世界で開催される数ある有名なアート・フェアの中でも、アート・バーゼルの名前を聞いたことがある方は多いのではないでしょうか。
聞いたことはあるけど、それが何なのか、なぜ、いつ、どこで開催されているのかなど詳しくは知らない方も多いかもしれません。
まだあまりアートについて詳しくはないけど、これからアートをコレクションし始めたいという方にとっても、アート・バーゼルに出展されているアーティストや作品をチェックしておけば、間違いないと思います。
今回は、この世界的に有名なアートフェア「アート・バーゼル」について、知っておくべきことをまとめてご紹介します。
アート・バーゼルとは
1970年にスイスのバーゼルで始まった「アート・バーゼル」は、現代アートの作り手であるアーティスト、コレクター、ディーラーが集う世界最大のアートフェアで、その時代のトップアーティストに焦点を当て、「アーティストたちのキャリア形成を支援するためにギャラリーが果たす役割をサポートする原動力」となることを目的としています。スイス、フランス、ドイツの国境が交わる地点であるバーゼルは、アート商業にとって理想的なハブとなっています。
アート・バーゼルはスイスのバーゼル、アメリカ・フロリダ州のマイアミビーチ、中国の香港の世界3都市でそれぞれ年に一度開催され、例年各国からアート業界を牽引するメンバーで毎年構成される委員会に選ばれた約300軒のギャラリーが作品を展示・販売するために参加しています。ヨーロッパ、アメリカ、アジア各所から個人のアートコレクターだけでなく、世界中の美術館や機関、メディア関係者なども出席します。会場では、絵画、写真、インスタレーション、彫刻、パフォーマンスなど様々なジャンルの現代アートの作品の展示を観ることができます。
アート・バーゼルには料金を支払えば入場可能ですが、VIPと認められた一部のアートコレクターのみがアクセスできるプログラムが多数存在します。
アート・バーゼルの開催に伴って、サテライト・フェアも毎年開催されています。それぞれの小規模なイベントでは、アートを見たり、買ったり、売ったりすることができますが、価格は手頃です。サテライト・フェアの例としては、「デザイン・マイアミ」、「アート・セントラル香港」、「スコープ・バーゼル」などが有名です。
アート・バーゼルの歴史
1970年6月に第1回目のアートバーゼルが開催されました。アートディーラー兼コレクターのエルンスト・バイエラー、ギャラリストのトルドル・ブルックナーとバルツ・ヒルトの3人によって、ドイツで3年前に誕生した現代アートフェア「アート・ケルン」に対抗するために設立されました。最初のショーには16,000人以上の人々が、10か国から参加した90軒のギャラリーと30社の出版社の展示を見るために来訪しました。
その後、アーティストによる映画に特化したアートフィルム部門や、それまでの一般的な展示ブースの概念を覆した野心的な現代メディアの展示プラットフォーム、アート業界の主要メンバーを招いたパネルディスカッションなどを導入し、唯一無二の現代アートフェアとして知られていきます。
バーゼル以外の拠点としては、2002年に、アート・バーゼルは最初の拠点をアメリカ・フロリダ州のマイアミ・ビーチに開設し、「アート・バーゼル・マイアミビーチ」を開催しました。
その後、2013年には2つ目の拠点として中国・香港で「アート・バーゼル・香港」が開催され、アジア最大のアートフェアとなりました。
過去に話題になった展示作品
バナナにアート作品として12万ドル(約1300万円)の勝ちがついた話は、もしかすると聞いたことがある方も多いかもしれません。2019年にアート・バーゼル・マイアミビーチに出展し、最も話題になったマウリツィオ・カテランの作品「Comedian」は、なんと生のバナナをグレーのテープで壁に貼った作品でした。
その後イベント開催期間中に、このバナナは参加していた他のアーティスト、デビッド・ダトゥナ(以下、ダトゥナ)によって食べられ、その動画が「Hungry Artist」と名付けたアートパフォーマンスとしてインスタグラムに掲載されたことも、大きな話題になりました。
同作品を展示したギャラリー・ペロタンは、『あの作品の中にあるバナナは概念であり、ダトゥナは作品を破壊したわけではない』と述べたそうです。
実は、作品の中のバナナはイベント開催中にも交換して新しく保つことが想定されていたといいます。
アートのあり方は多様で、定義づけることはできないのではないかと感じます。アーティストたちがそんな革新的なアート表現をできる場が提供されているのも、アート・バーゼルの魅力といえると思います。
アート・バーゼルの展示の様子
現在世界3ヶ所でそれぞれ年1回開催しているアート・バーゼルの過去の展示の様子を覗いて見ましょう。
アート・バーゼルの会場にはギャラリーが編成される様々なブースがあります。例えば、アート・バーゼル・マイアミの場合は、過去3年以内に製作された新しい作品を見つけることができる「Nova」、歴史的に重要な芸術活動をフィーチャーしたギャラリーを紹介する「Survey」、新進気鋭のアーティストの意欲的な個展を紹介する「Position」などのセクターに分かれています。
2021年度は、どの開催地もコロナウイルスによる影響を受け、スケジュールの延期やデジタルとフィジカルのプラットフォームを融合させ、新たな規模と形式で開催する予定だそうです。
2021年3月に開催予定だった、第9回目のアート・バーゼル・香港は、5月に延期されたものの、無事開催され、23ヵ国、地域から104軒のギャラリーが、アジアを始め世界の多様なアート作品を紹介しました。
まとめ
アートの価値は、アーティストの作品の素晴らしさだけでなく、どのギャラリーが扱っているかにも大きく関わります。
数ある世界の著名なアート・フェアの中でも、アート・バーゼルは特に厳選された世界トップのギャラリーのみが集まっているため、アート業界への影響力がかなり大きいイベントといっても過言ではありません。
是非、あなたの好きなアーティストをアート・バーゼルで発見してみてください!