奈良美智は、日本を代表する現代アーティストとして国際的に知られています。奈良のアートは、絵画や彫刻を通じてアートとポップカルチャーを巧みに融合させ、音楽、映画、ファッションなどさまざまなメディアに影響を与えています。
今回は、奈良美智の作品がどのようにアートとポップカルチャーを結びつけてきたか、音楽、映画、ファッションの世界でのコラボレーションに注目して紹介します。
奈良美智と音楽業界とのコラボレーション
The Birdy Num Nums
1991年にドイツのインディーバンドのアルバムジャケットのアートワークを担当したことが、奈良にとって最初のレコードジャケットの仕事でした。この作品は、奈良がドイツでの学生時代に制作したものです。
1987年に愛知県立芸術大学大学院修士課程を修了して、翌年にドイツ国立デュッセルドルフ芸術アカデミーに入学し、修了後もそのままドイツに留まってアトリエを構えて制作活動を続けていました。
少年ナイフ
1998年、アメリカで活動する日本のガールズバンド、少年ナイフのファースト・フルアルバム「HAPPY HOUR」のアートワークを担当しました。
このアルバムは日本語で歌われる日本盤と、英語で歌われるアメリカ盤があり、ボーカルの録音や収録曲も異なるので、カバーのイラストもそれぞれ違っています。
THE STAR CLUB
1977年に結成された日本のパンクロックバンドTHE STAR CLUBの1999年のメジャー17枚目のアルバム「PYROMANIAC(放火魔)」と、同年にリリースされたベストアルバム「KITTY MISSILES(子猫のミサイル)」の2枚のアートワークを手掛けました。
このバンドとは、奈良が愛知県立芸術大学の学生だった19歳の頃に知り合ってから個人的な交友関係もあったようで、2006年にテレビ番組「情熱大陸」に出演した際も、奈良はTHE STAR CLUBのTシャツを着ていたそうです。
The Busy Signals
奈良の作品の知名度が高まるにつれ、海外でも注目を集めるようになり、日本のバンドだけでなく、海外のバンドからも仕事のオファーが来るようになります。
2001年にはThe Busy Signalsのセカンドアルバム「Pretend Hits」のジャケットのアートワークを担当しています。
R.E.M.
2001年には、世界的に人気のあるロックバンド、R.E.M.のシングル「I’ll Take the Rain」のジャケットとミュージックビデオのアートワークを担当しています。
八田ケンヂ
日本のパンク歌手でシンガーソングライターである八田ケンヂ(KENZI )の、2014年の「今があるさ」、2018年の「時代がフザケテル」の2枚のアルバムのアートワークを奈良が担当しています。
八田ケンヂは、『KENZI』としてスマ・ロ子、KENZI & THE TRIPSなどのバンドやソロで活動し、2009年からは八田ケンヂ名義で活動を開始しました。
ミチノヒ
ミチノヒは札幌出身の女性2人を中心とするギター、ドラム、キーボードの3ピースバンド。イギリスのインディーズを彷彿とさせるポップソングを奏でます。
2018年発売の「but to do」のカバーを奈良が担当しました。
noodles
noodlesは横浜出身のガールズバンドで、英語で歌うオルタナティブ系ロックバンドです。もともとは4人編成でしたが、18年の活動の間に2人が脱退して、ギターとベースの2人組になりました。
2019年の「I’m not chic」のアートワークを奈良が担当しています。ダンボールに描かれたイラストが大きくレイアウトされた、インパクトのあるデザインに仕上げられています。
奈良美智とファッション業界とのコラボレーション
ステラ・マッカートニー
2021年春夏シーズンに、ステラ・マッカートニーのユニセックスのカプセルコレクションであるステラ・マッカートニー シェアードが発表され、このコレクションの中でも奈良美智とのコラボレーション商品が、奈良の初のファッションブランドとのコラボレーションとして注目を集めました。
2022年、2023年にもコラボ商品がリリースされており、動物の顔や見つめる少女を描いた奈良のアート作品を取り入れた商品には、昨今の情勢を想起させる「STOP THE BOMBS」といった反戦メッセージなども含まれており、着るアート作品と言えるような商品になっています。
商品は全てオーガニックヤーンやリサイクル素材で生産されており、サステナビリティの推進も意識したコレクションとなっています。
奈良美智と映画業界とのコラボレーション
ロッタちゃんはじめてのおつかい
アストリッド・リンドグレーンの児童文学作品を原作として製作された90年代のスウェーデン映画「ロッタちゃんはじめてのおつかい」のパンフレットやポスターを奈良が手掛けています。
5歳の女の子ロッタちゃんとその相棒であるブタのぬいぐるみバムセを取り巻く愉快なエピソードが人気を集めた本作は、奈良の手がけたポスターによっても注目を集めたことから、動員8万人、興行収入1億2000万円を記録する大ヒットとなったそうです。
まとめ
世界的に人気の高い日本人アーティストである奈良美智は、インディーズを中心とした多くのアーティストのカバーデザインを担当してきました。
最近では人気ファッションブランドのステラ・マッカートニーとのコラボで、ファッション界からも注目を集めるなど、アート界と他のカルチャーの融合に大きく貢献しています。
ポップカルチャーやストリートカルチャーとも親和性の高い奈良のスタイルや作品の持つメッセージは、引き続きアート界を超えて多くの人々に愛されるでしょう。