ジェフ・クーンズの経歴
ジェフ・クーンズ(以下、クーンズ)は、1955年ペンシルバニア州ヨークに生まれました。
8歳のときにオールドマスターの絵画のコピーを描き、「Jeffrey Koons」とサインして、父親の家具店で売ってました。
1972年、ボルチモアのメリーランド・インスティテュート・カレッジ・オブ・アートに入学。シカゴ美術館での交換留学を経て、1976年に美術学士号を取得しました。
1977年にニューヨークに移り、近代美術館のメンバーシップ・デスクで働き始めました。クーンズは奇抜な服装と髪型をしており、見事なセールスマンぶりですぐに有名になりました。この時期にクーンズは、風船で膨らませた花やウサギを、プラスチックやプレキシグラス、鏡などと組み合わせた彫刻作品を作り始めた。
1980年にクーンズは美術館を離れ、ファースト・インベスターズ社で投資信託や株式を売り始め、「ザ・ニュー」シリーズの作品を制作するための資金を調達していました。
クーンズの「ラビット」は、それまでに制作していたウサギを高さ41センチのステンレスで再現したもので、注目を集めました。
同年、クーンズは消費者主義の退廃をテーマにした作品を発表しました。特に、酒類の広告画像やトラベルバー(携帯用ケースに入った酒瓶やグラス)を彫刻で表現した「ラグジュアリー&デグラデーション」シリーズが有名です。このテーマを発展させた「バナリティ」シリーズでは、歌手のマイケル・ジャクソンと彼のペットのチンパンジーを組み合わせた彫刻(「マイケル・ジャクソンと泡」)を制作しています。このシリーズには、クーンズ自身が出演する「広告」も含まれており、アート界での新たな名声を手に入れたものになりました。
ユニクロUT×ジェフ・クーンズ
2021年10月1日(金)よりユニクロで販売されるUTはジェフ・クーンズとのコラボです。それぞれTシャツ(1500円)やスエットフーディー(2990円)、メンズサイズでXS〜4XL、一部サイズはECのみで販売されます。ジェフ・クーンズを知らない人でもオシャレに着ることができるアイテムだと思います。
“Balloon Dog”
“Play-Doh”
“Seated Ballerina”
“Rabbit”
“Gazing Ball”
ジェフ・クーンズ作品紹介
Baloon dog:バルーンドッグ
1993年に「セレブレーション」シリーズの一環として「バルーンドッグ」を発表しました。
この彫刻作品は、今やジェフ・クーンズ象徴的な作品であると共に、現代アートを代表する作品のひとつとなっています。2013年には、クリスティーズのオークションで、「Balloon Dog (Orange) (1994-2000)」が5,840万(6億円)ドルで落札されました。また、クーンズは犬以外にも白鳥、ウサギ、猿、などのバルーンを制作しています。
ジェフ・クーンズは、「私たちは風船です。息を吸って、吸い込むと楽観的になります。息を吐くと、それは死の象徴のようなものです」と語っています。バルーンのような彫刻作品を通して死生観を伝えたかったのだと思います。
100億円で落札された:ラビット
2019年5月15日、ニューヨークのクリスティーズで開催されたコンテンポラリーオークションで、ジェフ・クーンズの「Rabbit」が9,110万ドル(100億円)で落札され、現存するアーティストの作品としては最高額を記録しました。ステンレス製のウサギの彫刻は、それまで9,020万ドルで記録されていたホックニーの1972年の絵画「Portrait of an Artist (Pool With Two Figures)」を上回りました。
クリスティーズの落札者は、スティーブ・ムニューシン米財務長官の父親であるロバート・ムニューシン氏でした。ムニューシン氏はアートコレクターであると同時にアートディーラーでもあり、クライアントのためにこの作品を入手しました。(噂では、億万長者のヘッジファウンダーであるスティーブン・A・コーエンとの依頼だった言われています。)
ラビットの売り手は、故S.I.ニューハウス(The New Yorkerの出版社であるCondé Nastを所有)の家族で、90年代に100万ドルでこの作品を購入しました。ニューハウスが亡くなったことで遺族が手放したそうです。
妻チョッチョリーナとの作品:Made in heven
ジェフ・クーンズの元妻でイタリア人ポルノ女優のイローナ・スタラー(通称:ラ・チッチョリーナ)とクーンズが共同で制作したシリーズ「Made in Heaven」。
1990年のヴェネチア・ビエンナーレで発表され絵画、彫刻、インスタレーションは、翌年、ニューヨークのSonnabend Galleryで行われた個展で行列ができるほどの人気を博しました。
このシリーズの絵画は、バロックやロココ時代の芸術やクールベやマネなどの近世の画家たちも参考にしています。ジェフ・クーンズはこの作品を通して現代の神格化を描いきました。
PUPY(パピー)
Puppyは、巨大な犬が植物で覆われている作品です。
パピーは1992年にドイツのバート・アロルセン美術館から依頼され、制作されました。ウェスト・ハイランド・テリアという犬種をモチーフにし、高さ13メートルあります。クーンズは木を刈り込んで作成される造形物「トピアリー」をモデルにし、コンピューターを使いパピーを制作しました。
ドイツ、オーストラリア、アメリカでの展示を経て、スペインのビルバオ・グッゲンハイム美術館に展示されています。
ルイ・ヴィトンとコラボレーション「MASTERS」
2017年、ルイヴィトンはジェフ・クーンズとのコラボレーションの「MASTERS」を発表。このデザインは、「ゲイジング・ボール・ペインティング」をプリントしたもの。「ゲイジングボール」とは、西洋画にジェフクーンズのシンボルである光沢のある素材のボールをつけた作品です。
第1弾では、レオナルド・ダ・ヴィンチやティツィアーノ・ヴェチェッリオ、フィンセント・ファン・ゴッホの絵画を描いたバッグが販売されました。
第2弾では、クロード・モネやポール・ゴーギャン、エドゥアール・マネ、ジョゼフ・マロード・ウィリアム・ターナー、フランソワ・ブーシェ(Francois Boucher)などを使用したデザインです。
美術批評家の反応
評論家の間では、クーンズに対する見方が大きく分かれています。彼の作品を先駆的で美術史的に重要だと考える人もいれば、一方で彼の作品は粗野であり、マーケティングに基づいていると否定する人もいます。新しい芸術には非難がつきものだと私は考えています。今まで現代アートは儲からないとされていましたが、今後は現代美術家という職業も生まれアートがさらに活発になっていくと思います。
まとめ
画質が悪くて申し訳ないのですが。。。私がNYにいた時に撮ったクーンズ代表作「ラビット」の写真を載せます!ビルの1階に堂々と置かれたクーンズの作品。
NYでは、一流アーティストの彫刻がビル内や高級マンションに置いてあることもあります。美術館に行かずとも自分で作品を発見できるのは本当に楽しかったです!
クーンズのオフィスでは、何人もの美術スタッフが雇われており本人は指示を出しスタッフが手を動かし作品を製作していました。アートはビジネスだと割り切って作品を作り続けています。売れる作品を売れるだけ生み出すているクーンズはまさにアート界の「ウルフ・オブ・ウォールストリート」と言われています。