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【初心者でもわかる日本刀】日本刀の歴史と種類の基礎を解説!

今や日本文化の象徴とされ、近年ではアニメや漫画、ゲームなどの創作物の影響でますます注目度が高まっている日本刀。
博物館や美術館で展示されていることも多く、日本刀を見る機会も多いと思います。

引用:https://wa-gokoro.jp/traditional-crafts/japanese-sword/

しかし、一口に日本刀と言ってもその種類や用途は意外と多く、その背景には日本の時代とともに変化し続けてきた日本刀ならではの歴史があります。
そこで今回は日本刀初心者にもわかる日本刀の簡単な歴史と主な種類について紹介します!

日本刀誕生と進化の歴史

日本における刀の歴史のはじまり

B.C.(紀元前)3500年ごろ、古代エジプトとメソポタミアで生まれた人類初の金属加工技術「鍛造」は弥生時代ごろ、大陸から鉄とともに日本へ持ち込まれました。

鍛造は日本でも定着し、古墳時代へ入るころには鉄は農具だけではなく、武器にも用いられるようになり、日本産の刀剣が作られるようになりました。

引用:https://www.winners-auction.jp/productDetail/41436


この頃に製造された刀は「両刃の直刀」でいわゆる日本刀と呼ばれるものとは形状が異なり、豪華な装飾を施し儀式や贈答品として重宝された側面もありました。
奈良時代までに作られたこのような刀を「上古刀」と言います。

現在の日本刀の形状の成り立ち

現在のような「反りのある片刃」の刀へと形状が変化したのは貴族社会から武家社会へと変化を始めた平安時代末期ごろのことです。

引用:https://bunka.nii.ac.jp/heritages/detail/283946


武士が台頭し、闘争が激化したことでこれまでの「直刀」ではなく、より斬ることに特化した刀「太刀」へとその姿を変えていきます。

引用:https://game.watch.impress.co.jp/docs/news/1597763.html

「太刀」の由来は「断ち」だと言われており、馬上から太刀を振るい相手を断ち斬るという用途が主となっています。
その為、突きと叩き斬ることに向いた「古刀」とは違い、馬上で使いやすく、刃に反りを加えることでより斬れ味を増した形状へと進化したのです。

象徴としての日本刀と戦の変化

南北朝時代、太刀は武士の力の誇示として、また二度による蒙古襲来の際の戦闘方式の違いに対応する為、その姿をより大きな形へと変えます。

蒙古軍との戦いではこれまでの武士同士の一騎打ちではなく、多対多の集団戦を余儀なくされました。

引用:https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A4%A7%E5%A4%AA%E5%88%80


そのため馬上から馬の勢いを利用して大勢を斬るという戦法をとっても駄目にならない、丈夫で集団戦に有利な刀として作られたのが「大太刀」です。
また室町時代にはその荘厳な出で立ちから”武士の力の象徴”としても好まれたり、神社の御神体として信仰の対象になることもありました。

武器として洗練され完成した日本刀

武士としての力の象徴として、より大きく進化を続けてきた刀ですが戦国時代を機に大きな変化を迎えます。

引用:https://bijyutunomori.jp/info/%E7%8F%BE%E4%BB%A3%E5%BE%A9%E5%88%BB%E7%89%88%E3%80%8C%E9%96%A2%E3%83%B6%E5%8E%9F%E5%90%88%E6%88%A6%E5%9B%B3%E5%B1%8F%E9%A2%A8%E3%80%8D%E6%8E%9B%E8%BB%B8%E9%A2%A8%E3%82%BF%E3%83%9A%E3%82%B9%E3%83%88.html

室町時代中期に入り、戦乱は日本各地へと広がり、戦闘の主流は騎馬戦から歩兵による集団戦へと変化しました。
「太刀」は白兵戦では使い勝手が悪く、その大きさから紐を使って腰へぶら下げて装備していたことから、いつ敵に襲われるかもしれない乱世の世では面倒も多々ありました。

引用:https://www.hakkoudo.com/weblog/2022/04/27/0404-2/

そこで新しく生まれたのが”腰に直接差す”ことができ、室内での抜刀も可能な「打刀」、現代で一般的に日本刀と呼ばれる刀です。
これまで象徴的側面をもっていた刀が”近接戦で扱いやすい長さ”へと変化し、より実用的なものになっていったのです。

現代のイメージとしての日本刀と武器としての歴史の終わり

徳川家康によって天下統一がなされ、太平の世となった江戸時代、日本刀は一旦の役割を終え、平安時代のような”象徴的”な存在へと回帰します。

引用:https://www.cinemacafe.net/article/2017/09/12/52458.html


刀は武士のステータス的な側面が強くなり、「刀」=「武士の魂」というような考え方がされ始めたのもこの時期だと言われています。

引用:https://www.pixiv.net/artworks/114099730

しばらく抜かれることのなかった日本刀ですが江戸時代後期、幕末の動乱とともに再び”実用的な武器”として振るわれます。
迫りくる近代化の荒波を前に、日本刀は様々な志を持つ者達と共に最後の光を放つのでした。

そして時は明治、最後の幕府は幕を閉じ、新たな時代の訪れとともに日本刀は「廃刀令」によって武器としての長き歴史に幕を閉じました。

日本刀の種類と見分け方

時代とともに様々な変化を遂げていった日本刀、その長さや形状にはそれぞれの歴史を反映した特徴があります。
ここからは主流な日本刀の種類とその簡単な見分け方についてご紹介します。

直刀 (ちょくとう)

引用:https://www.touken-world.jp/tips/53583/

湾刀(反りのついた刀)以前の刀で主に古墳時代から奈良時代ごろに作られたものをいいます。
日本刀特有の反りは無く、ほとんど真っ直ぐなものか、少し内反りで鎬の無い平造り、または切刃造りが特徴です。

POINT! ~造込み(つくりこみ)とは?~

造込みとは、刀の構造を立体的に言い表したもので、日本刀において代表的な鎬(しのぎ)造りを筆頭に、平(ひら)造り、切刃(きりは)造りなど様々なものがあります。

太刀 (たち)

引用:https://www.meihaku.jp/hikarukimihe/heiankizoku-token/

平安時代後期から徐々に作られ、室町時代初期ごろまで活躍した日本刀です。
反りが高く、刃長は通常二尺三寸~六寸(約70~80cm)ほどと打刀より少し長いです。
装着時は刃を下に向け、「下緒(さげお)」と呼ばれる鞘についた紐を使い、腰から吊るして用います。
博物館や美術館で展示される際には”刃が下になった状態”で飾られます。

POINT! ~刀を佩く(はく)とは?~

引用:https://www.touken-collection-nagoya.jp/touken-introduction/tachi-and-uchigatana/

太刀のように紐を使い、腰からぶら下げて装着することを”佩く”といい、ニュアンスとしてはズボンを”はく”と同じとされています。
一方、打刀などそのまま腰に帯刀できる刀は”差す”といい、言葉の違いからも手間の大小が表れています。

大太刀 (おおだち)

引用:https://www.touken-collection-nagoya.jp/touken-introduction/otachi-nodachi/

太刀よりも刃長が長く大振りなもので「野太刀(のだち)」と呼ばれることもあります。
刀身の長さもその分増しており三尺(約90cm)以上のものが一般的とされています。
馬上で使用するのが主とされていたため、あまり振り回して使うことはありませんでしたが、例外として力自慢の武士が白兵戦で使用することもあったようです。

POINT! ~どうして太刀は刃を上にした状態で帯刀するの?~

引用:https://katemato.hatenablog.com/entry/2019/01/09/214315

太刀を佩く際、打刀と違って刃は上にした状態で帯刀されます。
その理由は太刀が騎乗した状態で使用されるためだと考えられており、抜き打ちの利便性や鞘尻が馬体に当たるのを防ぐためだとされています。

打刀 (うちがたな)

引用:https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%89%93%E5%88%80

室町時代中期以降、屋内での戦いを考慮し、太刀より少し短く取り回しが良い「打刀」が作られるようになります。
いわゆる一般的な”刀”というときはこの打刀を指し、室町時代中期~江戸時代末期まで多くの武士に愛用される日本刀の主役的存在です。
刃長は二尺(約60.6cm)以上で太刀より短く、帯刀の際は刃を上にして腰帯に差します。
博物館や美術館で展示される際には”刃が上になった状態”で飾られます。

POINT! ~太刀と打刀に長さ以外の違いは無いの?~

引用:http://masaie.jp/date/

太刀と打刀を区別する違いは、刀身の柄に隠れた茎(なかご)に彫られた銘にあります。
太刀銘の場合は刃を下向きに帯刀した際に外側に銘が来るように、刀銘はその逆で刃を上向きに帯刀した際に外側に銘が来るようになっています。
刀銘のものであっても太刀拵えに入れれば太刀のように、太刀銘のものも腰に差せば打刀のように見せることができますが分類は元の銘のままです。

引用:https://www.touken-world.jp/tips/57643/


例外として、元が太刀であったとしても茎尻から切り詰めて全体の長さを短くする磨上げ(すりあげ)を行ったものは打刀と呼ばれます。

脇差 (わきざし)

引用:https://www.yorozuya-arinsu.com/27784/

室町時代中期、打刀と同時期に作られ始めた日本刀で、刃長は一尺(約30.3cm)以上、二尺(約60.6cm)以下の打刀と短刀の中間に位置します。
帯刀の際は打刀と同じく刃を上にして腰帯に差し、博物館や美術館で展示される際には”刃が上になった状態”で飾られます。

POINT! ~侍はどうして大小二本の刀を差しているの?~

引用:https://www.tokyo-touken-world.jp/variety-of-sword/long-attack-sword/

安土桃山時代~江戸時代ごろ、”刀の予備”として大小の刀を携帯する「大小二本差(だいしょうにほんざし)」が定められていました。
大刀を本差(=打ち刀)、小刀を脇差とし、二本揃えて一組として用いていたのです。

短刀 (たんとう)

引用:https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%9F%AD%E5%88%80

刃長が一尺(約30.3cm)以下の刀の総称で、「腰刀(こしがたな)」や「合口(あいくち)」と呼ばれ、平造りで鍔(つば)の無いのが特徴です。
主に護身用として使われることが多く、より頑丈に作られたものは「鎧通し(よろいどおし)」といい、硬い鎧を貫くために用いられました。

POINT! ~直刀と短刀はどこが違うの?~

引用:https://www.meihaku.jp/touken-qa/touken-qa-detail_1-13/

直刀と短刀も反りは無く、ほとんど真っ直ぐなものか、少し内反りで鎬の無い平造り、または切刃造りと同じ特徴をもつ刀です。
違いは長さくらいで、湾刀出現以前の短刀は「かたな」と呼ばれていたようです。

まとめ

今回は日本刀の簡単な歴史と主な種類について紹介しました。

引用:https://bushoojapan.com/bushoo/ken/2024/09/26/18951#google_vignette


他にも刀の製造時期による分類の名称や、長刀(薙刀)や長巻など特殊な形状の刀など、知れば知るほど日本刀の奥は深いものです。
基礎多めの内容となってしまいましたが、次に日本刀を見る際に少しでもこれまでと違った形で楽しむ手助けとなったのなら幸いです。

参考:https://www.touken-collection-nagoya.jp/
   https://www.youtube.com/watch?v=tKjO6OnWhRs&t=307s
   https://www.youtube.com/watch?v=yXn0Kb3hZ6k
   https://www.youtube.com/watch?v=lThyTGY447Y&t=297s

ABOUT ME
羽稲まを
専門学校時代、ゲームデザイナーを志すも周りに絵を描ける人材がいなかったため独学でイラストを勉強、絵も描けるゲームデザイナーとして重宝された。 道半ばで「自分、デザイン関連の方が向いてるのでは?」と、ウェブデザイナーを志しまたも独学で「ウェブデザイン技能士」を会得するも、大事故に遭い九死に一生を得る。 現在はフリーゲームデザイナーとしても活動中!