【フランク・ステラ】代表作「ブラック・ペインティング」や鑑賞できる美術館、オークションでの相場など

Frank Stella
アーティスト紹介
フランクステラ

DATA

ニックネーム
ミニマリズムの先駆者
作者について
フランク・ステラは、「ブラック・ペインティング」シリーズなどが有名なアーティストで、戦後のアメリカ美術がミニマリズムに向かう流れを作った人物として知られています。

現在の値段

約31,490,382円(直近36ヶ月の平均落札価格)

2021年「Takht-i-Sulayman Variation I」約398,605,528円(サザビーズ)304.8 x 609.6 cm
2022年「Anderstorp (XI, 3X)」約65,270,973円(サザビーズ)180.3 x 203.2 x 31.8 cm ※立体作品のため、チャートには反映されていません。
2022年「Cinema de Pepsi III」約760,676,760円(クリスティーズ)175.6 x 350.8 cm
2023年「River of Ponds I-IV」約27,482,515円(クリスティーズ) 96.5 x 96.5 cm

フランク・ステラの作品は、アートオークションにて定期的に数億円単位の価格で取引されています。
日本国内に流通しているステラの作品は、シルクスクリーンやリトグラフなどの版画作品が多い傾向にあります。また、コラージュのある作品は評価が高くなる傾向にあるようです。
フランクステラ オークション落札価格

フランク・ステラの経歴

戦後のアメリカのミニマルアート、抽象画で知られる画家・彫刻家のフランク・ステラFrank Stella:以下、ステラ)は、1936年5月12日にアメリカ・マサチューセッツ州のボストン郊外の街モールデンに生まれました。

ステラは、高校生の時に、当時教師だった抽象表現主義者のパトリック・モーガンから絵を習ったことがきっかけとなり、絵を描き始めたといいます。

高校卒業後は、アメリカの名門校であるプリンストン大学に進学します。在学中に教授である画家のスティーブン・グリーンと美術史家のウィリアム・ザイツからニューヨークの美術について学んだことが、ステラの初期の芸術的美学を形成したそうです。

大学を卒業した後は、22歳の時にニューヨークに移り、マンハッタンのロウアーイーストサイドのスタジオを拠点としてアーティストの活動を始めます。

初期のステラは、単色、平面的な表現を追求し、厚みのある抽象表現主義からの脱却を表現したこのスタイルは世界的に注目されました。

ジャスパー・ジョーンズやバーネット・ニョーマンの作品にインスピレーションを受け、色・形を極端に抑えたストライプを描く「ブラック・ペインティング」を制作しはじめます。「ブラック・ペインティング」シリーズは、家庭用の刷毛を用いてフリーハンドで描かれたため、近寄ってよく見ると若干の不規則さを発見できますが、手書きの質感は極力出さないように表現されていることがわかります。

絵というよりも単なる物体と捉えられるような作品について、ステラは、『絵画とは絵具ののった平面である。それ以上でも以下でもない。』と語ったといいます。

ステラのスタイルや作品に対する考え方は、ミニマリズムの考え方の基礎となる重要な要素となりました。

また、ステラはジャズ好きだそうで、大学時代にアメリカの初期のジャズのレコードを集めていたそうです。ジャズの特徴である強い拍と弱い拍の位置をイレギュラーに変えて、リズムに変化を与えることで本来の整ったリズム進行から逸脱する『シンコペーション』を好み、これを「Hyena Stomp」などの作品でも表現したといいます。

1960年ごろから、ステラはアルミニウムや銅の絵画を制作し始めます。初期の頃に制作していたストライプをモチーフとしたものから始まり、徐々に複雑な円形やポリゴンをモチーフとする作品を制作するようになっていきました。

1970年には、凹凸のあるレリーフ状の絵画を多く制作し、MoMA(ニューヨーク近代美術館)にて回顧展を当時最年少で開催しました。この頃に、「エキゾチック・バード」「インディアン・バード」「サーキット」などのシリーズを次々と発表しています。

1980年代以降は、大きく作風が変わります。それまでの自身の作品をカラフルかつ多面的に拡張し、彫刻、木版印刷、エッチングなど多様なプロセスで構成された、まるで建築プロジェクトのような立体的でダイナミックな作品を発表しました。

また、1980年代の終わりからは建築分野にも積極的に携わり、ヨーロッパ各地で建築プロジェクトに関わりました。

2009年に、ステラはアメリカ合衆国政府からアーティストや講演者に授与される最も栄誉ある勲章のひとつで、アメリカ国民芸術勲章(National Medal of Arts)を受章しています。ステラが初期に影響を受けたアーティスト、ジャスパー・ジョーンズもこの賞を受賞しています。

そして2010年代には、さらにスタイルを変え、3Dプリントの彫刻を制作するようになります。初期に「ブラック・ペインティング」シリーズでヒットしてからも、アーティストとしての芸術の探求を続け、進化し続けているステラの姿勢からは、芸術への愛が感じられます。

ステラの作品は、アメリカのシカゴ美術館、ワシントンDC国立美術館や、イギリス・ロンドンのテートギャラリーなど、世界的に有名な美術館に収蔵されています。

フランク・ステラの代表作

「トムリンソン・コート・パーク(第二バージョン)」1954〜55年

フランクステラの代表作といえば、まず彼が大学卒業後に制作し始めた「ブラック・ペインティング」シリーズでしょう。

このシリーズのうちの1つが、「トムリンソン・コート・パーク(第二バージョン)」です。

「ブラック・ペインティング」シリーズは、なんと家庭用の刷毛で描かれているのですが、見事に均等で無機質に描かれていて、本来の描かれた『絵画』という印象を受けません。

この作品は、DIC川村記念美術館に所蔵されています。

「ゲッティ廟」1959年

同じく「ブラック・ペインティング」のうちの1点として「ゲッティ廟」も有名な作品です。

本作品は、大阪中之島美術館に所蔵されています。

限られた色、形のみで構成された「ブラック・ペインティング」は、ミニマル・アートの先駆けといえるでしょう。

「グラン・カイロ」1962年

1962年に制作された「グラン・カイロ」は、217.3cm四方の正方形のキャンバスにアルキド塗料で描かれた作品です。

代表作「ブラック・ペインティング」シリーズから、カラフルで立体的な作品へとスタイルが移り変わっていく過渡期の作品として、「ブラック・ペインティング」と比較すると同じような構造であるにも関わらず、色鮮やかで各色の四角形を重ねたようなやや立体的な構図に見えます。

ニューヨークのホイットニー美術館に所蔵されています。  

「アカハラシキチョウ5.5X」1979年

「ブラック・ペインティング」シリーズとは大きくスタイルが変わります。

1979年に制作された「アカハラシキチョウ5.5X」は、金属パイプやアルミニウム版で作られた作品で、ステラ自身は『壁にかけられる作品』なので『絵画』とカテゴライズしています。壁から90cmほど飛び出す構造になっており、インパクトのある作品です。

作品のタイトル『アカハラシキチョウ(Shāma)』は、ステラがインドに滞在していたときに手に入れた鳥の本から取ったのだそうです。

本作品も、DIC川村記念美術館に所蔵されています。  

フランク・ステラの作品を鑑賞できる美術館

ステラの作品は、アメリカのシカゴ美術館、ワシントンDC国立美術館や、イギリス・ロンドンのテートギャラリーなど、世界的に有名な美術館にも収蔵されていますが、日本でも鑑賞することができます。

DIC川村記念美術館

千葉県佐倉市にあるDIC川村記念美術館は、DIC株式会社が関連企業とともに収集してきた美術品コレクションを公開している美術館で、1990年5月にオープンしました。

レンブラントが描いた肖像画や日本で人気の高い印象派の作品などのような西洋の近代美術から、20世紀後半のアメリカ美術まで、多彩なコレクションの他、四季折々の美しい自然に囲まれた環境、戦後モダニズムの代表的建築家・海老原一郎によって造られた、作品にふさわしい空間を表現した素晴らしい建築を楽しむことができます。

DIC川村記念美術館には、上記で代表作として紹介した「トムリンソン・コート・パーク(第二バージョン)」や「アカハラシキチョウ5.5X」の他、「ヒラクラ Ⅲ」「ベックホーフェンⅢ」など、多くのステラの作品を楽しむことができます。

DIC川村記念美術館

所在地:〒285-8505 千葉県佐倉市坂戸631
電話:050-5541-8600(ハローダイヤル)
入館料:来館時の展示内容によって変わります。近日の展覧会については、こちらをご覧ください。
開館時間:9:30 – 17:00
休館日:月曜日 ※祝日の場合は開館し、翌平日に休館、年末年始、展示替え、メンテナンス期間

https://kawamura-museum.dic.co.jp/information/

まとめ

フランク・ステラは、戦後のアメリカにおいて最も影響力のあるアーティストの一人として、1950年代後半から1960年代前半にかけて、抽象表現主義を超えて、ミニマリズムに向かう流れを作った人物だとも言われています。

代表作「ブラック・ペインティング」から、3Dプリントの彫刻まで、ダイナミックにスタイルを変え続け、革新性のあるアーティストとして活躍してきました。

参考

Wikipedia フランク・ステラ

DIC川村記念美術館 https://kawamura-museum.dic.co.jp/

Artsy https://www.artsy.net/artist/frank-stella/auction-results

画像引用元:https://unframed.lacma.org/2019/07/17/highlights-%E2%80%9Cfrank-stella-selections-permanent-collection%E2%80%9D https://www.themodern.org/exhibition/frank-stella-retrospective

ABOUT ME
あやね
2018年にアメリカ NYへ移住した、京都生まれの大阪人。日本の伝統工芸が持つ独特で繊細な美しさが好きで、着物や器を集めている。郊外の家に引っ越したことをきっかけに、アート作品やアンティーク家具を取り入れたインテリアコーディネートにも興味を持ち始める。アメリカで日常生活に様々な形でアートを取り入れる人々に出会い触発され、2021年より趣味で陶芸をはじめる。