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スイスの高級時計「アイコン オートマティック クラブ ジャパン エディション」をデザインした中澤浩司さんが考える時計の価値と魅力 後編

今回のインタビューは中澤浩司さんです。中澤さんは時計好きから発展し、SNS活動(@koji_nkzw)を通してスイスの高級腕時計モーリス・ラクロア(MAURICE LACROIX)から世界初の公認ウォッチクラブとしてモーリス・ラクロア ウォッチ クラブ ジャパンの運営をスイス本国 モーリス・ラクロア本社から任される方です。

前半では時計好きだった中澤さんがモーリス・ラクロアとコラボレーションするまでの軌跡について伺いました。後半もお楽しみください!中澤さんにとっての腕時計の価値や魅力についてインタビューしました。

中澤さんの考える時計の魅力とは?

聞き手:後半は中澤さんに腕時計の魅力・そして投資価値などについて聞いていきたいと思います!私はあまり腕時計に凝ったことがありません。そんな腕時計の初心者(私)に腕時計の魅力を教えてほしいです!

中澤さん:今はスマホがあるのでいつでも時間を調べることができますよね。だからこそ、この時代には別の意識として好きな時計を見つけて欲しいと思います。なぜなら好きな腕時計を身に着けることができれば、その時計があなたをその時計にふさわしい場所に連れて行ってくれると考えているためです。フランスのことわざに『素敵な靴はあなたを素敵な場所に連れて行ってくれる。そしてその素敵な場所で素敵な出会いを与えてくれる。』まさに時計も同じことが言えます。

こうして私が活動しているからこそ出会えた方と素敵な時間を共有できています。好きな時計を着けると、ちょっとおしゃれしようかなとか、振る舞いを気を付けようかなとも思いますよね。

そうこうしているうちにそれに見合うようになると思うんですよね。あとは大切にしていれば機械式時計は子供や孫にも受け継ぐことができます。自分をちょっと輝かせる為の自己投資としてみるのも良いと思います。

時計の価値

聞き手:自己投資ですね。よく時計の転売などを目にしますが、時計に投資価値はあるのでしょうか?

中澤さん:確かに投資としての価値のあるモデルがる存在するのは確かです。しかしそれはごく一部のモデルです。それらのモデルに関しても高騰し続けると言うことは一部例外を除いて、あまり考えられません。いつか相応の状況に落ち着くと思います。またしっかりとその真意を見抜ける方でないと結果、投資としての価値を感じられないと考えています。ですので近年の流れで投資のみを見て、転売を考えるのは正しい投資ではないと考えています。

まず、時計=投資だけで考えているユーザーがもし、いたのならば、ブランドや愛好家にその真意を見抜かれてしまうと考えています。仮に投資として人気のモデルを手に出来たとしても一時の利益でしかないと思っています。

本当に腕時計が、その歴史が、デザインが好きでなければ長く愛せないと思いますし、腕時計愛好家から時計好きとして迎えてもらえないと思います。

私が思う、本当の腕時計愛好家ならば、「時計=投資価値」ではなく「時計=共感しあえるモノ」の一部でしかありません。そういう意味では自身の感性を上げるモノ(自己投資)と考えた方が良いですね。実際に私がもし時計を「投資」として捉えていたのであれば、今のような縁やキャリアは築けなかったと思います。

聞き手:なるほど、では時計愛好家が考える時計の価値とはなんでしょうか?

中澤さん:この数センチのサイズに芸術作品が詰まっているところですかね。0.1㎜~数センチまでの数多くのパーツがこの小さなケースに詰め込まれます。それも各パーツが各々の役割を果たすためにその小さなケースの中で動くのです。特に機械式時計は電力を必要とせずその

各パーツのみで動き出すのです。0.1㎜のずれで腕時計としての機能はしません。またデザイン面から見るのも面白いです。0.1㎜配置がずれると全く別物になりますし、その小さな差で人気のある顔になるかならないかも決まります。わたしたちでは感じられない、見えないラインがそこには存在します。それを味わえるのも時計の価値になるでしょう。

聞き手:中澤さんにとって時計の魅力はなんでしょうか?

中澤さん:腕時計によって人とのつながりを持つことができました。同じ好きだからこそ話がはずみます。国や人種が違っても同じ腕時計の話で盛り上がり仲良くなることができます。一途に好きであれば相手にもそれが伝わります。この繋がりは私にとってお金には替えられない大切なものになります。

聞き手:趣味を通して様々な方と交流できるのは素晴らしいですね。最近はアップルウォッチなどデジタルも進んでいます今後時計の未来はどうなるのでしょうか?

中澤さん:ユーザーに関しては二極化が進んでいくとも思いますね。機械式時計の魅力を知る人は機械式時計を愛すると思いますし、デジタルで効率を求める方はその時計を選んでいくのではないでしょうか。

時計自体の未来に関しては、更に発展していくと思います。先日もアップルウォッチの新型が発表されましたね(インタビュー日:2022年9月14日)。当初アップルウォッチが発表されたときは時計メーカーにとって脅威に感じたそうですし、実際にミドルレンジの価格帯のブランドにとっては脅威にもなったと聞いています。しかし機械式時計は今も変わらず販売され続けています。確かにスイスの時計に関する総輸出量は減っていますが、、、

だけど私たちが知るブランド、例えばオーデマ・ピゲ、パテック・フリップ,ヴァシュロン・コンスタンタン、ロレックス、オメガなど…の時計は今やかつてないほど高価になっています。

腕時計の価格帯自体が値上がりしています。気軽に買える時代ではなくなってきているのも事実です。しかしミドルレンジの価格帯の腕時計は更に精度を高め、デザインをブラッシュアップし、魅力的なモデルを発表してきています。またマイクロブランドにも目を向けられてきている現状を感じます。比較的手にしやすく知覚価値の高いブランドが伸びてきます。ということは、このクラスの腕時計が私たちの手元に来る日が増えてくるということです。

時計×アート

聞き手:以前インタビューした投資家が「時計はアートだ」とお話しされていました中澤さんも時計アートだというお考えに賛成でしょうか?反対でしょうか?

中澤さん:賛成です。時計にはアートの側面もありますね。商業製品でもありますが、私たちが知らないモデルも数多くあります。時計は絶妙な色合いやちょっとしたバランスのうえで成り立っていますね。出したらキリがありませんが、下記の製品は芸術ですね!

ユリスナルダンのクロゾネアのエナメル文字盤。文字盤は美術工芸品と呼べる仕上がりです。

https://www.rasin.co.jp/blog/special/enamel/

A.ランゲ&ゾーネ ランゲ1 左右非対称でありながら見る人を魅了する調和のとれたランゲ1のデザインは『黄金比』で構成されています。

https://www.alange-soehne.com/

ジェイコブ アストロノミア スカイ

https://www.gressive.jp/brand/jacob-co/catalog/149391 

ジャケ・ドローのマジック・ロータス・オートマトン

https://www.fashion-press.net/news/50279

ヴァシュロン・コンスタンタン レ・キャビノティエ等

https://www.gressive.jp/brand/vacheron-constantin/news/214430

https://www.vacheron-constantin.com/jp/ja/maison/craftsmanship/cabinotiers.html

ほんの一部ですが、まだまだ数多くの芸術の域に達した美しいモデルがあります。通常では見ることのできない、その美しい腕時計達を直に見ることも出来る機会もあります。そんな時は感動とトキめきが止まらないですね。

聞き手:ちなみに、中澤さんは好きなアーティストやデザイナーはいらっしゃいますか?

中澤さん:元々インテリアを学生時代専攻していたので、その時代のデザイナーが今でも好きです。例えばチャールズ・レイ・イームズやフリップスタルク、コルビジェ、ミース・ファン・デル・ローエ等でしょうか。“ユーザー目線でデザインをする”というバウハウスの思想が今も私に影響を及ぼしています。

当サイトでも家具については紹介しています!興味のあるアート投資はありますか?ありましたら教えてください。

NFTは興味があります。Open Seaで自身の作品を出品し、アーティストを発掘し購入したいと検討したいと思ったこともありましたが日本語に対応しておらずうまく翻訳できず閲覧のみに終わってしまいました。P.Art.onlineで改めて学びたいと思います。

聞き手:本日はありがとうございました!

プロフィール

中澤浩司(@koji_nkzw

CELIEU DESIGN OFFICE / CEO【腕時計ポーチ&ケースブランド”CELIEU”21.12ローンチしました】 【スイス腕時計ブランド MAURICELACROIXコラボレーションモデル 21.09発表】 【モーリス・ラクロア ウォッチクラブ ジャパン”公認ファンクラブを運営しています】

ABOUT ME
しおり岡
編集長/ライター。小学生の頃はエジプト文化、中学生では西洋美術、高校生は日本の歴史にハマり、大学在学中に仏像に恋をして、学芸員を取得。卒業後、大手人材会社で営業を経験。その後、飲食店の広報・デザイナーを経て、アメリカ・NYにて転職。コロナウイルスのため帰国し、現在は日本に滞在中。趣味は「美術館や遺跡を経験するための海外旅行」。今まで40カ国以上を旅行をし、世界の建築や文化、食事、アートに触れる。