【カスパー・ダーヴィト・フリードリヒ】国立西洋美術館の企画展情報や代表作品、経歴を紹介

Caspar David Friedrich
アーティスト紹介
Caspar David Friedrich

DATA

ニックネーム
死の画家
作者について
ドイツのロマン主義を代表する画家・カスパー・ダーヴィト・フリードリヒは、宗教的な要素を表現した風景画で知られています。「海辺の僧侶」や「山上の十字架」などが有名な代表作品で、幻想的ながらも少し暗く重々しい雰囲気のある絵画が特徴的です。

現在の値段

約14,778,253円(号単位)

2016年「Baumstudie」¥8,653,582(Koller Auktionen)
2017年「Selbstbildnis」¥9,036,355(Grisebach)
2018年「LANDSCHAFT MIT GEBIRGSEE, MORGEN (LANDSCAPE WITH MOUNTAIN LAKE, MORNING)」¥411,087,016(Sotheby's)

日本国内での落札価格については公開されることがほとんどないため、取得不可能でしたが、海外のオークションにおいては、2018年のサザビーズのオークションで、「山間の湖の風景、朝」が日本円で約3億円で落札された他、「リューゲンのアルコナ岬の眺め」も日本円にして約5,600万円で落札されています。

20世紀になって再注目されたフリードリヒの作品は、かなり高額で取引がされています。
フリードリヒ オークション結果

フリードリヒの経歴

カスパー・ダーヴィト・フリードリヒ
引用:Famous Painters「Caspar David Friedrich」https://www.famouspainters.net/caspar-david-friedrich/

カスパー・ダーヴィト・フリードリヒ(以下、フリードリヒ)は、18世紀から19世紀のドイツのロマン主義を代表する、宗教画のような雰囲気の風景画家として知られています。

フリードリヒは、1774年に当時スウェーデン領だったドイツの最北端のフォアポンメルン・グライフスヴァルトにて石鹸・ろうそく業を営む両親の元に10人兄弟の6番目、4男として誕生しました。

幼少期に妹を亡くし、13歳の時には氷の張った川でスケート遊びをしていた際に溺れたフリードリヒを助けようとした弟・クリストファーが亡くなってしまいます。

フリードリヒは弟を犠牲にしてしまった自分自身を責め続け、うつ病に苦しみ、大人になってからも自殺未遂を起こしたこともあったといいます。

その他にも母や姉を相次いで亡くしてしまうなどの悲劇が続いたそうです。

このように幼い頃から、身の回りで不幸が相次いだことが、彼の画風や人格に多大な影響を与えていると言われています。

度重なる家族の不幸で心を病んでしまっていたフリードリヒに、大学の教授であったヨハン・ゴットフリート・クヴィストルプがコペンハーゲン・アカデミーを勧め、入学した彼は美術を学ぶ中で人物よりも風景に興味を持ちました。

その後ドレスデンに移って、美術アカデミーに在籍し、ロマン主義運動の芸術家たちのメンバーとなったそうです。

1805年、フリードリヒが31歳のときに、詩人・ゲーテが審査委員を務めるのワイマールの美術展に課題外であったセピア画「日没の巡礼」を出品し、1位に入選しました。

孤独や悩みなどを描く詩で知られるゲーテともこれをきっかけに親交が始まったとされており、この頃からフリードリヒは油彩画を制作するようになったと言われているようです。

1810年には、ベルリン・アカデミー展に出品した作品「海辺の修道士」「ブナの森の中の修道院」が、プロイセン皇太子によって購入されたことでフリードリヒは画家として一躍有名になり、ベルリン・アカデミーの在外会員となりました。

1818年、フリードリヒが44歳のときに19歳年下で当時25歳だったカロリーネ・ポマーと結婚し、3人の子供を授かりました。

それまで家族の死などが起因して暗く重たい雰囲気の作品ばかりだったフリードリヒの作品も、この結婚後には色使いが明るくなったりと、穏やかな優しさを感じ取ることができます。

1835年、フリードリヒは脳卒中で倒れ、一命を取り留めたものの後遺症として麻痺が残ってしまったそうです。

その後も画家としての活動を続けていましたが、1840年に65歳で亡くなりました。

フリードリヒの死後、その名声は急速に消えてしまったそうですが、20世紀になって再評価され、現在に至るまで著名な画家として知られる存在となっています。

国立西洋美術館の企画展「自然と人のダイアローグ フリードリヒ、モネ、ゴッホからリヒターまで」

自然と人のダイアローグ国立西洋美術館
引用:bibiART「国立西洋美術館リニューアル記念「自然と人のダイアローグ~フリードリヒ、モネ、ゴッホからリヒターまで」開催」https://bibiart.art/in-dialogue-with-nature/

国立西洋美術館にてリニューアルオープン記念として2022年6月4日(土)から2022年9月11日(日)まで開催される「自然と人のダイアローグ フリードリヒ、モネ、ゴッホからリヒターまで」は、ドイツ・エッセンのフォルクヴァング美術館の協力のもとに、自然と人の対話から生まれた近代の芸術の展開をたどることをテーマとした企画展です。

タイトルにある通り、フリードリヒの他に、フィンセント・ファン・ゴッホやクロード・モネ、ゲルハルト・リヒター、ポール・ゴーガン、ポール・セザンヌ、ピート・モンドリアン、エドヴァルド・ムンクなどの著名な近代の西洋美術家たちの作品を鑑賞することができます。

昨今の状況を受け、来館には事前予約が必要となっているようです。

開催期間:2022年6月4日(土)~2022年9月11日(日)
会場の開館情報:9:30 〜 17:30(金曜日は20:00まで、土曜日は20:00まで)*月曜休館
月曜日が祝日の場合は月曜日開館し翌平日休館、年末年始休館 ※入室は閉室の30分前まで
入場料:一般 2000円、大学生 1200円、高校生 800円、中学生以下・障害者手帳提示と付き添い1名 無料
展覧会URL:https://nature2022.jp/
会場:国立西洋美術館(https://www.nmwa.go.jp/)
住所:〒110-0007 東京都台東区上野公園7-7

引用: https://www.tokyoartbeat.com/events/-/2022%2Fin-dialogue-with-nature-from-friedrich-monet-and-van-gogh-to-richter

フリードリヒの代表作品

「山上の十字架(ジェチーンの祭壇画)」1807年〜1808年

フリードリヒ「山上の十字架」
引用:Musey「山上の十字架(テッチェン祭壇画)」https://www.musey.net/19228

「山上の十字架」は、1807年にボヘミア・ジェチーンの教会の祭壇背後の飾り絵として制作された作品です。

 岩山の上の十字架にはキリストが磔になっているのが見えますが、それが絵の中心とはなっておらず、あくまで作品の主役は山や木々、そして背後からさす光であることがわかります。

協会で用いられる祭壇画としては、型破りな作品だったため物議を醸したそうですが、フリードリヒの作品は、『宗教画のような雰囲気やテーマを持っている風景画』なのです。

「海辺の修道士」1808年〜1810年

カスパー・ダーヴィト・フリードリヒ「海辺の修道士」
引用:Musey「海辺の修道士」https://www.musey.net/19125

ドレスデンにて1808年から1810年の間に描かれた油彩画「海辺の修道士」は、1810年のベルリン・アカデミー展に「ブナの森の修道院」とともに出品されました。

タイトルにもある、修道士は広大な海と空に飲み込まれるようにやせ細ったか弱い姿で、ごく小さく描かれています。

力強い自然、そして神の威厳を感じるような本作品は、プロイセン皇太子によって買い上げられました。

「ブナの森の修道院」1809年〜1810年

「ブナの森の修道院」は彼の出世作となった作品です。

三十年戦争で廃墟となったエルデナ修道院がモデルとなっていると言われており、斜めに傾いた十字架や薄暗い闇の中にある墓標、その周りに集まる修道僧など、『死』を連想させるようなイメージが伝わってきます。

1810年のベルリン・アカデミー展に「海辺の修道士」とともに出品され、即座にプロイセン王室に買い上げられました。

「氷の海」1823年〜1824年頃

フリードリヒ「氷の海」
引用:知欲「「氷の海」解説。特集:カスパー・ダーヴィト・フリードリヒ」https://chiyoku-com.translate.goog/gallery/friedrich-bs311/?_x_tr_sl=ja&_x_tr_tl=en&_x_tr_hl=en&_x_tr_pto=op,sc

『凍れる海で難破』というテーマは、フリードリヒがよく描いたものでもあり、「氷の海」は他のものと比べてもかなり大型の作品です。

13歳の時に溺れるフリードリヒを助けて身代わりに溺死した弟の一件で、罪悪感からうつ病を患い自殺も図ったことのあるといいますが、そんな辛い経験があったからこそ、『氷の海』という題材に向き合ってきたのかもしれません。

荒々しいテーマにも関わらず、どこか穏やかで柔らかい色使いが印象的です。

「人生の諸段階」1835年頃

1835年に描かれた「人生の諸段階」は、フリードリヒの晩年の代表作品です。

この作品では、五艘の船や五人の人物によって、『人生の幼少期から老年期まで』を描いています。

海岸は始まり、地平線は死を想像させ、青からオレンジに変わる、美しい夕暮れの様子からは平和、希望が感じられます。

一説によると、描かれている老人が自画像、中年の男性がフリードリヒの甥で、子供達はフリードリヒの三人の子供達だと言われているそうです。

ロマン主義とは?

ロマン主義の画家ウィリアム・ターナーの作品
引用:れぽれろブログ「遭難する船」https://ameblo.jp/0-leporello/entry-11406163550.html

フリードリヒも参加した芸術運動であるロマン主義とは、18世紀末から19世紀の初めころ(1780年から1830年代頃)にかけて、イギリス、フランス、ドイツなどを中心としたヨーロッパ各地で展開されました。

イギリス・ドイツでは1770年代以降、フランスでは1790年代以降に生まれた芸術家はロマン主義的傾向が強くなっています。

ロマン主義は特定のスタイルに固執せず、独自性や自我の欲求、主観などという『個』を重視し、叙情的・感情的な表現を重視します。

18世紀から19世紀初頭のヨーロッパは、フランス革命とナポレオン戦争による混乱が続いており、人々は自由を求め、個々の内面を重視する傾向が生まれました。

自由を求める人々は、未知なるものへの憧れを抱いていましたが、それには不安や苦悩が伴うことから、ロマン主義の作品には、嵐などの災害や難破船などのようなモチーフがよく見られるようです。

ロマン主義の著名な画家としては、フランスだとドラクロワやドラローシュ、ドイツではカスパー・ダヴィッド・フリードリヒ、フィリップ・オットー・ルンゲ、イギリスでは、ジョセフ・ライト、ジョセフ・ウィリアム・マロウド・ターナー、サミュエル・パーマー、トーマス・ローレンスらが知られています。

まとめ

幼い頃から人生を通じて『死』というテーマに直面することが人一倍多かったカスパー・ダヴィッド・フリードリヒは、当時の美術界においてそれほど重要とみなされていなかった風景画というジャンルを通じて、宗教・精神的な作品を世の中に届けました。

フリードリヒの作品からは、神の偉大さや美しさを、広大な規模の自然を描くことを通じて感じられます。

暗く重い雰囲気の作品も多い中でも、平和への憧れや希望を感じる繊細な美しさを見つけることができます。

参考

ノラの絵画の時間「3分でわかるカスパー・ダヴィト・フリードリヒ 19世紀のドイツ・ロマン主義を代表する風景画家フリードリヒの生涯と作品」http://blog.livedoor.jp/kokinora/archives/1034849812.html

ノラの絵画の時間「3分でわかるロマン主義 ロマン主義とは? ロマン主義の画家たち」http://blog.livedoor.jp/kokinora/archives/1034338347.html

サザノのポートフォリオ「死の画家が、色彩の魔法を覚えるまで~カスパー・ダーヴィト・フリードリヒ ~」

アートをめぐるおもち「幻想的で恐怖を感じる風景画?フリードリヒについて超解説!」https://omochi-art.com/wp/caspar-david-friedrich/

Artsy Auction Results https://www.artsy.net/artist/caspar-david-friedrich/auction-results

ABOUT ME
あやね
2018年にアメリカ NYへ移住した、京都生まれの大阪人。日本の伝統工芸が持つ独特で繊細な美しさが好きで、着物や器を集めている。郊外の家に引っ越したことをきっかけに、アート作品やアンティーク家具を取り入れたインテリアコーディネートにも興味を持ち始める。アメリカで日常生活に様々な形でアートを取り入れる人々に出会い触発され、2021年より趣味で陶芸をはじめる。