訪問記事

アーティストとしての生き方〜画家:寺沢拓也さんインタビューvol.1〜

皆さん、こんにちは。

今回は画家として活躍されている寺沢拓也さん(以下、寺沢さん)にインタビューしました。3回に分けて掲載します。寺沢さんは名古屋で活動されており、アーティストの他キュレーターとしても活動されています。

第一弾として、寺沢さんの活動にあたっての信念や今取り組んでいる活動について伺いました。

寺沢さんと作品「月の川」

インタビュー

ーアーティストとしての経略を教えてください。

寺沢さん

私はフリーのグラフィックデザイナーの仕事をしながら絵の制作し、コンクールなどに出展していました。自然の中の宇宙をテーマした個展「寺沢拓也の宇宙展」にて45歳で作家デビューしました。

それから2年後にアメリカ ニューヨーク(以下、NY) ソーホーの「ウエストウッドギャラリー」にて1ヶ月間の展示ができるチャンスを頂き、画家としてキャリアを積み上げられるのではないかと自身も大きな期待を抱いていました。

ウエストウッドギャラリーにて
展覧会の様子

NYデビュー後は、NYでの個展やベルリンへの展示、作品依頼などのオファーを頂いていましたが、プライベートや仕事で色々な問題を抱えていました。当時は絵を描いていくことと仕事や日常生活を送ることのバランスが取れておらず、自分の絵に何か違和感を覚えていました。

ニューヨークで展示されていた作品「樹」

仕事と絵の両立の難しさを感じ、仕事を辞めて絵だけで生きていこうと決断しましました。絵画の道に進むために50歳代でバイトデビューを経験しました。その中で妻が乳がんで亡くなり、絵を描くことだけが私の唯一の生きていく心の支えでした。描き続けて絵から多くのことを学び、「何かが足りない」と自問自答をしながら、制作活動を続けていました。

いすみ

「いすみ」という作品を描き終えた時に、描くための表現方法は到達しているのに、自分自身は未完成であると悟りました。足りない「何か」とは、自分自身の中で罪を犯してきた自分を許せない心でした。

天に仰ぐ

そして、その後に「天を仰ぐ」という作品が完成して、これからは自分を信じてみようという気持ちに自然と変わっていったんですよ。

何かあっても受け入れ、来ることは抵抗せず諦めではなく、人生の全て受け入れる心構えができて、過去の出来事を考えることをやめた途端、気が楽になりました。

この経験を通して、良い作品は技術の向上だけでは作ることができないことを確信しました。精神のバランスが取れて初めてより良い作品ができて、制作した作品の魅力が増すことを身をもって学ぶことができました。自分自身の精神性を追求していき、バランスが取れることで、最大限の能力が発揮できるのです。

ー寺沢さんはアートを通じて何を追求されているのでしょうか?

寺沢さん

何事にも通じると思いますが「真実の追求」を目指しています。自分にとって何が真実なのかを見極め、それを意識することを忘れないように日々生活しています。

アートや芸術、スポーツなどを通して極めたいと思うなら、純粋でいることが大切で、嘘や誤魔化しはせずに自身と向き合うことが必要です。自分には嘘をつけないものです。つまり、良い作品を作るのであれば良い人間づくりが不可欠です。

私はかつてレベルの高い作品を生み出す人とそうでない人の違いは、能力の差ではなく、情熱の差だと思っていました。しかし、今は「意識の差」だと思っています。作者の人間性は作品に反映されるので、日常生活での意識の積み重ねで作品はどんどん進化していきます。

そして「真実の追求」をするために物事を見極める心の目を持つことも大切にしています。その目を持っていないと自分の軸を持つことができません。また、これは人に教わるものでもないので、自分の経験を通して学んでいくものだと思います。

特に若い世代のアーティストには、絵を描くだけでなくこのような「意識」向上の学びの場所を提供したいと思い、名古屋の上社駅構内にて「アート・シップ」というギャラリーを設立しました。アーティストが個展などの開催を通して、経験と感性を高め、物事を見極める目を持っていってほしいと思っています。

第2弾は寺沢さんが新しく作られるギャラリー「アート・シップ」について詳しく伺って行きたいと思います。

寺沢拓也 プロフィール

1955年生まれ。名古屋市在住。グラフィックデザイナーとして活躍。「自然の中の宇宙」をテーマに多くのコンクールに出展。2000年「寺沢拓也の宇宙展」を開催、作家デビューする。2002年ニューヨーク・ソーホーのウエストウッドギャラリー「Japan Art Allisnce」に出展Gallery &Stedio,FineArt誌などに記載され「テラサワタクヤの自然に対する見方は非凡な才能というべきで、それを描き出す生き生きとした色合いと、繊細でダイナミックな技法は、誰のスタイルや傾向にも依存せず純粋に芸術上の歴史的先例には関係していない、自身の想像力を追求しその大胆とも言える姿勢は、どのような国においても新鮮さを与えるだろう」と評価されニューヨークデビューする。2012年「アート・シップ」設立。現在、後進の指導及び作家活動中、個展、受賞歴多数。

ABOUT ME
しおり岡
編集長/ライター。小学生の頃はエジプト文化、中学生では西洋美術、高校生は日本の歴史にハマり、大学在学中に仏像に恋をして、学芸員を取得。卒業後、大手人材会社で営業を経験。その後、飲食店の広報・デザイナーを経て、アメリカ・NYにて転職。コロナウイルスのため帰国し、現在は日本に滞在中。趣味は「美術館や遺跡を経験するための海外旅行」。今まで40カ国以上を旅行をし、世界の建築や文化、食事、アートに触れる。