制作発表から約三年半の時を経て、満を持して2024年11月14日に全世界同時発売されたHD-2D版「ドラゴンクエストⅢ そして伝説へ」
先日スクウェア・エニックスが全世界出荷・ダウンロード販売本数が200万本を突破したと発表し、発売開始から順調なスタートを切っています。
引用:https://www.4gamer.net/games/811/G081113/20241206008/
1988年の発売から国内販売本数380万本の大ヒットを記録し、シリーズ最多となる8作ものリメイクを持つ本作、「ドラゴンクエストⅢ そして伝説へ」が今なお名作と言われ愛され続ける理由は一体何なのでしょうか?
当記事ではドラクエⅩオンライン以外のナンバリング作品をプレイ済みの私が、ドラクエⅢがなぜ名作と言われている理由を3つに分けて紹介します。
RPGというジャンルを国内に知らしめた「ドラゴンクエスト」
引用:https://game.watch.impress.co.jp/docs/feature/1516394.html
ファミコンブーム真っ盛りの1980年代、「スーパーマリオブラザーズ」発売を皮切りに当時の国内ゲームはアクション一色というほどアクションゲームが主流になっていました。
海外では「ウィザードリィ」などRPGゲームが浸透していた一方、国内ではそれまで世間的にはRPGというものに対する認識すらほぼ無いに等しいものでした。
そんな中、「ポップなファンタジー世界で冒険しながら、剣と魔法を駆使し、敵を倒してレベルアップする」今では当たり前のRPGというジャンルの概念を作り上げたのが1986年5月27日発売の初代ドラクエです。
引用:https://game.watch.impress.co.jp/docs/news/1209021.html
発売直後こそ全くの無名タイトルで売れ行きはそこまでよくありませんでしたが、RPGという当時の日本にとって斬新なゲームスタイルに堀井雄二氏の脚本・ゲームデザイン、鳥山明氏のキャラクターデザイン、すぎやまこういち氏の音楽という三本柱が合わさり、徐々に売り上げを伸ばしました。
最終的にはシリーズ初タイトルにして販売本数は150万本とミリオン越えの大ヒットとなります。
こうして徐々に知名度と売り上げを伸ばしていったドラクエですが、Ⅰではゲームの容量問題による表現方法の削減や、続編Ⅱでは翌年1月に発売という短すぎる開発期間によって難易度調整が不十分のまま発売されるなどの問題があり、RPGゲームとしての完成形というにはまだほど遠いものでした。
一見問題ばかりが浮き上がるドラクエⅠⅡですが、その裏にはシリーズの集大成”Ⅲ”へ向けたドラクエの生みの親である堀井雄二氏のとある仕掛けが隠されていたのです。
ドラクエの生みの親”堀井雄二”氏がシリーズを通して仕込んだ壮大な仕掛け
『「ドラクエⅢ」で、やりたかったことを全てやり終えた感がありました。』堀井雄二氏自身がそう語るほどの集大成として制作されたドラクエⅢ、そこにはこれまでのシリーズを通した明確な意図がありました。
引用:https://dengekionline.com/article/202411/22557
国内で馴染みの無かったRPGを誰でも遊び易くする為、温かみのある「人間くさいゲーム」を目標に当時の海外製RPGにはなかった「物語」要素を加え、キャラクターの「成長」をゲームを通して体感出来るように作られたのが「ドラクエ」です。
しかし、いくら物語を付けてゲームの世界観に入りやすくなったといえど、いきなりプレイヤーに複雑なコマンドバトルができるはずはありません。
そこでまずドラクエを制作するうえで掲げられたコンセプトは「マニュアルを見なくても遊べるゲーム」にするというものでした。
引用:https://www.nikkei.com/article/DGKKZO72273760W1A520C2EAC000/
そして初めて世に送り出されたドラクエⅠは64KBという実装できるカタカナの数すら削らないと収まりきらない容量の中制作されました。
操作キャラは主人公のみで敵とはすべてタイマン勝負、伝説の勇者「ロト」の血を引く主人公が魔物に囚われた姫を救い出し魔王を倒すという王道な物語でまとめ、シンプルでわかりやすいゲームとして仕上げられました。
引用:https://game.watch.impress.co.jp/docs/news/1209021.html
続編ドラクエⅡはⅠの100年後の物語となっており、前作で世界に平和をもたらした勇者が後に3つの国築き、その子孫たちが魔物から人々を守るべく、世界を救うための冒険に出るという物語になっています。
容量も128KBに増え、操作キャラもHPが高く物理攻撃を得意とする戦士タイプで本作主人公のローレシアの王子、能力は平均的だが物理攻撃と呪文攻撃、それに回復呪文も使えるバランスタイプのサマルトリアの王子、HPと力が低いがMPが高く強力な攻撃・回復呪文が使えるムーンブルクの王女が冒険を進める途中で仲間になり、最終的には3人を同時に使い分ける複数vs複数のパーティ戦闘に進化しました。
引用:https://www.famitsu.com/article/202411/23342
ドラクエⅢでは主人公の勇者以外に物語序盤から3人仲間を追加することができ、パーティ最大4人対複数の敵とのバトルが基本となります。
さらには仲間に職業というシステムが追加され、戦士・武闘家・魔法使い・僧侶・商人・遊び人と6つの職業に加え、特定の条件を満たすことで転職可能な上級職の賢者から自分好みのパーティを作ることが可能になり、より自由度の高い戦闘を楽しむことができるようになりました。
ドラクエⅢで一気に複雑化したシステムですが、シリーズを通して遊んでいたプレイヤーたちは意外にもすんなりとこの変化を受け入れることが出来る様になっていました。
これこそが堀井雄二氏がシリーズを通して仕込んだ壮大な仕掛けであり、プレイヤーたちはドラクエを遊べば遊ぶほどRPGの基礎を自然に身に着け、無意識に応用できるようになっていたのです。
そして伝説へ…
ドラクエⅠⅡⅢは総じて「ロト三部作」と呼ばれており、名作と呼ばれるⅢだけでは無く、仕掛けの段階であったⅠⅡ含めて根強い人気があります。
その理由こそがドラクエⅢ屈指の人気の理由であるストーリー展開にあります。
引用:https://www.inside-games.jp/article/2024/06/19/156584.html
Ⅰではロトの血を引く勇者が魔族にさらわれた姫を救い、世界征服を目論む魔王りゅうおうを倒すという王道な物語でした。
そしてⅡではその100年後、再び迫る邪神官ハーゴンの魔の手からロトの血を引く勇者の子孫たちが平和なアレフガルドを守るべく旅に出るという正統続編が展開されました。
しかしⅢではこれまで旅したアレフガルドの世界ではなく、どこか我々の住む地球に似たような全く新しい世界から物語が始まります。
引用:https://www.youtube.com/watch?v=oFkbeCsEDrk
16歳の誕生日を迎えた勇者は世界を脅かす魔王バラモス打倒するべく、そして同じくバラモスを倒す旅に出て行方不明になってしまった父オルテガを探すため、世界を回る旅へ出ます。
様々な困難を乗り越え、魔王の居城でついにバラモスと対峙した勇者は念願のバラモス討伐に成功します。
引用:https://www.youtube.com/watch?v=8FoElhYd1Jc
故郷アリアハンへ戻った勇者はバラモス討伐の吉報を王へ報告し、国では魔王討伐を祝して宴が開かれます。
世界に平和を取り戻し、兵士たちがファンファーレを奏でついにエンディングかと思いきや、突如激しい轟音とともに雷が降り注ぎ、兵士たちが次々と倒れていきます。
そして困惑する勇者たちに不気味な声がどこからともなく語りかけます。
その声の主は世界征服を企む大魔王ゾーマであり、さらにはやっとの思いで倒したバラモスはゾーマの配下に過ぎなかったことが明かされます。
勇者は新たな敵大魔王ゾーマを打ち倒すため、ゾーマが支配しているもう一つのへと向かいます。
引用:http://blog.jp.square-enix.com/heroes/2015/03/post-11.html
二つの世界を繋ぐギアガの大穴を抜け、勇者たちは闇に包まれた世界にたどり着きます。
このもう一つの世界こそがドラクエⅠⅡの舞台となっていたアレフガルドだったのです。
そしてプレイヤーはアレフガルドを巡る中でドラクエⅠⅡとのつながりを感じるとともに、ⅢこそがⅠⅡの世界の過去の物語であることを知ります。
精霊ルビスとの出会い、オルテガとの再会・別れ、下の世界でも様々な困難を乗り越え、ついに勇者たちは諸悪の根源大魔王ゾーマと相対し、激闘の末これを下します。
勇者はドラクエⅠ始まりの地でもあるラダトームの王にゾーマ討伐を報告すると、賞賛の言葉とともに真の勇者の証「ロト」の称号を与えられ、「ロトの伝説」として永遠に語り継がれてゆくのでした。
そう、ドラクエⅢは「ロト三部作」完結編にして、「ロトの伝説」の始まりの物語だったのです。
この壮大な伏線回収は当時のプレイヤーたちに衝撃を与え、今なお語り継がれる名作として「伝説」を残したのです。
まとめ
今回はドラクエⅢがなぜ名作と言われているのかについて考察しつつ紹介しました。
引用:https://www.dragonquest.jp/roto/
今では当たり前のRPGというジャンルの概念を作り上げ、シリーズを通してより奥深く、自由度の高いゲームシステムを確立し、「ロト三部作」完結編にして始まりの物語という斬新なシナリオ、3つの要素が合わさり発売から36年経った今でも愛され続ける作品となったのではないでしょうか?
引用:https://www.dragonquest.jp/roto-trilogy/dq1and2/
2025年にはHD-2D版「ドラゴンクエストⅠ・Ⅱ」の発売も決定されている今、美麗なグラフィック生まれ変わった名作を当時に思いを馳せながらプレイしてみてはいかがでしょうか?
参考:https://x.com/DQ_PR/status/1859507149883441527
https://news.denfaminicogamer.jp/interview/170927
https://youtu.be/EGo5hP8IVFo?si=JGI63Px_0b8JFuoS
https://youtu.be/asXjgUisWbs?si=hmLJ0LWk72vbpaaU
https://youtu.be/2_amgUWikDY?si=szXhvj_u9ba4QP7X