コラム記事

アートの追及権について

皆さんは追及権という言葉を耳にしたことはありますか?

私はこの言葉を初めて聞いた時に全くイメージが湧きませんでした。

この記事を読まれている方の中にはももしかしたら元々意味を知っている方もいらっしゃるかもしれません。

追及権はこれからアートをコレクトしていく際に、知っておきたい言葉の1つなので今日は追及権について解説していきたいと思います。

ノート

そもそもアートの追及権とは

追及権とはアーティストに与えられた権利で、

セカンダリーマーケットである美術商やオークションハウスなどによってアーティストの作品が転売されたときにアーティストに対して取引額の一定パーセントが支払われる制度です。

自分の作品が転売されればされるほどロイヤリティを産み、自分の収益となるためアーティストにとってはとても嬉しい仕組みとなります。

例えば・・

それぞれの国に比べて追及権の適用率は違います。

仮に5%適用されると仮定し、どのような仕組みで追及権が課せられるのか計算してみます。

1回目 アーティストからAさんがアートを直接購入 10,000円 追及権料は発生しません。
2回目 AさんからオークションでBさんへ 30,000円 3万円x5%=1,500円(追及権料)
3回目 BさんからオークションでCさんへ 100,000円 10万円x5%=5,000円(追及権料)
4回目 Cさんから画商を通じてDさんへ 1,000,000円 100万円x5%=50,000円(追及権料)

上記のように、

アーティストは一つのアートを作り出したことで

作品の代金10,000円+追及権料56,500円合わせて66,500円の収益を生むことができたことになります。

世界的に見た追及権

追及権自体は1920年にフランスで始まったものです。

現在、80ヶ国以上の国に追及権は適用さているのですが、日本には追及権が適用されていないのが現状です。主に著作権に関する条約であるベルヌ条約では、追及権を適用するかは各国の自由としており、「相互主義」を採用しています。

相互主義とは、自分の国の保護水準よりも相手の国の保護水準が低い場合、その相手国の水準の範囲で保護すればいいということです。

つまり、追及権が適用されている国で日本人アーティストのアートが転売されたとき

日本では追及権が適用されていないため日本人アーティストは追及権に基づく収益は得られないということです。

なぜ日本では追及権を適用されないの?

そもそも追及権が必要であるという声があまり上がってきていないということです。

追及権に関するイメージも湧きにくく、制度を導入するに至らないことが原因のひとつとして挙げられます。

JASPARの小川明子理事は「過去に追及権を導入した英国では、美術品のオークションはもともと高額だという背景もあり、追及権による支払いを上乗せしても経済的な影響はほとんどなかった。英国の若手アーティストは追及権の制定で生活が大きく変わったほか、自分の作品が取引されたという情報が届くことによるモチベーションの向上効果も大きい」と指摘する。

日本経済新聞「日本にも美術「追及権」創設を、著作権団体などが会見」https://www.nikkei.com/article/DGXMZO29424230W8A410C1000000/

といったように追及権を制定することによる経済的な影響はほとんどなく、むしろメリットの方が大きいと言われています。

まとめ

日本でもし追及権が適用されるようになれば、自分が手掛けた作品が転売されればされるほど収益が上がりモチベーションもあがるのではないかと思いました。

日本人アーティストももっと活動がしやすくことで日本のアート市場が今よりももっと活気づいてくれるときが来ればとおちかは願っています。

今後、皆様も海外のオークションなどで海外アーティストのアートを落札する際は追及権のことも頭の片隅に入れた上でオークションに参加されてください。

ABOUT ME
おちか
アートとお金と食べることが大好き。コレクターの叔父の影響で幼い頃からアートに囲まれた環境で育つ。 社会人になってからは医療・福祉系の仕事をしていたこともあり、アールブリュットの世界に魅了される。