【ジャスパー・ジョーンズ】旗や標的などの代表作やオークションでの落札価格など

Jasper Johns
アーティスト紹介
ジャスパージョーンズ

DATA

ニックネーム
ネオ・ダダの旗手
作者について
ジャスパー・ジョーンズは、20世紀のアメリカで最も影響力を持った画家の一人として知られています。ネオ・ダダやポップアートの先駆者としても活躍しました。「旗」「標的」シリーズのような代表的な絵画作品の他に版画や彫刻なども制作しています。

現在の値段

約¥50,208,000(直近36ヶ月の平均落札価格)

2021年「Bushbaby」¥137,091,375(サザビーズ)
2022年「Numbers」¥2,296,623,750(クリスティーズ)

ジャスパー・ジョーンズの作品は、Artsyによると直近36ヶ月の平均落札価格は約¥50,208,000と、頻繁に高値で取引されているようです。
オークションジャスパージョーンズ

ジャスパー・ジョーンズのプロフィール

ネオ・ダダやポップ・アートの代表的なアーティストとして知られるジャスパー・ジョーンズJasper Johns)は、1930年5月15日にアメリカのジョージア州オーガスタで生まれ、サウスカロライナで育ちました。

幼少期から絵を描き始めたジョーンズは、5歳の頃から芸術家になりたいと思うようになったといいます。1949年にニューヨークに移住した後、さまざまな美術展覧会を鑑賞して感化され、パーソンズ・スクール・オブ・デザインに1学期だけ通いました。

その後朝鮮戦争が起こったため徴兵されて陸軍に入隊し、サウスカロライナと仙台に駐留しましたが、1952年に除隊し、1954年頃から国旗、数字、標的などをテーマにした絵画を制作するようになります。

ニューヨークに戻った後は、ネオ・ダダを代表するアーティストであるロバート・ラウシェンバーグや、作曲家のジョン・ケージ、振付家のマース・カニングハムと親交を深めました。

1950年代半ばから後半にかけて、ジョーンズはポップ、ミニマル、コンセプチュアル・アートなどの新しいスタイルを生み出し、その後に起こる多くの芸術運動に影響を与えたそうです。これらの新しいスタイルは、少し前の世代に主流であった表現主義的な抽象画と対立するものだと理解されています。

1958年に、美術商のレオ・カステリがジョーンズと親交の深かったラウシェンバーグのアトリエを訪れた際にジョーンズの才能を見出したことから、カステリはジョーンズの初個展を企画しました。本個展では、MoMA(ニューヨーク近代美術館)の館長アルフレド・バルがジョーンズの作品を4点購入したそうです。

1960年代には、コラージュや版画、オブジェを絵画に組み合わせた作品も制作するようになります。

ジョーンズは1960年にヴィンセント・ファン・フォルクマー賞を受賞し、1963年にニューヨークで、作曲家のジョン・ケージらとともに現代パフォーマンス芸術財団(現在の現代美術財団)を創設しました。

1970年代にはフラッグ・ストーン(敷石)やクロス・ハッチ(網目)を文様のように描いた抽象絵画、1980年代には人のシルエットなどのような新しいモチーフを取り入れた「四季シリーズ」を制作しています。

2012年までニューヨークのストーニーポイントにあるガラス張りのスタジオを備えた1930年代様式の素朴なファームハウスに住んでいましたが、その後コネチカット州やセント・マーチン島に住み現在も制作を続けているそうです。

ジャスパー・ジョーンズの代表作品

「旗」「標的」などのシリーズで知られているジャスパー・ジョーンズの代表作品を紹介します。

「旗(Flag)」シリーズ

「旗(Flag)」1954〜1955年

自身も陸軍に入隊した経験のあるジョーンズは、旗をモチーフとした作品を制作したことで最も知られているのではないでしょうか。

星条旗の絵を描く夢を見たというジョーンズは、そのインスピレーションをもとにキャンバス全体に星条旗を描いた本作品を制作したといいます。

1958年に、美術商のレオ・カステリが開催した個展で発表され、MoMA(ニューヨーク近代美術館)の館長アルフレド・バルによって購入されました。

着色した蜜蝋を溶融し、表面に焼き付ける絵画技法であるエンカウスティーク(蝋画:ろうが)を用いて描かれた本作品には、絵の具を塗った筆跡を残っているのがわかります。

よく見ると、星条旗のボーダー柄の下には蜜蝋で塗り固められた新聞紙がコラージュされています。

「ホワイトフラッグ(White Flag)」1955年

1954年から制作を始めた有名な旗のシリーズの一部である「ホワイトフラッグ」は、清浄機の特徴的なカラーである赤白青を消し去り、1色で描かれており、奇妙な雰囲気を感じさせますが、より蜜蝋の凹凸やコラージュのテクスチャーが重層化されて見えます。

国のシンボルである国旗を違ったイメージで描くことでアメリカという国のアイデンティティに問いかけるようなメッセージ性を感じます。

「スリーフラッグス」1958年

「スリーフラッグス」は3つの星条旗をそれぞれキャンバスに描いてから、重ねて構成されているため、奥行きを感じ、じっくりと見入ってしまう作品です。

エンカウスティーク(蝋画:ろうが)を用いて描かれているため、個別の筆跡の集積が、まるで彫刻のようなテクスチャを表面に生み出しています。3枚の旗はそれぞれ約25%ずつ縮小されて重なっており、こちら側への立体感を感じます。

本作品には、抽象と表象の境界を探っているかのような表現が感じられます。

「標的(Target)」シリーズ

「4つの顔のある標的(Target with Four Faces)」1955年

「4つの顔のある標的(Target with Four Faces)」は、標的(ターゲット)の上に立体的な人の頭部のオブジェが配置されていることが特徴的です。標的や背景には黄、青、赤というヴィヴィッドな色合いが用いられており、二次元的な絵画にも空間性を感じるような作品となっています。

「石膏の型のある標的(Target with Plaster Casts)」1955年

「石膏の型のある標的(Target with Plaster Casts)」は、オブジェの制作の際に型取りに使った型をカラフルに着色して、標的の絵画と構成している作品です。

標的(ターゲット)は、通常人が目指すものの象徴で機能的であるものの、ジョーンズの標的シリーズにおいては、ターゲットはあくまでデザインのように美的に彩られたものとなり、さらに身体の一部を模した石膏像の型は、大量生産への批判的なメッセージを発信しているようにも感じられます。

地図(Map)シリーズ

「地図(Map)」1961年

ジョーンズは、親交の深かったロバート・ラウシェンバーグからアメリカの地図を贈られたことがきっかけとなり、「地図(Map)」シリーズの作品を制作するようになりました。

地図に絵の具で着色した後にキャンバスを立てることで、流れた絵の具の跡を残しているのが見られます。これは、当時影響を受けたアーティストの一人である作曲家ジョン・ケージが『自然性の音楽を生み出していた』ことからの影響を受けていると言われています。

「地図(Map)」1967〜1971年

キャンバスは、思想家・デザイナーであったバックミンスター・フラー考案のダイマクション地図の展開図をキャンバスとして制作されたのが作品で、ジョーンズはニューヨーク、マンハッタンにあるアトリエにて5年の歳月をかけて制作したそうです。

数字(Numbers)シリーズ

「白色の数字(White Numbers)」1958年

上記で紹介した旗や標的の他に用いられたモチーフとして、数字があります。

数としての意味ではなく、数字それぞれの文字としての形に着目し、作品に反映しました。

「白色の数字(White Numbers)」では、ステンシルを使って数字の型を用い、蜜蝋を使ったエンカウスティークの手法により、形が浮き上がって見えるようになっています。

「0〜9(0 through 9)」1961年

「0〜9(0 through 9)」は、数字を配列せずに、重ねていくことで、数字の形体を象徴的に描いた作品です。

数字同士の輪郭が交差している部分を区切り、コントラストのある色を入りすることで、重なった数字それぞれが微妙に浮き上がりながらも混ざって見えるのが面白い点でしょう。

「フォルス・スタート(False Start)」1975年

「フォルス・スタート(False Start)」は、地図シリーズと同様に、ステンシルされた文字などが斬新に重なった表現が用いられた作品です。

本作品では、用いられている色の単語と印刷されたインクを不一致にすることで、言語と視覚を対立させており、鑑賞者の観る者の混乱を誘います。

ジョーンズの作品の中で、最も希少価値が高い作品の一つです。2006年のサザビーズでのオークションで78億円という高値で落札されて、大きな話題になった作品でもあります。

まとめ

ニューヨークの近代美術館(MoMA)で観ることができるジャスパー・ジョーンズ「旗」が印象に残っています。

「旗」のコラージュされている新聞の内容は、国家や政治に関するニュースをではなくまったく重要でない記事や広告があえて選ばれているなど、誰もが知っているモチーフを作品の中心としながらも、強いメッセージが込められていることがわかります。

参考

The met museum – Jasper Johns https://www.metmuseum.org/toah/hd/john/hd_john.htm

NEW ART STYLE「5分でおさらい、ジャスパー・ジョーンズの代表作を解説」https://media.and-art.jp/art-studies/popart/about-jasper-johns/

Artsy https://www.artsy.net/artist/jasper-johns/auction-results

画像引用元:https://denisbloch.com/artworks/artists/jasper-johns/flag-moratorium-2/ https://www.artbasel.com/stories/jasper-johns-art-basel-miami-beach-magazine

ABOUT ME
あやね
2018年にアメリカ NYへ移住した、京都生まれの大阪人。日本の伝統工芸が持つ独特で繊細な美しさが好きで、着物や器を集めている。郊外の家に引っ越したことをきっかけに、アート作品やアンティーク家具を取り入れたインテリアコーディネートにも興味を持ち始める。アメリカで日常生活に様々な形でアートを取り入れる人々に出会い触発され、2021年より趣味で陶芸をはじめる。