、中学生以下無料(付添者の同伴が必要です)、障がい者手帳、被爆者健康手帳をご提示の方、およびその介助者(1名)一般1100円
冬の学割 大学生・高校生500円 ※本展に限り、入館料が通常1000円のところ特別に半額となります。
※きもの特典:きものでご来館のお客様は、一般200円引き、大学生・高校生100円引きの料金となります。
※複数の割引・特典の併用はできません
歌川広重の経歴
歌川広重(以下、広重)は、1797年(寛政九年)に、江戸八重洲河岸の定火消同心 源右衛門の長男として生まれました。本名は、安藤重右衛門です。
1809年(文化六年)に当時13歳で両親を亡くした広重は、家業である火消を継ぐことになりましたが、幼い頃から絵を好んでいたこともあり、1811年(文化八年)頃に浮世絵師である歌川豊広に弟子入りします。
「広重」の名は画号(絵師としての名前)で、師匠である歌川豊広から『広』、自身の本名の重右衛門から『重』を1字ずつ取って名付けられました。
その後、家業は身内に譲り、絵師としての仕事に専念するようになった広重は、1833年(天保四年)頃、東海道の宿場とその周りの風景を抒情的に描いた風景版画(『名所絵』)である、「東海道五十三次」を刊行します。
江戸時代当時は、お寺や神社にお参りする旅をするのが流行していたそうで、広重の作品は瞬く間に注目を集め、一躍人気絵師となりました。
その後も、「名所江戸百景」「富士三十六景」などのさまざまな名所絵のシリーズを手がけたほか、花鳥画や美人画、戯画作品など様々なジャンルの浮世絵版画の作品を制作しました。
1858年(安政五年)9月6日、62歳の時に、広重晩年の傑作である「名所江戸百景」の制作途中で亡くなりました。
広重の作品は、その構図や色使いが海外の画家たちからも高く評価され、多くの影響を与えたとして知られています。
歌川広重の代表作品
「東海道五十三次」1833年ごろ
代表作である「東海道五十三次」は、広重が人気絵師となったきっかけになったシリーズです。
東海道とは、江戸時代に徳川家康が作った五街道のうちの1つであり、現在の東京から京都あたりまでの区間とその間にある53の宿場を旅してその景観や習俗を描いたのが「東海道五十三次」です。
日本橋や富士山、箱根の急勾配な山や芦ノ湖などの四季折々の風景や、イキイキとした旅人たちを描いたこのシリーズは、保永堂版をはじめとしてその後諸版元から出版され、行書版や隷書版が中でも評価が高いものだそうです。
現在では、「保永堂版 日本橋」「狂歌入日本橋」「隷書版日本橋」などがアメリカのメトロポリタン美術館、「行書版日本橋(山田屋版)」がアメリカのボストン美術館、「有田屋版日本橋」がアメリカ、ハワイ州のホノルル美術館などにて所蔵されています。
「富士三十六景」1852年〜
「富士三十六景」は、富士山をテーマに制作された浮世絵風景画36作品のシリーズです。初版は1852年(嘉永5年)に出版されました。
現在の東京、山梨県、神奈川県、静岡県など、さまざまな角度から見た四季折々の富士山を臨む情景が色彩豊かに表現されています。
葛飾北斎の「富岳百景」を参考にした構図が用いられているのではないかという説もあるそうです。
「名所江戸百景」1856〜1858年
広重最晩年の作品である「名所江戸百景」は、浮世絵師の歌川広重が1856年2月から1858年10月(安政3年〜5年)にかけて制作した浮世絵名所絵のシリーズ作品です。
江戸末期の名所図会の集大成ともいえる作品で、幕末から明治にかけて活躍した図案家梅素亭玄魚の目録1枚と、119枚の図絵で構成されています。
何気ない江戸の風景を斬新な構図を用いて表現しており、当時のベストセラーとなったそうです。
西洋画家のフィンセント・ファン・ゴッホが「大はしあたけの夕立」や「亀戸梅屋舗」を模写したことや、ジェームズ・マクニール・ホイッスラーが「京橋竹河岸」からインスピレーションを得て「青と金のノクターン オールド・バターシー・ブリッジ」を描いたことなどがよく知られており、『ジャポニズム』の代表作として西洋画家達に大きな影響を与えました。
ゴッホなどの西洋画家が影響を受けた『ヒロシゲブルー』
歌川広重と葛飾北斎は、共に江戸時代を代表する浮世絵師として名を馳せましたが、国内のみならず、海外からも高い評価を得ていました。
特にその青や藍色の鮮やかで深い色使いから『ジャパンブルー』あるいは『ヒロシゲブルー』『ホクサイブルー』と呼ばれ、フランスの印象派画家やアール・ヌーボーの芸術家たちに多大な影響を与え、ジャポニズムのきっかけとなりました。
実は、この二人の浮世絵師が用いた藍色は日本産ではなく、18世紀初頭にドイツの塗料技師によって原料の調合のミスから奇跡的に生まれた『ベルリン藍(ベロ藍)』が用いられていたのだといいます。
『ベルリン藍』は生まれてから約1世紀後にオランダ戦により長崎に辿り着き、安価で濃淡を表現しやすい、浮世絵版画にぴったりの塗料だったのだそうです。
まとめ
葛飾北斎と並んで江戸時代を代表する浮世絵師として活躍し、西洋美術界にも影響を与えた歌川広重。
「東海道五十三次」や「富士三十六景」などの有名シリーズでは、日本の当時の美しい風景が色鮮やかに描かれており、魅力的です。
2022年12月10日(土)から2023年2月26日(日)まで山種美術館で開催している「【特別展】日本の風景を描く―歌川広重から田渕俊夫まで―」にも、ぜひ足を運んでみてはいかがでしょうか。
参考
静岡市東海道広重美術館「歌川広重と浮世絵」https://tokaido-hiroshige.jp/outline/utagawa-hiroshige.html
読売新聞オンライン「」https://www.yomiuri.co.jp/column/japanesehistory/20210614-OYT8T50079/3/
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