コラム記事

海外で人気のアジア系現代アーティスト7選、アイ・ウェイウェイやティファニー・チュンなどの作品と共に紹介!

アメリカにおいて5月は、Asian Pacific American Heritage Month (アジア・太平洋諸島系米国人文化遺産月間)です。皆さんも海外の著名人のSNSの投稿などでもしかしたら見かけたことがあるかもしれません。

人口分布に最も人種的多様性のあるアメリカでは、様々なバックグラウンドを持つ人種ごとの歴史や文化を祝い、継承するために、このような月間を設けています。

それぞれの月間には、様々なイベントが開催され、アジア・太平洋諸島系米国人文化遺産月間である5月はエンタメ、スポーツ、教育、建築、芸術など各分野で活躍するアジア系米国人の業績が讃えられます。

今回は、この月間にちなんで、海外でも人気のある今知っておくべきアジア系のアーティスト7人をご紹介します!

アイ・ウェイウェイ(艾 未未)

アイ・ウェイウェイ
アイ・ウェイウェイ(引用:THE ART NEWSPAPER 「Ai Weiwei: If you do not question Chinese power, you are complicit with it—that goes for art organisations too」https://www.theartnewspaper.com/interview/ai-weiwei-chinese-power)

アイ・ウェイウェイ(以下、ウェイウェイ)は、最も有名な中国人現代アーティストの1人で、強い政治的思想の表現者であり、活動家としても知られています。

ウェイウェイは、民主主義や人権に対する中国政府の姿勢を批判したり、国の情勢を描くドキュメンタリー作品を制作したりして、中国当局に身柄を拘束されていたこともあります。

2020年のコロナウイルスによるパンデミックの際には、自身のデザインをプリントしたマスクをeBayで販売し、合計1,432,700米ドルを調達。その全ての売上を国境なき医師団などの団体へ寄付しました。

アイ・ウェイウェイの代表作品

彼の作品は、建築、インスタレーション、ドキュメンタリー映画など多岐に渡り、世界中のパビリオンや美術館の展示会のキュレーターとしても活躍してきました。

ひまわり

ひまわり アイ・ウェイウェイ
引用:Wolf Eyebrow「Ai Weiwei」https://wolfeyebrows.wordpress.com/2010/10/14/ai-weiwei/

ウェイウェイのインスタレーション作品として有名なのが、イギリスのテートモダンで展示された「Sunflower Seeds」です。本物そっくりなフェイクのヒマワリの種を1億個以上床一面に敷き詰めた作品の隣のブースでは、作品のメイキング映像を観ることができます。

中国といえば機械を使った大量生産をイメージしてしまいますが、この作品のために一つ一つ手作業で1600人の人達によって約2年半の歳月をかけて作られたひまわりの種のストーリーを観ることで、作品の見方が変わります。

鳥の巣

鳥の巣 アイ・ウェイウェイ
引用:Wikipedia「Beijing National Stadium」https://en.wikipedia.org/wiki/Beijing_National_Stadium

2008年の北京オリンピックの際に話題となった「鳥の巣」と呼ばれる北京国立競技場は、ウェイウェイが芸術コンサルタントとしてプロジェクトに参加してデザイン、建設されました。

まさに鳥の巣のように見えるこの競技場は、北京のアイコンとなる建築物の一つとなりました。

一方でウェイウェイは、北京オリンピック開催は一般市民の生活を圧迫しながら、中国政府が世界に向けてその栄光をアピールしたり、愛国的な教育を広めるために使われたりしたと語り、この制作プロジェクトに関わったことを後悔していると述べているそうです。

動物の輪/干支の頭

動物の輪/干支の頭  アイ・ウェイウェイ
ウェイウェイの代表的な一連の彫刻作品「Circle of Animals / ZodiacHeads」(引用:Sotheby’s 「Ai Weiwei’s Circle of Animals/Zodiac Heads」https://www.sothebys.com/en/articles/ai-weiwei-circle-of-animals-zodiac-heads)

「動物の輪/干支の頭」は、かつて中国の北京郊外の保養地、元明園の噴水時計に飾られていた干支の彫刻をモチーフにした作品です。

モチーフとなったオリジナルの作品は、18世紀半ばにイタリアの芸術家ジュゼッペ・カスティリオーネによってデザインされ、その後1860年にフランスとイギリスが中国に侵攻した際に略奪されました。

この作品を改めて制作、再解釈し、現代の世界に発表することに、歴史や政治に対する複雑な会話を世の中に投げかけるウェイウェイの現代アーティストとしての独自性を感じます。

ドキュメンタリー映画「アイ・ウェイウェイは謝らない」

中国政府に軟禁されようが臆せずに政府への批判を作品を通じて表現し続けてきたアイ・ウェイウェイ。

大掛かりで強烈なメッセージ性を持つウェイウェイの作品の制作背景や、彼が指摘してきた中国での社会問題について、興味が湧いた方は、ドキュメンタリー映画「アイ・ウェイウェイは謝らない」を観ることをお勧めします。

「芸術における表現は、新しいコミュニケーションである」と語るウェイウェイは、アーティストという枠を超えて、社会活動家として声をあげ続けており、彼の姿勢や存在自体から現代アートの在り方を考えさせられます。

ティファニー・チュン

ティファニー・チュン アイ・ウェイウェイ
ティファニー・チュン(引用:The European Business Review「Tiffany Chung, Contemporary Artist」https://www.europeanbusinessreview.com/tiffany-chung-contemporary-artist/)

ティファニー・チュン(以下、チュン)は、ベトナム戦争後の米国に難民として移住した自身の生活からインスピレーションを得た作品で知られるベトナム系アメリカ人の現代アーティストです。

チュンは、彼女の作品を通して紛争、移民、都市化、そして人間の変容を描いています。アメリカのポップカルチャーを彷彿させるような明るい色使いで、地質学的出来事と最近の人道的危機を記録した細かく描かれた地図のような絵画作品が有名です。彼女の作品は、ヴェネツィアビエンナーレやニューヨークの近代美術館のように、世界各地の有名な美術館に展示されています。

ティファニー・チュン 作品
チュンの作品「reconstructing an exodus history: boat trajectories, ports of first asylum and resettlement countries, 2017」(引用:Art Basel「reconstructing an exodus history: boat trajectories, ports of first asylum and resettlement countries, 2017」https://www.artbasel.com/catalog/artwork/76251/Tiffany-Chung-reconstructing-an-exodus-history-boat-trajectories-ports-of-first-asylum-and-resettlement-countries)

ノリコ・フルニシ

ノリコ・フルニシ
ノリコ・フルニシ(引用:Minneapolis Institute of Art「Noriko Furunishi: Artist Profile
」https://vimeo.com/413750432)

ノリコ・フルニシ(以下、フルニシ)は、ロサンゼルスに住む日本人の現代アーティストです。

フルニシの作品は、自身でアメリカの各所を大判4 x 5カメラを使用して撮影した写真から4〜6枚の画像を選んでデジタル編集したもので、一見連続した風景に見えるのが面白いところです。縦長の作品は、中国や日本の掛軸絵画を思い出すような趣深い印象を感じられます。

ノリコ・フルニシ 作品
フルニシの作品「Untitled (Dirt Track)」(引用:Minneapolis Institute of Art「Noriko Furunishi: Artist Profile
」https://vimeo.com/413750432)

サリー・デン

サリー・デンと彼女の著書「Skyward:The Story of Female Pilots in WWII 」(引用:Flying Eye Books「Sally Deng On Skyward, WWII History, and Supportive Parents」https://flyingeyebooks.com/sally-deng-on-skyward-wwii-history-and-supportive-parents/)

サリー・デン(以下、デン)は、ロサンゼルスを拠点とする中国系アメリカ人アーティストで、フォーブス、ニューヨーカー、コンデナストなどの著名な出版物に作品が掲載されてきたことで知られています。

デンは世界的な経済誌であるフォーブスが毎年発表する、30歳未満の起業家やリーダー、先駆者たち計300人を選出したリストのアート&スタイル部門に2020年度リスト入りしました。
彼女の絵画作品には、風景、人々、歴史の描写が多く見られ、穏やかでノスタルジックな印象をを残します。

デンの作品「Nobrow」(引用:Sally Deng「Nobrow」http://sallydeng.com/#/nobrow/)

アンドリュー・クオ

アンドリュー・クオ(引用:The New York Times「In Detroit, a 100-Foot Graphic Mural That Distills the Urban Experience」https://www.nytimes.com/2015/09/22/t-magazine/museum-of-contemporary-art-detroit-mural-andrew-kuo.html)

アンドリュー・クオ(以下、クオ)は、ニューヨークを拠点とする現代アーティストで、彼の作品はアメリカの名門新聞ニューヨークタイムズに定期的に登場していることで有名です。

言語、数字、色、データなどの要素からなるクオの抽象絵画は、鮮やかな色調と硬いフォルム、遊び心のあるテキストがユニークです。

クオの作品(引用:SSENCE「Off the Charts with Andrew Kuo!」https://www.ssense.com/en-us/editorial/culture/off-the-charts-with-andrew-kuo)

ナム・ジュン・パイク

ナム・ジュン・パイク(引用:Gagosian「NAM JUNE PAIK」https://gagosian.com/artists/nam-june-paik/)

世界で初めてテレビ、ビデオを用いたアート作品を発表し、その後も様々なメディアを駆使したビデオアートの創始者とも呼ばれたナム・ジュン・パイク(以下、パイク)は、韓国系アメリカ人の現代アーティストです。

韓国で生まれたのちに、日本、ドイツ、米国に住み、働いていた経験のあるパイクは、国境や分野を超えた実験的、革新的で遊び心のある作品を次々と生み出しました。

世界的に著名な日本人アーティストであるオノ・ヨーコや坂本龍一らなどとの共同作品なども残しています。

パイクの作品「TV Garden」(引用:Artsy「Nam June Paik Predicted the Future by Melding Art and Technology」https://www.artsy.net/article/artsy-editorial-nam-june-paik-predicted-future-melding-art-technology)

パトリック・ナガタニ

パトリック・ナガタニ(引用:Japanese American National Museum「Interview with Patrick Nagatani」https://blog.janm.org/2011/11/08/interview-patrick-nagatani/)

シカゴで生まれ、ロサンゼルスで育ったパトリック・ナガタニ(以下、ナガタニ)は、教育者、活動家としても活躍した日系アメリカ人の現代アーティストです。

ニューメキシコ大学の芸術・美術史の学部で教授も務めたナガタニは、第二次世界大戦時のアメリカの日本人強制収容所や核兵器開発を皮肉った作品など政治的、文化的、歴史的をテーマにした作品で知られています。

ナガタニの作品「Alamogordo Blues」(引用:Houston Center for Photography「Patrick Nagatani’s Nuclear Enchantment」https://hcponline.org/spot/patrick-nagatanis-nuclear-enchantment/)

まとめ

アジアと一括りにしてもかなり広範囲ではありますが、日本人の目から見て類似している文化や歴史的背景も多いため、共感しやすい価値観を持つ作品やアーティストも多いかもしれませんね。

過去数十年の間に、アジアの現代アーティストたちはアート界に斬新なスタイルを取り入れただけでなく、様々な社会的問題に関する議論のきっかけ作りにも寄与してきました。

アート作品それぞれの、制作背景や作者のバックグラウンドを知ることで、自分が知らなかった視点で物事を見ることができたりするのが、現代アートの面白さの1つだと思います。

ABOUT ME
あやね
2018年にアメリカ NYへ移住した、京都生まれの大阪人。日本の伝統工芸が持つ独特で繊細な美しさが好きで、着物や器を集めている。郊外の家に引っ越したことをきっかけに、アート作品やアンティーク家具を取り入れたインテリアコーディネートにも興味を持ち始める。アメリカで日常生活に様々な形でアートを取り入れる人々に出会い触発され、2021年より趣味で陶芸をはじめる。