【エミール・ガレ】ランプなどの有名作品や、日本で鑑賞できる美術館など

Charles Martin Émile Gallé
アーティスト紹介
エミール・ガレ

DATA

ニックネーム
アール・ヌーボーの巨匠
作者について
エミール・ガレ(Charles Martin Émile Gallé)は、フランスのアールヌーヴォーを代表するガラス工芸作家、植物・昆虫学者です。 動植物など自然界のモチーフを表現に取り入れたガラス作品として、華やかなランプや花瓶などが有名です。

現在の値段

約5,768,450円(直近36ヶ月のオークション平均落札価格)

2021年「IMPORTANT AND RARE 'BRIZE D'AMOUR' VASE」約13,415,000円(クリスティーズ)28.6 x 16.5 x 10.5 cm
2021年「IRIS’ VASE, CIRCA」約1,676,875円(クリスティーズ)18.1 x 11.4 x 9.53 cm

エミール・ガレの作品は、日本のバブル期に多く輸入されたため、国内にも数多くのコレクターがいることで知られています。バブル当時に比べると価格は下がっている傾向はありますが、作品によっては現在も数百万円台で取引されています。比較的小さ買ったり、文様がシンプルな作品であれば数万円台から数十万円台で取引されていることも多いようです。
近年に制作されたガレ作品は高い評価を受けることが難しく、古いものほど価値が上がる傾向にあります。

エミール・ガレの経歴

フランスのフランスのアールヌーヴォーを代表するガラス工芸作家、また植物・昆虫学者としても知られるエミール・ガレは、本名がシャルル・マルタン・エミール・ガレCharles Martin Émile Gallé)で、1846年5月4日にフランスロレーヌ地方ナンシーに産まれました。

中学時代には、修辞学、文学、哲学、植物学で優れた成績を修め、1865年から約2年間ドイツのヴァイマル(ワイマール)に留学し、ドイツ語とデザインを学びました。帰国後、ガレが20歳の時の1866年から約1年間は、父の会社の提携先であるフランス北西のロレーヌ地域圏の町マイゼンタールのブルグン・シュヴェーラー社のガラス工場にて、エナメルによる絵付けやグラヴュール技法などのガラス製造の技術を習得しました。

グラヴュール技法とは

16世紀末頃ボヘミアで生まれた技法。回転軸に取り付けられた銅製のグラインダーで、ガラスを彫り込んでいく。カット技法では出せない繊細で陰影に富んだ表現が可能だが、非常に高度な技術が必要とされる。

https://www.mmm-ginza.org/special01-02.html

翌年の1867年、ガレは父親の会社のアート・ディレクターとして、キャリアを本格的にスタートさせました。

1870年にドイツ統一をめざすプロイセンと、これを阻もうとするフランスとの間で普仏戦争が勃発します。スペイン王位継承問題をきっかけに、プロイセンの挑発に乗ったフランス側から開戦したものの、プロイセンが圧勝しました。ガレはこの普仏戦争で、義勇軍に志願しました。

フランスが普仏戦争に敗北したことにより、フランクフルト条約でガレの故郷ロレーヌ地方の一部とアルザス全域は割譲されました。ガレは義勇軍を退役した後、鏡ガラス工場を経営する事業家であった父シャルル・ガレについてイギリスを訪問し、サウス・ケンジントン美術館(現在のヴィクトリア・アンド・アルバード美術館)を見学し、古代ガラスに魅力に強く惹かれたといいます。この旅行から帰る途中に、パリ、イタリア、スイスを周って美術館や植物園にも訪れています。

1875年には、牧師の娘アンリエット・グリムと結婚します。この頃から積極的にガラス作品の制作を始めました。そして1877年に、ガレは父に代わって鏡ガラス工場の工場管理責任者となります。

1878年、パリ万国博覧会にて独自に開発した酸化コバルトによって淡青色に発色させた素地の月光色ガラスや陶器を出品して、銅賞を受賞したほか、庭園装飾のための陶器では銀賞を受賞します。

1884年に作品を出品した装飾美術中央連盟主催の「石木土そしてガラス」展では金賞を受賞しました。

1885年には、ナンシー水利森林学校に留学していたの農商務省官僚・高島得三と交流を持ち、日本の文物や植物などの知識を得たといわれています。高島得三は、美術に造詣の深い人物として知られており、水墨画が得意で、北海という画号を持っていました。滞在中に400点ほど水墨画を描いた高島の作品を、ガレも2点譲り受けたそうです。

この影響を受けてか、後のガレの作品にも水墨画のようなぼかし表現を用いたものが見られます。ガレは、当時の美術界をゆるがしたジャポニズムの先導者としても知られます。

園芸愛好家、植物学者としても優れていたガレは、彼の作品制作においても、単なる植物や昆虫をモチーフとした表現というところに止まらず、生命の躍動を伝える表現を目指しました。ガレの自然に対するこうしたアプローチからは、ジャポニスムの影響もあるといえるでしょう。

1889年のパリ万博にて、ガラス部門でグランプリ、陶器部門で金メダル、家具部門で銀賞を受賞したガレは、装飾工芸家として国際的に高い評価を得ます。黒褐色のガラス素地を使用した作品シリーズは特に評判が良かったといいます。

1894年にはナンシーに自身のガラス工場を作りました。それまでの27年間は、ガレは自社のガラス製品をすべてマイゼンタールで製作していました。

1898年には、独自の製造技法である「マルケトリ技法」、「パチネ素材」で特許を取得しています。

1900年のパリ万博にも多くのガラス器、家具を出品して、再び「ソロモン王の壺」でグランプリを受賞し、その地位を確固たるものとします。 翌年には、1890年から1914年にかけてフランスのナンシーで活動したアール・ヌーヴォーの職人やデザイナーのグループであるエコール・ド・ナンシー(ナンシー派)の会長に就任します。

エコール・ド・ナンシー
引用:https://www.parisnavi.com/miru/150/

ガレは晩年まで、パリのルーブル宮マルサン館で開催されたナンシー派展に出品するなど活躍を続けますが、1904年9月23日に白血病により58歳の若さで亡くなりました。

ガレの没後も彼の工房は画家のヴィクトール・プルーヴェと夫人のアンリエットによって経営が続けられ、ガレの作品は生産され続けました。この時期の作品は、ガレの存命中とは作風が変わっており『第二工房期』と呼ばれており、大理石などの石や貝殻などの表面に浮き彫りを施した『カメオ彫り』が多く用いられるようになりました。

第一次戦争中には製造を一時中止しましたが、その後娘婿のポール・ペルドリーゼによって再開され、1931年まで製造が続けられました。1931年に会社は解散し、工場の敷地は売却されました。

フランス・ナンシー工房が閉鎖された後、当時の責任者だったモンテッシーを中心とした熟練のクラフトマン約200人が、ルーマニアの王室に招待されて移住し、ガレ工房の技術や伝統を多くの弟子たちに伝承しました。このような背景でガレ工房の作品をもとにルーマニアで製作された「TIPガレ」は、オランダハーグ国際裁判所の公認を得ています。

エミール・ガレの代表作品

「ジャポニズム菊文鼓型花器」1880年

ガレは、1880年代に日本の意匠に大きな関心を示していました。

軟質陶器を鼓型に成型した「ジャポニズム菊文鼓型花器」は、菊や市松模様、唐草模様など日本の伝統的な装飾や形状、技法が用いられたジャポニズムの影響を大きく受けた作品だといえます。

「好かれるための気負い」1889年

「好かれるための気負い」は、1889年にパリ万国博覧会に出品した作品の一つです。

ガレが「アンティーク・グリーン」と命名した、青緑の色が印象的な四層ガラスの作品で、花や昆虫、蛙などの隣に『Souci de Plaire(好かれるための気負い)』の文字が彫刻されています。

「連華とめだか文花瓶」1889年頃

「連華とめだか文花瓶」は、1889年にパリ万博で発表された「悲しみの花瓶―黒(Vase de tristesse)」シリーズとして、ガレの最も評価された作品の一つです。

マンガンを用いた黒ガラスを作り、華やかでただ美しいだけでなく、哀愁や悲しみといった深い感情を込められているように感じられます。

宙吹き、被せガラス、グラヴュール技法が用いられ、ガラスという素材の限界を超えた名品でとして知られています。

「カモメと帆船文ランプ」1905年頃

高さ50cmのランプ「カモメと帆船文ランプ」は、1905年ごろに製作されました。

被せガラス、エッチング技法が用いられており、ガレの作品に特徴的なキノコ型のランプに、鮮やかなコントラストで描かれたカモメと帆船文が美しい作品です。

エミール・ガレの作品を鑑賞できる美術館

北澤美術館

長野県諏訪市にある北澤美術館は、開館40周年を記念して2023年3月18日(土)から2024年3月12日(火)まで特別展「エミール・ガレ、自然への眼差し -我が根は森の奥深くにあり-」を開催しています。

今回の展示では、ガレが座右の銘として工場の入り口に掲げていた『我が根は森の奥深くにあり』をキーワードに、北澤美術館が所蔵するアール・ヌーヴォーの名作を通して、自然に注がれたガレの熱い思いを探っています。

北澤美術館

会期 2023年3月18日(土)~2024年3月12日(火)
開館時間 9時~18時(4月~9月)
9時~17時(10月~3月)
※閉館時間の30分前までにご入館ください。
※3月18日(土)一般公開13時より
休館日 年中無休、9月30日(土)は一部展示替えのため休館
会場 北澤美術館 1階 ガラス工芸展示室
〒392-0027 長野県諏訪市湖岸通り1-13-28
電話 0266-58-6000
入館料 大人1,000円/中学生500円/小学生以下無料
※団体(8名様以上)料金は、上記料金より100円引

https://kitazawa-museum.or.jp/exhibition/article.php?post_id=4517

ガラスの芸術 エミールガレ美術館

栃木県那須郡にあるガラスの芸術エミールガレ美術館には、ガレの代表作「トリステスの花器」など100点以上の作品が展示されています。

18世紀フランスルイ王朝時代の華やかな中世ヨーロッパをイメージした外観で、18世紀の貴重な家具・調度品などの美術品も展示されています。ガレは植物学者としても知られていたため、彼の世界観を館内外で味わうことができるでしょう。

ガラスの芸術エミールガレ美術館

住所:〒329-3200 栃木県那須郡那須町大字高久丙132
問い合わせ先:0287-78-6030
公式URL http://www.emile-galle-museum.co.jp/
営業時間: 9:30〜17:00(入館は16:30まで)
料金:大人 1,000円 高・大 700円 小・中 300円 20名様以上で団体割引あり。

https://www.tochigiji.or.jp/spot/s7286/

大一美術館(現在休館中)

現在は休館中なようですが、愛知県名古屋市にある大一美術館には、エミール・ガレの万国博覧会出品作を含むアール・ヌーヴォーの作品の他に、現代ガラスアートの第一人者でアメリカの人間国宝第一号に認定された、デイル・チフーリの作品も収蔵されています。

大一美術館は1997年に株式会社大一商会のメセナ活動の一環として開館され、長年アート作品の蒐集(しゅうしゅう)を行ってきました。

大一美術館

愛知県名古屋市中村区鴨付町1-22
TEL:052-413-6777 FAX:052-413-3838
開館時間:AM10:00 ~ PM5:00
最終入館時間 PM4:30
休館日:毎週月曜日(祝日の場合は、翌平日)※現在は休館中

https://www.daiichi-museum.co.jp/facilities/

まとめ

エミール・ガレは、フランスのアールヌーヴォーを代表するガラス工芸作家としてだけでなく、植物・昆虫学者としても名を馳せたため、その情熱が彼の作品にも反映され、自然をテーマにした表現が美しく現代でも多くの人々に愛されています。

日本国内では、現在長野県の北澤美術館にてエミール・ガレのコレクションを鑑賞できるので、ぜひ観に行ってみてはいかがでしょうか。

参考

Wikipedia エミール・ガレ

画像引用元:https://www.pucesdeparissaintouen.com/en/catalog/1890-emile-galle-crystal-vase-with-handles-light-green-glass-enamel-flowers-heart-of-mary/ https://www.skinnerinc.com/news/blog/emille-galle-art-nouveau-glass/

ABOUT ME
あやね
2018年にアメリカ NYへ移住した、京都生まれの大阪人。日本の伝統工芸が持つ独特で繊細な美しさが好きで、着物や器を集めている。郊外の家に引っ越したことをきっかけに、アート作品やアンティーク家具を取り入れたインテリアコーディネートにも興味を持ち始める。アメリカで日常生活に様々な形でアートを取り入れる人々に出会い触発され、2021年より趣味で陶芸をはじめる。